たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

抗がん剤

癌診療において、アバスチンの自由診療と抗がん剤の保険診療の混合診療の可否をめぐる裁判の行方 

  2007年11月8日の裁判の上告審の判決が昨日あった。結果は、原告の逆転敗訴であった。

 

 一般に、混合診療は、認められるものは個別に政府によって認められており、認められないものは個別に政府によって認められていないのが、現状である。厚生労働省のホームページを読めば、混合診療は個別判断の対象と書いてあり、社会保険法のどこにも混合診療禁止の文字はない。たとえば、人間ドック(自由診療)で大腸内視鏡を行い、切除すべき大腸ポリープがみつかって、そのまま、内視鏡的大腸ポリープ切除術(社会保険診療)で行うことは、通達により認められている。


 今回の判決は、癌診療でアバスチン(自由診療)、抗癌剤(社会保険診療)という組み合わせは認められないということであろう。この問題は、医学的な問題であるとともに、医療経済の問題である。医学的には、併用のほうが延命効果はあるのは疑いない。どれだけお金を払って、どれだけ延命効果があるのかということが判断のポイントとなる。アバスチンの効果は確かにあるが、値段がちょっと高い。癌患者が毎年55万人も新たに発生している我が国の現状からは、値段を安くして、適応を拡大したほうが、みんなのためのように思うがいかがなものであろうか?今後、考慮すべき問題だと思う。


 ちなみに、大腸内視鏡の人間ドック(自由診療)と内視鏡的大腸切除術(社会保険診療)の混合診療を認めているのは、大腸をきれいにするのが、大変で、患者に二度手間をかけさせないという配慮からであろう。

 

 この事件は最高裁に上告されるのであろうか?

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

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今年の感想 

 個人的には、いろいろと大変で残念な事が続いたが、家族全員が大きな病気にかかることもなく生き延びたのは何よりで、天に感謝している。


 クリニックには、毎年のこととはいえ、手遅れ気味の大腸がん患者が数名見つかり、大腸がん予防の啓蒙活動の社会的不足に嘆く。また、慢性胃炎のピロリ菌退治や、抗がん剤、各種治療や診断の制限などなど、社会保険診療枠の後退が悪影響をもたらした数々の患者を目の当たりにして、医師として、人間として、憤りと諦めを感じる日々であった。

 

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