今年のUEGWの発表で、注目された分野は、腸内細菌であった。腸内のゲノムと肥満や糖尿病、各種疾患の関係が研究され始めていた。もともと、大腸内には、細菌をはじめとするおおくの微生物がいて、ゲノムの種類は300万にも達するのだそうだ。人間の遺伝子の数10倍の種類があるという。それらが近年の解析技術の進歩によって、網羅的な解析が可能になったのだ。


  中でも興味深かったのは大腸がんと腸内内容物(ゲノム)の話だ。腸内細菌がいないねずみは大腸がんにならないそうだ。そこで、腸内細菌のいないねずみに、大腸がん患者Kの腸内内容物と、大腸腫瘍のない人Nの腸内内容物をいれて、各々におけるAberrant crypt fociという、小さな大腸腫瘍の発生個数を調べたところ、図のごとく、大腸がん患者の腸内容物を入れたものの方が、よりたくさん、Aberrant crypt fociという、小さな大腸腫瘍が発生したという。なお、図の中にあるAOMというのは、発癌物質のことである。ねずみに大腸腫瘍のない人の腸内内容物を入れた場合は、ほとんど腫瘍は出来ないが、ねずみに大腸がんの人の腸内容物を入れた時は、腫瘍が出来て、AOMという発癌物質により、腫瘍は更に多く出来てきた。

 


 また、その原理を解明するために、各種の細胞変異因子がどのように誘発されるかを測定したのが下の図である。大腸がんの患者の腸内内容物は、大腸腫瘍のない人の腸内内容物に比べて、ELF3、KFL4、MATH1、HES1などの増殖因子を多く誘導していた。



 この研究から類推すると、数年後には、「xxx細菌が大腸がん・大腸腫瘍の原因である」という可能性もある。つまり、「ピロリ菌が感染しなければ、胃癌は、ほとんどまったく発生しない。 」と同じように「xxx菌がなければ大腸がん・大腸腫瘍は発生しない」ということになっているかもしれない。


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(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

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