第5回日本消化管学会が平成21年2月12日13日と、2日間にわたり、日本医科大学の坂本長逸教授の主催で、東京新宿の京王プラザホテルで開催された。討論のテーマは、小腸に関するものが多かった。カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡など、小腸に直接迫るモダリティがここ数年で急速に臨床応用できるようになったからであろう。


 小腸、特に終末回腸には、潰瘍性病変が結構多い。クローン病による潰瘍、NSAIDS潰瘍、各種感染(結核菌、非定型抗酸菌、赤痢菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌、エルシニア菌、キャンピロバクター菌、・・・・)による潰瘍、アミロイドーシスによる潰瘍、各種膠原病(ベーチェット病、結節性動脈炎など)による潰瘍、腫瘍(小腸腺癌、悪性リンパ腫、悪性筋肉腫瘍、GIST など)による潰瘍などなど、いろいろとある。しかし、原因不明、分類不能な潰瘍も多く、また、クローン病など病気の根本的病因は今なお不明なものが多く、治療に難渋することが多い。


 2日目の最後に行われた、「診断に難渋する小腸潰瘍症」のセッションでは、2時間で8例の症例が提示された。もともと難しい症例が提示されたのではあるが、八尾教授、清水先生、松井教授、田中教授をはじめ、全国の専門医をもってしても、わからない症例が約半数もあった。

 普段の大腸内視鏡検査で私は、ほぼ100%終末回腸を観察してきた。もう既に4万例ほど見てきて、詳しく集計していないが、7~10例に1例は、小さな小腸潰瘍が見つかったような印象がある。若い人にも結構多い。これらは、重大な病気の前兆であることもある。新たなモダリティを駆使して、新たな疾患概念を確立して、分類不能な小腸潰瘍症例を減らしていきたいものである。

 

 ところで、今回は、消化管学会なのに、あのiPS細胞で有名な山中伸弥教授が招待講演をおこわれた。これには、ちょっとびっくりした。寺野彰理事長の挨拶によると、坂本先生と山中先生が共に神戸大学出身、同門の関係ということで実現したそうだ。講演内容は、「iPS細胞の可能性と課題」であったが、主に、c-mycについて、iPS細胞を誘導するのに、c-mycを使うのがいいのか悪いのか、について多くの時間が割かれていた。2006年~2007年にiPS細胞ができて報告されたばかりなのに、米国での研究進展も急で、企業を巻き込んで、凄まじい競争が繰り広げられているようだ。アメリカでは、化学物質だけで、iPS細胞が誘導されたらしい。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集