平成23年10月22日から平成23年10月26日まで欧州消化器週間がストックホルムであった。JDDWと一部重なっていたので、24日から参加してきた。ストックホルムは群島の街で、 陸地に海が虫食い状に入り込んでいて、運河のようになっている。日本にはちょっとない地形 だ。写真はストックホルムの超高級住宅街で、すぐ前は海で、高級なクルーザーが並んでいた。


 今まで、開催された19回のUEGWの中で、ストックホルムは最も北の都市で、10月はすでに薄暗く寒かった。強い風が吹くと黄色くなった木の葉がサーと落ちてくる。日本の晩秋から初冬といった風情だった。地下鉄が御茶ノ水駅の3倍くらい深くて驚いた。



 宿は、ノーベル賞受賞者が泊るというグランドホテルにした。ホテルからは海と王宮や教会の塔の織りなす素晴らしい景色がみえ、スパやプールも整い、素晴らしいホテルだった。


 自分の今までの医学研究の中で、ノーベル賞に最も近い研究と言えば、贔屓目に見て、GUTに載った「大腸平坦陥凹型癌・腫瘍の発見とその癌遺伝子の特徴」ぐらいか・・・。


 私が大学を卒業した1984年当時は、大腸腫瘍・大腸ポリープといえば隆起しているものと相場が決まっていた。1987年、私は富士写真光機の大浦部長ら(当時)を指導して、世界初の臨床に実用できる拡大電子内視鏡EC-HM改を開発した。そして、多数の大腸平坦陥凹型癌・腫瘍を発見した。それを多田正弘先生によって当時開発されたばかりの胃のEMRの技術を、初めて大腸に応用し、大腸平坦陥凹型癌・腫瘍を一括全切除して、完全な形の標本を得るのに成功した。そして、大腸平坦陥凹型腫瘍の癌遺伝子を、東京女子医大の長廻助教授(当時)と神戸大学病理部の藤盛助教授ら(当時)と共同研究して、大腸平坦陥凹型癌・腫瘍は、VOGELSTEINらの唱えていた隆起型癌・腫瘍の遺伝子変異と違って、K-RAS遺伝子の変異がないことを世界で初めてつきとめたのである。


 大腸平坦陥凹型癌・腫瘍は1990年代初頭、欧米では内視鏡で発見できなかったので、その存在が疑われていた。その後、繊細さを重んじる文化の欧州では比較的早くにその存在が認知されたが、 繊細さよりもプラグマティズムのアメリカでは、なかなか、認知されなかった。しかし、2004年にアメリカのFDAに製造販売が承認された、大腸がん治療薬、EGFR阻害剤のセツキシマブ(cetuximab)がK-ras変異陰性の大腸癌に 対して、特に効果あると判明してきて、われわれが唱えた平坦陥凹型の発がん経路も、ようやく、アメリカで認知され るに至った。


  しかし、VOGELSTEINですら、ノーブル賞をもらっていないので、 この研究でノーベル賞をもらうのはやっぱり無理でしょうねえ・・・・・。

 

 UEGWでは、世界中のいろんな新しい治療技術や薬の発表があった。日本人の参加も多く、日本人の発表を聞いていると、JDDWよりも力が入っているように感じる。印象に残った議論は、分子標的薬剤のコストのことである。高額な分子標的薬剤は、値段が高いので使えないといっていた。薬の種類にもよるが、1アンプルで約10数万円が相場。1クールの治療を行うと車を買うくらいの経費がかかってしまう。


 今後、がん罹患者数の増加すると予想されるが、分子標的薬剤は「車」と同じような貿易品となりそうだ。 車に続き、抗がん剤をはじめとした分子標的薬が、貿易の主体となる時代が到来しようとしている。日本では既に1兆2000億ぐらいの市場となっているらしい。


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(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

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