たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

検診

JDDW2007神戸 第15回 日本消化器病週間 第三日目

 学会も3日目になると少し疲れてくる。このJDDW2007神戸に先行して、アジア太平洋消化器病会議は月曜日から開かれていて、「ちょっと長すぎる。」とぼやく声もちらほら聞こえてくる。

 

 午前中は、シンポジウム「特殊光観察に内視鏡診断」に参加。司会は工藤進英先生と神津照雄先生。NBIとAFI、FICE、confocal endoscopy,蛍光内視鏡などなど、内容はあまり目新しいものはなかったが、NBIの発表が多く、NBIによる微小血管診断が深化していた。

 

 午後は、消化器がん検診学会特別企画に参加。トップバッターは、厚生労働省管轄国立がんセンター予防・検診技術開発部 濱島ちさと先生であった。彼女は、最近、「前立腺がん検診にPSA測定は不要。」と言い放って、現在、泌尿器学会と対立している人物である。どんな人か大変興味があった。ちょっと小太りの、度の強いめがねをかけた、30歳ぐらいの女性であった。声が大きく、自信に満ちていた。肌にはつやがあり、黒髪もきれいで、健康的な美しさがあった。前立腺がんや癌死からは、最も遠い人種である。

 濱島ちさと女史の講演のテーマは、「がん検診における評価の基本概念」であった。

 

 まず、評価は、「その検診をした場合、その検診をしないときに比べて、どれだけ死亡数を減少させるか?」という死亡数減少効果を基本とすると述べた。そして、評価手順は、その検診に関する文献検索して、それらを読み、質のよい論文を選び出し、その論文に重み付けをして、スコア化して、検診を評価するというものだ。専門家にも意見を聞くが、専門家の意見の重み付けは一番低く、一番高い評価は、無症状者に対する無作為対照試験。要因対照試験や患者対照試験、介入試験はそれらの中間の評価で、前向きのほうが後ろ向きよりも評価を高くするという。

 さて、そのようにして、各種の検診方法を評価したところ、PSAによる前立腺がんの検診は、集団検診として、有効とは評価されなかったというわけだ。 (ただし、個人検診では有効との評価、マスコミでは集団検診での無効という評価だけが喧伝されている)。便潜血反応による大腸癌検診は集団検診として効果有りと評価されたという。このガイドライン(検診のやり方)を評価するやり方を、AGREEというそうだ。厚生労働省では検診の 評価を5年ごとに見直すという。

 

 この検診評価方法の問題点は、いくつかあると思う。

 

1)評価の根拠(文献)が古いデータを用いる点。

 文献に頼っているので、文献になる前の新しい知識は含まれていない。5年に一度見直すというから、実際に読んでいる論文は平均10年前ぐらいになるかもしれない。すると、次の十年の検診内容を決めるのに、十年前の知識を利用しているということで、間近な知識・実状は無視されているということなる。

 

2)死亡数減少を検診の目的としている点。検診には自分の健康を確認して安心を得るというメリットもある。

 検診(症状がないのに検査を受けるという行為)の目的は、死亡を回避したいということだけではなく、自分は病気でないという安心を得たいということもある。この2つは同じように思うかもしれないが、ちょっと違う。病気の中には、結局は、よく治るのだが、治すときの負担が早く見つけると軽くなるという病気もあるのだ。前立腺がんはこの範疇に入ってくると思う。患者さんをはじめ現場の人間は、その辺のいきさつをよく知っている。死も勿論、避けたいが、精神的な苦痛、肉体的な苦痛も避けたいのである。

 

3)真実はすべて文献にされているわけではない。

 医療情報の中には、さまざまな諸事情で、論文にしていないことがある。

たとえば、みんなが長年の経験・知識から、当たり前だと思っていること対して、無作為対照試験を行うことは、倫理的に許されないのである。 治療成績から見ると、胃癌と大腸癌の診療について、診断、早期癌の治療、進行がんの手術治療の点ではまちがいなく、世界一の成績を収めている。日本がフロンティアにいて世界をリーディングしているために、日本に無作為対照試験がほとんどなく、AGREEで評価すると日本の胃癌・大腸癌の診療ガイドラインは低い評価しか与えられないという皮肉な結果になるのだ。

 

4)文献に頼るだけで現場の調査を行っていない。

 がんセンターの机の上で検診は行われているのではない。がんセンターの机の上で人が病気になっているのではない。現場に出て

実状を調査して、それも評価に入れるべきである。

 

5)評価する者・組織にバイアスがかかっている。

 濱島ちさと先生は、給与を厚生労働省からもらっており、現在、厚生労働省は医療費削減政策、老人切捨政策を目標としている。AGREEにも、論文の発表者が誰からお金をもらっているかという項目もあり、濱島ちさと先生も自らの主張・論文をAGREEで評価してみるなら、質の低い論文と評価されるという皮肉な結果になるであろう。

 

6)医療現場では集団検診と任意検診(個人検診、プライベート検診)が明確に分かれているわけではない。

 検診の受ける側、すなわち、国民大衆は、検診に集団検診と個人検診が分かれていて、評価基準が異なっているなどとはまったく、思っていない。あるのは、自分の健康と命という評価基準だけである。行政を行うものは、その辺の事情(現場の事情)もわきまえた評価をするべきである。

 

 AGREEは欧米でも認められているガイドラインの一般的評価法である。 上記で述べたように、AGREEには、評価方法として、多くの問題を抱えている。ガイドラインの本来の目的、「人の命と健康を守るのにいかに役立つか?」という観点から見ると、問題のある評価法といわざるを得ない。

 AGREEが舶来であるという点が、彼女が「このやり方は間違ってない」とする根拠であった。AGREEを盲目的に受け入れる彼女の意識にはちょっと問題があると思う。 なんだか、外人かぶれ、英語コンプレックスの女学生という感じがした。

G-file 5  便潜血陰性 会社検診の大腸判定A それでも 大腸進行癌

 1996年、溜池にある共同通信社の本社に招かれて、大腸がんについての講演を行った。大腸がんの死亡者数が1975年は5000人、その後、5年で2倍のペースで、大腸がんの死亡者数が増加し、1980年には約1万人、1985年には約2万人、1990年には、約4万人と増えている現状をまず話した。


 そして、次に、1988年中曽根内閣によって導入された、免疫学的便潜血反応による大腸がん検診の仕組みを話した。まず、検診者全員に、免疫学的便潜血反応検査を二回行う。次に、2回のうちどちらか一方でも陽性になった場合を、陽性と判定して、二次検診の注腸検査か大腸内視鏡検査を行うと説明した。


 さらに、大腸がん検診に用いている便潜血反応の感受性についても、言及した。1994年と1995年に行われた厚生省武藤班による研究では、進行大腸癌が見つかって、手術を目的として、入院してきた患者さんに対して、2回法による免疫学的便潜血反応を行ったところ、陽性者は、70%であった。本来、100%であるべきなのだが、70%しかなかったのである。この話をしたとき、聞いていた共同通信社の役員や、保険組合関係の方々は「へえー」という驚きの反応であった。


 本当は、感受性をあげると、特異性が落ちて、検診の効率が悪くなるのである。だから、逆に感受性を70%に設定したというのが真実であるのだが・・・。


 その講演が終わり、数週後、共同通信の記者の方から電話があった。先生の講演を、役員から又聞きして、怖くなったので見てほしいというのである。その人は、検診で免疫学的便潜血反応は陰性で、大腸については評価Aであったが、実は、しばらく前から、右のおなかが張るというのである。


 さっそく、大腸内視鏡検査を行ったところ、上行結腸に全周性の進行癌が見つかった。幸い、肝臓に転移なし。早速、右半切を行った。


 幸いなことに、この患者さん、11年経った今でも、元気である。

この症例のように、検診での大腸A判定は、結構、あてになりませんので、注意してください。


 このような症例を、実地ではよく経験するので、「50歳になったら、大腸内視鏡検査による大腸検診をしましょう!」ということになるのである。症状のない50歳の人に向かって、初めての大腸内視鏡検査を勧めることは、消化器の医師としては常識であって、過剰医療ではないのである。

G-file 3 目黒区胃癌検診 集団的誤診

 いまの目黒区の庁舎は、土地投機バブルで失敗してつぶれた「千代田生命」のビルである。いまから、約10年前、目黒区の区庁舎が中央町にあり、まだ、中目黒に移ってくる前の話である。当時の区長は、汚職を摘発されて自殺した薬師寺さんであった。

 

 そのころの目黒区医師会は、2派閥が対立しており、ハードな医師会長選が行われた。結果、現職系の候補を破り、M会長が誕生した。M会長の下、医師会の人事が刷新されて、私は、目黒区医師会のがん検診委員となった。

 

 さて、その初会合のとき、がん検診委員長(肝臓の専門医)が言うには、「昨年度の目黒区の胃癌検診の予算は1600万円でした。その予算を医師会が引き受け区民の検診をしているのですが、胃癌の発見は0人という成績でした。ここ数年、胃癌発見者は0人ないし1人という成績が続いています。大変な問題だと思うのですが、 田渕先生何かご意見はありませんか?」と振られた。

 

 当時、一般に、がん検診は、「一人の癌患者を見つけるのに必要な費用が、230万円より上か下か」が、検診のよしあしの分かれ目とされていた。目黒区の胃がん検診は、その基準からいえば、まったくの不合格であった。がん検診委員長が、「大変な問題」というのも、尤もなことなのであった。

 

 当時の目黒区の胃癌検診の仕組みは、まず、年齢などで絞り込んだ対象住民に、胃癌検診のはがきを出す。はがきを見たうちの希望者に対して、碑文谷保健所でレントゲン車によるバリウムによる胃二重造影(検診用の直径10cmぐらいの写真撮影10枚程度)を無料 (=区の予算)で行い、所見のある人を拾い上げて、要精密検査の指示を郵送する。そして、区内の医療機関で、さらに、内視鏡検査もしくは二度目の通常の胃のバリウム二重造影検査(A4サイズの写真撮影)といった精密検査(無料 =区の予算)を受けるというシステムであった。

 

 私は、さらに以前、東京共済病院に勤務していたころ、目黒区医師会からの依頼で、碑文谷保健所で撮影した、検診用のフィルムを読影していた。その画像は、 残念ながら、読影に耐えられる代物ではなかった。バリウムが胃粘膜にきちんとのっていないし、バリウムがすぐに十二指腸の第3部分へ流れていて、胃と重なってしまっているのである。当時の読影は、東邦大学大橋病院の消化器医と東京共済病院の消化器医で担当していたのであるが、一緒に読む、東邦の先生方も私と同じ感想を持っていた。「こんな写真では、読めない!」

 

 「この写真なんとかならないのか?」と、医師会の担当の先生に、撮影しているレントゲン技師さんにクレイムをいってほしいと、お願いしたところ、翌月に返ってきた答えは、「看護婦も医師もついていないので、胃の動きをとめる注射ができない。したがって、バリウムが十二指腸の第3部分 へ流れるのは、避けられない。車なので、写真のサイズは変えられない。」というもので、要は現状を変えられないと返事であった。

 

 読影の席で、取りまとめ役の医師会の先生は、「7~8%ぐらい拾い上げてください」と、我々にリクエストした。読めない画像を前に、我々は、その人の年齢や、問診内容で、要精密検診者を決めていたのである。したがって、1600万円の胃癌検診で一人も癌が見つからないのも、当然といえば当然としか言いようのない結果なのであった。

 

 私は、目黒区がん検診委員長に、以上のような事情を説明した。そして、東大の三木一正先輩が開発した、ペプシノーゲン法による胃癌検診を提案した。興味を示した委員長は、早速、三木一正先生に目黒区医師会での講演を依頼した。三木一正先生は講演を快諾してくださり、講演は実現した。

 

 胃癌は、慢性胃炎の進行した状態で、出やすくなる。ペプシノーゲンは、慢性胃炎の進行度を示す指標である。検診対象者の血液中のペプシノーゲンを測り、慢性胃炎の悪いほう約7~8%を、要精密者として、内視鏡による精密検診をおこなうというシステムを三木先生は紹介した。足立区では、同じ1600万円の予算で、このペプシノーゲン法を採用して、一年で23人の胃癌患者を発見していた。

 

 やっと1人見つけられる目黒区のシステムと、同じ予算で23人も見つけた足立区のシステムと、どちらが優れているか、論議の余地などなかった。目黒区医師会のがん検診委員会は全員一致で、ペプシノーゲン法の採用を採択した。そして、がん検診委員長は、早速、区の担当者に、胃癌検診にペプシノーゲン法を採用したい旨、申し出た。

 

 区の返事は意外なものであった。「ペプシノーゲン法を採用すると、レントゲン技師が不要になってしまうので、碑文谷の2人のレントゲン技師が在職の間は、ペプシノーゲン法は採用できない。」と。レントゲン撮影をするという手段が目的化して、本来の目的、胃癌患者をより多く、より早く見つけて人の命を救うという目的が、忘れられているのだ。

 

 その後、人の命の重さよりも官僚システムを重視した、目黒区の薬師寺さんは、汚職が発覚して自殺した。そして、当時、ペプシノーゲン法を導入した足立区長Yさんは、その後すぐに、 議会からの不信任決議が採択されて、リコールされた。かれは小数会派(共産党)であったのだ。

 

 慢性胃炎は、胃癌の発生母地であり、慢性胃炎の原因の90%はピロリ菌である。慢性胃炎に対するピロリ菌治療は、学会での議論確定15年たった今でも、社会保険では認められていない。

 

 今年も、厚生労働省はいう、胃癌の検診は内視鏡よりもレントゲンが基本と。日本の医療の霧は、政治によってますます、深く濃くなっている。中世、ガリレオガリレイは、地球は太陽の周りを回っているとする地動説を唱えたが、その内容は当時の権力者、カトリック教会には受け入れられず、迫害された。

謹賀新年


 ホームぺージの読者の皆様の健康と安全、仕事の発展と子孫の繁栄をお祈り申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。


今年の干支は、猪です。猪にたっぷりとえさを与えて食用に家禽化したものが、豚です。ちなみに、鴨を家禽化したものがアヒル(この皮のところを食べるのが北京ダック)。雁を家禽化したものが、ガチョウ(十分なえさを与えて太らせて脂肪たっぷりにした肝臓がフォアグラ)です。脂肪摂取量と大腸癌の発生には、正の相関関係が有ります。美食の集団に大腸癌が発生しやすいという疫学的データも数多くあります。ただし、その相関関係はゆるいもので、肥満の人に大腸癌が出やすい傾向があるのは事実ですが、肥満でない人にも大腸癌は出ます。さて、大腸癌死を100%ブロックするにはどうしたらよいのでしょうか?


 現在、企業や地域で広く行われている大腸癌検診は、便潜血反応です。約10年ほど前の厚生省の武藤徹一郎班会議(私もメンバーの一人でした)のデータですが、便潜血を契機に発見した進行大腸癌の5年生存率は約70%、症状を契機に発見した進行大腸癌の5年生存率は約30%でした。ちなみに、進行大腸癌と診断されて、外科に入院してきた患者の便潜血反応の、陽性率は約70%で、約30%は陰性でした。便潜血反応だけでは進行大腸癌でも見逃される場合が約三分の一もあるのです。以上のデータから考えると、100%予防を目指すなら、便潜血による大腸癌検診だけでは不十分といわざるを得ません。現に、私の臨床経験でも、便潜血による検診を受けていたにもかかわらず、進行大腸癌になってしまい、挙句の果てには死んでしまった人が何人もいました。


 一方、定期的に大腸内視鏡を行い、腺腫等の前癌性病変の全切除を行う集団における、進行大腸癌の発生はごくまれです、死亡する例は有りません。こういう事情を考慮して、アメリカ合衆国では、大腸癌を自己責任の病気もしくは自分次第の病気と呼んでいます。 40才以上になったら、症状のないうちに、内視鏡による大腸ドックを受けて、腺腫などの前癌性病変をすべて切除しておくことをお勧めします。「転ばぬ先の杖」・「後悔先に立たず」です。


 100%がん予防を目指したい方は、当院でも内視鏡による大腸癌ドックを行っていますので、メールか電話でお申し込みください。詳しくは無痛消化管ドックのページへ。

世界の大腸癌検診の動向  今秋の日本及び欧州消化器病週間 から 

 大腸癌は予防が大切である。大腸進行癌は、FOLFOX、FOLFILIやアバスチンなどの化学療法、ネオアジュバンド療法が進歩して生存期間の延長が認められるとはいえ、死亡率は改善されていない。


 欧州消化器病週間で、ドイツ消化器病学会の大御所クラッセンが、指定講演で、大腸癌検診について述べた。がん検診が未発達の旧東欧諸国の大腸癌5年生存率は、約30%、がん検診がある西欧諸国では大腸癌5年生存率は約50%と述べた。検診をすることで、大腸癌死から助かるチャンスが増大するのである。


 札幌で開かれた日本消化器週間で、アメリカの大腸癌検診協会長の招待講演があった。アメリカでは、便潜血反応よりも、S状結腸鏡や大腸内視鏡検査を用いることが多く、とくに、ここ2-3年、大腸内視鏡を受ける人が増え、検診対象年齢の人口の30%が受けるまでになっていると発表した。耳を疑うほどの高率であるが、これにより、大腸癌の死亡率が急激に減ってきているという。レーガン大統領がポリープを取ったときから、大腸内視鏡が広まり、大腸癌は内視鏡検査で完全に予防できるので、「自己責任の病気」と呼ばれて、大腸内視鏡がさらに広まっているという現状なのだそうだ。ちなみに、アメリカでは発見したポリープ(腺腫)はどんなに小さくても、すべて切除するのが原則であるとのこと。


 日本では、便潜血反応陽性者が内視鏡検診に廻される。日本で便潜血反応による大腸癌検診が始まったのが1988年。中曽根内閣の老人健康保険法に基づく。そのころは、腺腫は前癌病変なのですべて切除すべきというのが常識であった。それまで、5年で2倍に増えていた大腸癌死亡者数が、この検診の開始を境にして、増加しなくなりむしろ減少し始めた。日本全体で年間大腸癌死亡者数は4万人から3万5千人ぐらいに低下してきていた。当時、私は先輩の先生勧めで、東急百貨店でCLEAN COLONを目指す内視鏡による大腸癌検診を行い、東急百貨店保険組合の被保険者を大腸癌から10年にわたり完全予防してきた実績を残している。


 それが、90年代後半、工藤先生が「隆起型のピットパターン3L型の5mm以下の腺腫はすぐに取らなくても良い。」と学会で述べた後、医療費抑制の波とあいまって、学説が一人歩きして「5mm以下のポリープは取らなくてもいい」という考えが広まって、かなりの先生方が、小さなポリープを無視しはじめた。それで、どうなったかというと、近年、日本の大腸癌死亡者数は再び増加傾向に転じているのである。日本とアメリカの大腸癌死亡者数の動向を見ていると、日本も、大腸癌検診の中心を、便潜血反応から大腸内視鏡検査にシフトさせる必要があろう。


 また、腺腫はやはり全部取るべきであろう。 私は当初から工藤先生の考えには反対であり、すべての腺腫はどんなに小さくても見つけたら切除してきたし、切除するべきと唱えてきた。つまり、CLEAN COLONを目指した内視鏡を実践してきた。私の小さなポリープまで取るやり方は、各保険組合から不況時にいろいろと批判された。しかし、今回のアメリカと日本の大腸癌死亡者数の動向をみて、大腸内視鏡はCLEAN COLON を目指すのが、やはり、大腸癌予防の王道であったと確信した次第である。

内視鏡検診、大腸ポリープ切除の大腸癌予防の威力 

 進行大腸癌になった人は、ほとんど内視鏡による大腸検診を受けていない。先月の2例もそうだった。そして、おぞましい病名を告げられると、決まってこう言う。「どうして私が進行大腸癌なの?なにか悪いことした?」 「いえいえ、悪いことをしたわけではありません。「いいこと」をしなかったのです。「いいこと」とは無症状のうちの内視鏡検診です。」 


 ある保険組合から、53歳以上の社員全員の内視鏡検診と完全ポリープ切除を依頼されたことがある。1980年代後半、その会社の人徳の取締役が大腸癌で死に、社員一同大いにあわてた。大腸癌を完全にブロックしたいと思った役員たちは、社員全員の大腸ポリープの切除を、私に依頼してきた。私は合計630名あまりを約3年にわたり、社員全員の内視鏡を行い、すべてのポリープ(陥凹型腫瘍を含む)を完璧に切除した。病理検査の結果、腺腫以上の腫瘍性病変が432名に見つかり、癌は46名に見つかった。進行癌は2例であった。その後、腫瘍の個数や異型度に応じて、定期的な内視鏡検査とポリープ切除を丁寧に繰り返した。癌があったりや腫瘍の多かった人は年に1-2回、腫瘍の少ない人は1.5年に1回ぐらい、腫瘍のない人は3年に一回の 間隔で繰り返しおこなった。それを、約十年間続けた。その結果、その保険組合では、それまで平均して毎年2例ずつ大腸癌で死亡していたが、この検診を始めてからは、大腸癌で死ぬ人は0となった。当初の目的が達成できたのである。この功績で、保険組合の理事長は、大腸癌を克服した組合の指導者として、朝日新聞に取り上げられた。理事長 は自分の写真の大きく載った朝日新聞を私に見せながら、「先生ありがとうございました。」と大変な喜びようであった。


 内視鏡検診と大腸ポリープ切除は、大腸癌予防に大変な威力がある。大腸癌になりたくない人は、実績がある当院の内視鏡による大腸検診・大腸ポリープ切除を、癌による症状が出る前にお受けください。大腸癌を克服したい保険組合の方も、どうぞご相談ください。

中目黒消化器クリニック ご挨拶

世界トップレベルの完璧な無痛内視鏡検査と
手術をあなたに提供します

The best quality of endoscopic examination and surgery will be given to you

田淵正文院長

Director Dr Masafumi Tabuchi
院長 田渕正文

ex-Associate Professor of Tokyo University
東京大学医学部腫瘍外科講師

20130529日本がん撲滅トラサイ宣言

従来のピットパターン診断、縫合技術に加えて、
新たに核パターン診断と毛細血管パターン診断により 

より精緻で正確でリスクの低い診断と治療をあなたに提供します。(2010年8月)

クリニックの近辺の放射線濃度を知りたいときはここをクリック 
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クリニックのある関東平野の風向きを知りたいときはここをクリック 
click here to know the wind direction in the Kantou Plain

〒153-0043 東京都目黒区東山1-10-13    TEL 03-3714-0422

We will give you more definite more safe and more precise endoscopic diagnosis and treatment

with the novel system of nucleus-pattern diagnosis and capillary-pattern diagnosis,

adding to the previous pit-pattern diagnosis system and suturing method. (Aug 2010)



クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績 | 消化器疾患について超音波による前立腺がん治療 | E-mail

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ | 職員募集 | 20130529日本がん撲滅トラサイ宣言


第1ホームページ



ご挨拶



 高齢化社会、食生活の欧米化等に伴い我国においても大腸癌の発生件数が増大しております。特に女性の死因のトップは大腸癌です。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった大腸疾患も急増しております。

 今までの大腸の内視鏡検査は苦痛を伴うものとされてまいりましたが、1987年に私が開発した内視鏡挿入システム(ストレイト法、別名、無挿気浸水挿入法)クリックすると1994年秋に日本消化器内視鏡学会で教育用に発表した挿入法のビデオの一部を御覧いただけます(画像がうまく出ないときは右クリックで 動画を保存してからご覧ください)ではほとんど痛みがなく無痛で、楽に大腸内視鏡検査が受けられると患者の皆様に大変好評をいただいております。後輩の後小路世士夫君や後藤利夫君、草場元樹君や鈴木雄久君、その他おおくの先生がたが、私からこの方法を学び、いまや大腸内視鏡の名医として活躍されています。その現状をみると、この方法がいかに優れていたかがわかるというものです。 1988年には、フジノンと協力してスコープを開発して、大腸ポリープのピットパターン診断の臨床応用・ルーチン化に世界で始めて成功しました。現在、ピットパターン診断は大腸内視鏡診断に必須のものとして定着しています。

 これまでに(2003年8月現在)約33,000例の内視鏡検査、約2,250個の大腸癌、約127,000個の大腸ポリープを切除してまいりました。これらは1人の医師としては全世界的にもトップレベルと自負しております。また、発見しにくい平坦陥凹型腫瘍を、自ら開発した近接型深焦点深度型高解像電子内視鏡と色素二重染色法を用いて、他院ではあまり発見できなかった時代からずっと多数発見してきました。陥凹型腫瘍が、隆起型腫瘍とは異なる遺伝子変化のパターンを持つことを、1992年に共同研究者と世界で始めて証明しました。また、1994年厚生省からの研究補助金を頂いて、コンピュータによるデータ解析から、陥凹型癌が隆起型癌よりずっとすばやく浸潤することも証明しました。1996年から、破れた腸を内視鏡で縫いあわせる治療を行い、国際的にも大変注目されました。この縫合技術が基礎となって、内視鏡的粘膜剥離術といったかなり危険だった内視鏡手術も安全に施行することができるようになりました。

 さらに、大腸ポリ―プ患者の長年にわたる経過観察から、「大腸に腺腫のできる方は他の臓器にも癌が発生しやすい」こともわかってきました。特に、食道癌、胃癌、肺癌、前立腺癌などは注意が必要です。初期のころは、私は大腸のみ診ていましたが、大腸ポリープ切除後の患者が食道癌や胃癌に倒れる姿を多数みて、7-8年前より、上部消化管にも重点を置き、胃癌予防のためピロリ菌退治や、拡大色素内視鏡による食道癌の早期発見も積極的におこなってきました。上部消化管内視鏡検査は約2万例、ピロリ菌除菌療法は約2500例の経験を積んでいます。1999年ごろに、大腸で磨いた色素二重染色法を食道に応用して、欧米で近年急激に増加したバレット腺癌の早期発見法を開発しました。その方法は、米国のスタンフォード大学のヴァンダム教授やオランダのアムステルダムのティトガット教授により広く紹介されて、現在、国際的に大変注目されています。業績詳細参照

 「楽に検査を行い、正しい治療に至る」という信条より、医療法人を「至楽正会」と名付けました。患者の皆様の不安を少しでも早く、楽に取り除き、癌を予防することが私の使命だと考えております。1例1例十分な時間をかけて、丁寧に内視鏡をおこなってきました。私の指示通りに当院で内視鏡検査をお受けになっている方で、大腸癌、胃癌、食道癌でお亡くなりになった方は1人もいません。皆様の信頼に応えるため、これからも全力をつくしてまいります。ハイレベルで無痛の精密な消化器内視鏡診療をお望みの方は、どうぞ御来院ください。クリニックの案内・地図

 2003年夏には、招かれてチェコとドイツに出かけて、陥凹型大腸腫瘍の見つけ方や、拡大色素内視鏡検査のやり方を教えてきました。関連記事1)関連記事2)関連記事3)。 テレビの出演(61MB約5分)も依頼されて、大腸癌予防には、便潜血反応や内視鏡による検診が重要であることをチェコの皆さんに呼びかけてきました。チェコは食事が脂っぽくて、ヨーロッパの中でもとりわけ、大腸癌の頻度が高く、人口1000万人で、毎年7500人ぐらいの方が大腸癌に苦しめられています。ちなみに、日本は人口12000万人ぐらいで、毎年約8万ないし10万人が大腸癌になり、3万5000人から4万人が大腸癌で死亡しています。 大腸癌は小さなうちに早期発見すれば、内視鏡でとって簡単に治ります。症状が出てからでは死ぬ確率が7割以上になりますので、癌年齢に達している人や、家族に癌のある人は、症状のないうちに内視鏡検査をお受けください。そうすれば、前癌病変のポリープ・腺腫を内視鏡的に切除して、大腸癌死は100%近く予防できます。

 2006年3月から、友人の鈴木誠先生に協力して、泌尿器科、超音波による前立腺がん治療HIFUを始めました。詳細  



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