2009年5月21日から23日まで、名古屋国際会議場で第77回日本内視鏡学会が開催されている。
今日は 2日目。まず、大腸ESDのセッションに参加した。私のこれまでの実績では、大腸EMRで3.5cmぐらいまでの病変は、穿孔率2000分の1以下で、5分もあれば切除できる。なのに、大腸ESDで有名なY先生のデータを見ても、対象は平均2.7cm平均切除時間は50分。穿孔率2-3%。この技術が皆から賞賛されている。理由は、EMRでは難しい40mm以上の病変の一括切除ができるからである。30mmより小さな病変は、きっと大きな病変をとれるようになるための練習なのであろう。ESDの名人いわく、「私はスネアが怖い。究極のブラインド操作だから」・・・・?!・・・・だからと言って、たった3cmぐらいの病変に1時間近くも時間をかけていいのかな??
あとは、超音波エラストグラフィーをみて、自走式カプセル内視鏡の動物テストをみて、CTによる大腸表面型腫瘍の描出の試みをみて、注腸の前処置としてのニフレック・シサプリド方法を聞いた。
大阪医大第二内科と龍谷大学理工学部のコラボによる自走式カプセル内視鏡の原理の図
昼一番は、ゲノム解析で有名な中村桂子先生の講演をきく。彼女いわく「生きるということは、・・・。つまり、人生とは・・・、つまり、ライフステージとは・・・、いえいえ、このライフステージという言葉は、私が初めて用いたのですが、それがあちこちで利用されて・・・いまでは一般的な言葉となっていますが・・・(なんだァそれが言いたかったのか。) もとは、ライフサークルという言葉だったのですが、ちょっと変だと思い、こう 呼んでみました・・・ライフステージとはこんなのものです。」といって、下図を出してきて、「今のお医者は、生き物を扱っているという感じがしない。この生きるということを深く理解して、愛でてほしいものです。この場合、愛というのは理性的な愛、フィロソフィのフィロです。」とおっしゃった。しかし、この説明図、皆さん、何かおかしいと思いませんか?
私はこれをみて思わず唸った。大きなものが欠けている。生物に必須のもっとも大切なもの。日本社会を揺るがしている大問題。なるほど、この人がもてはやされる日本では、出生率が下がるのは当然のことかと感じた。失礼ながら、中村桂子先生は子供を何人生んでいらっしゃるのであろうか?人生には生むと育てるのステージがある。私は、やっぱり、人生とはライフサイクルなのだと思う。それでなければ、生き物は時を越えて存在できない。家族を大切にする愛の心こそが、未来へのパスワ―ド・・・。 民族存続のキーワードである。
午後からは、難治性の潰瘍性大腸炎のガイドラインを超えた新しい治療に参加。
1)メサラジンの大量投与一日4グラム(これは、昨年12月から保険収載)
2)ステロイドを使う前の顆粒球除去療法
3)アザチオプリン不耐症に対するメルカプトプリンの投与
4)clostridium difficile や fusobacterium などを理論的背景とした抗生剤投与。
5)酢酸ナトリウムの注腸療法。
6)タクロリムス(臨床第3層試験の結果)。
7)インフリキシマブ
いろんな治療法が活発に討論されていた。潰瘍性大腸炎の難治症例の治療は結構大変で難しいのである。難治性を決める因子の一つとして、サイトメガロウィルス感染があるが、フロアから社会保険で、サイトメガロウィルスの血液検査すら認められないとの声があった。難病治療の戦いを、社会は支援してほしい。
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