大腸癌の死亡者数がじわりと上昇してきている。現在、一年間に約9ないし10万人が大腸癌に罹って、約4万人が死んでいる。大腸癌を避けるためにはどういう生活習慣がよいのであろうか?大腸癌に罹りやすいリスク因子としては、1)アルコールの過剰摂取、2)脂物の過剰摂取、3)食物繊維の不足、4)癌家系などが上げられる。かつてよく、肉の食べすぎもリスク因子といわれたが、これは、研究者によりデータが異なり、半数は関係有、半数は関係なしとの状況である。(ちなみに、女優オードリ・ヘップバーンは菜食主義者であったが、大腸癌で死んでいる。)


 10年ぐらい前になるが私独自の研究としては、アルコールは飲む量に比例して、大腸癌や大腸ポリープの頻度が上がり、ビールは毎日500ml以上飲むとリスクがあがり、毎日1500ml飲むと約
2倍のポリープの発生をみた。また、日本酒では、容量依存的な悪影響が見られた。一日5合飲むと、大腸ポリープが大腸癌になる確率が2倍になった。長期にポリープを取りに通院してくる人たちをみると、営業で酒を飲む生活から退職すると、大腸ポリープの発生する頻度も低下するような印象がある。


 最近、ピロリ菌退治後の胃癌の発生について、アルコールを飲んでいない群では、除菌後
3年後以降の発生率は0に近いが、アルコールを飲む群では除菌後3年たっても、ピロリ菌の退治の胃癌抑制効果は、あまり見られないという発表がいくつかあった。アルコールを飲んでいると、胃炎が治まらず、癌発生のリスクが維持されるということなのであろうか?


 食道癌(扁平上皮癌)のハイリスクは、
50歳以上の男性で、濃い酒を飲んで、煙草を吸い、熱いものを食べる習慣のある人である。


 いずれにせよ、過剰な酒は食道を含め、胃腸によくない。ただし、酒を飲む人は、歯周病や虫歯になりにくいという統計があり、酒は口だけによいということみたいである。ちょっと変だが、医学的に見ると、「酒類は口に含んで味わった後、吐き出す。」というのが、もっとも健康的な習慣と言うことになる。