「特定看護師制度」よりも、手術前のHIVチェックを奨励し、HIVの蔓延を防いで欲しい。

  厚生労働省は、特定看護師制度をどうしても推進したいらしい。大切な予算と人を割いて、特定看護師制度に関する大規模なアンケートを実施するという。この制度が、今の日本の医療にどれだけの恩恵をもたらすか、大変疑問だ。


 以前も述べたが、看護師と医師はその基盤において、大変大きな差がある。必要とされる基礎学力にも大きな差が歴然とあり、加えて、医師国家試験の合格は、サボれば、東大理Ⅲ合格者にも簡単ではない。


 また、国家試験を受けるまでの習錬も、並大抵ではない。命を預かる重みを医師はその訓練課程から、また、長い実践経験から学びとっていく。チーム医療といえども、現場では厳しい選択を迫られる場合も多く、その際、最終判断を下すのは、そういった習練を積んだ医師であり、それは孤独で責任のある仕事である。


 アメリカ帰りの先生方が現場を知らぬ役人に働きかけて、アメリカと同じ粗悪で廉価な医療制度を日本に広めようとしているとしか思えてならない。このアンケートを実施する余力が政府にあるなら、手術前にHIVの血液検査をすることが、医療機関の負担になってしまう現実を改善するために、予算を付けてほしい。

 

 HIVは、目の届かないところで、ひそかに広く広まっている。渋谷にある診療所では、HIV陽性者が多すぎるため、血液検体の回収に特殊な容器が用いられるそうだ。当院でもまれであるが、若者の初診患者に、 時に、HIV陽性者がいる。HIVの確定検査を行い、保健所に届けようとするのだが、その前に患者は消える。


 まだ、社会保険庁があった数年前、東大病院に社会保険庁の恒例の監査が入った。外科では、手術前に全例HIV検査をしていたが、それは、社会保険では認められないといわれて、全額削られたことがあった。社会保険庁の指導に従い、東大病院の手術室は、HIVに対して無防備になってしまったのである。


 噂に聞くと、横浜のとある病院では、患者に同意を取った上で、HIVの検査を患者負担で測定していたが、それは、病院職員のためであって、患者のためではないから、患者にお金を返すようにと、政府からの指導があったそうだ。HIV患者の外見は普通の人と変わらない。HIVの感染チェックは決して病院職員のためだけでなく、患者のためでもあることは間違いない。薬で治る梅毒の術前の感染チェックは保険で認められていて、HIVは認められていないのである。不合理の極みと言わざるを得ず、日本政府がこんなに情けないかと思うと、日本人であることに涙がでる。

 

 


肛門部に見つかった大きなパピローマ。HIV陽性であった。

 

ちなみに当院では、器具の洗浄には公式に認められた「オゾンとオートクレーブ」を用いていて、院内感染には細心の注意を払っています。

 

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