たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

手術

大腸癌のルール <鳥越俊太郎さん  直腸がん、肝臓へ転移、手術へ?>

日刊スポーツの芸能ニュース

「鳥越俊太郎氏、がんが肝臓に転移し手術へ」
 ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(68)が9日、コメンテーターを務めるテレビ朝日系「スーパーモーニング」で「がんが肝臓に転移していることが分かったので、明日から休みます」と報告し、手術を受けるとした。鳥越氏は、05年10月に直腸がんで、開腹手術ではなく、腹腔(ふっくう)鏡下手術を受けた。その時に医師から、肺と肝臓に転移する可能性があると言われていたという。07年には右肺を切除し、左肺も一部切除した。 今回の転移について鳥越氏は「『肝臓がん』ではない。いよいよあいつはダメかと思われちゃうけど、そうじゃない。(転移、手術は)できれば避けたかったが」と話した。2009年2月9日11時54分

 

 大腸癌の手術に見かけ上(肉眼的に)、成功しても、癌が再発してくるというのは、珍しいことではない。鳥越さんのような直腸進行がんでは、再発部は、直腸の局所、肺、肝臓である。血液の流れから、直腸は肛門部の静脈を通じて下大静脈に入り、肺にがん細胞が流れていく場合と、下腸間膜静脈から門脈本管に入り、肝臓に転移する場合がある。2007年の肺の切除が、肺転移の切除であったとすれば、今回転移したがん細胞の転移活性は強く、今後の治療は結構厳しいと予想されて、心配である。

 

 肝臓転移も単発性なら手術で治る見込みがあるが、多発性散発性の場合は、手術では姑息的な治療しか得られない。根治を目指すなら化学療法が治療の中心となる。すでに、標準的な化学療法を行っていて、再発したのであれば、なにか新たな化学療法治療薬を考えるべきタイミングであろう.。また、化学療法を行っていて、それが好く効いて、転移癌が小さくなり、癌が取りきれるほど小さい形になってきたのであれば、手術も明るい見込みがある。なんとか助かってもらいたいものだ。

鳥越俊太郎さんの健康は窮地に追い込まれたが、どうすれば、このような窮地に陥らずに済んでいたのであろうか?

 鳥越俊太郎氏、がん手術を電話報告
<2005年10月3日付日刊スポーツ>より抜粋
 ジャーナリストの鳥越俊太郎さん(65)が直腸がんのため今週中に手術することが2日、分かった。この日、コメンテーターを務めるテレビ朝日の情報番組「スーパーモーニング」(月~金曜午前8時半)に電話出演し、明らかにした。鳥越さんは「思い浮かべたのは、14年前に直腸がんで手術した渡哲也さん。元気に仕事している姿に勇気付けられ、私もがんとけんかしてきます」と話した。この日から都内の病院に入院し、約2週間で退院予定。
 番組の冒頭で電話出演した鳥越さんは「実は直腸がんが見つかりました」と淡々と告白した。さらに「自分なりに闘う姿勢を示し、同じ境遇にいる人に『ああすれば治るんだ』と思ってもらえれば、私の心の支えにもなる」と話した。スタジオで心配そうな表情の作家吉永みち子さんに「あまり緊張しないでよ」と声を掛けるなど、終始落ち着いた様子だった。
 鳥越さんはこの日、都内の病院に入院。直後に日刊スポーツの電話取材に応じた。9月下旬、3年ぶりに人間ドックの検査を受けたところ、検便の潜血検査で異常が見つかった。9月30日、直腸の内視鏡検査でがんと判明した。鳥越さんは「何も見ずに医者からがんと宣告されたら落ち込んだかもしれないけれど、内視鏡で自分の目でがんを見ていたからね。こいつとけんかするのか、闘っていくのかって、落ち込まずに淡々と受け止めることができた。不安や心配とかの気持ちはない」と打ち明けた。

 今回転移した直腸がんも、そのはじめは小さなポリープであった。小さなうちに「ジュー」と焼き取れば、簡単に治る。粘膜内に癌が留まれば、ほぼ100%転移なしである。4年前の2005年の報道によれば、鳥越さんは3年ぶりのドックの便潜血反応をきっかけに、大腸内視鏡を行って、進行癌が見つかった。その三年前の検診、つまり、2002年(61歳)には、大腸がんはあったのか?

 2005年に転移のリスクな高いレベルまで発育していたと考えると、2002年、直腸がんはおそらくポリープのレベルであっただろう。しかし、そのときの便潜血反応は陰性。癌があるのなら、ひっかかって欲しかったのだが、残念ながら、便潜血反応では、早期がんはあまり引っかからない。とくに、直腸癌は結腸癌に比べて、陽性になりにくい。残念ながら、これが自然が定めた大腸がんのルールである。

 

 50歳を超えたら、大腸内視鏡でしっかりと検査をする。そして、癌関連病変をすべて切除する。日本では社会的にいろいろと抑制されるが、やっぱり、これが予防の切り札である。自然の定めたルールは、権力者といえども変えられない。「便潜血さえしていれば大丈夫」というのは、財布の事情や医療レベルの低さが語らせる「うそ」なのである。自然のルールを無視した日本システムの犠牲者が、また1人・・・・・しかも、社会を正してきたジャーナリストであったとは・・・・・。

 

 ちなみに、両陛下は毎年、内視鏡による消化管ドックをきちんと受けて、消化管癌を予防なさっています。みなさんも、内視鏡消化管ドックを受けましょう。両陛下が受けていらっしゃるのと同じレベルの内視鏡ドックを、当院では提供することができます。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

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皇太子殿下 十二指腸腺腫になる。 十二指腸ポリープの内視鏡的治療のポイント

皇太子さま、6日にポリープ切除手術 2007年5月31日19時53分  読売新聞)

 宮内庁は31日、十二指腸にポリープが見つかった皇太子さまが6月5日に東大病院に入院、翌6日に内視鏡を使った切除手術を受けられる、と発表した。手術後も約2週間の入院と静養が必要という。記者会見した金沢一郎・皇室医務主管によると、皇太子さまは3月24日の定期健康診断でポリープが一つ見つかり、5月12日には内視鏡で組織片を採取、顕微鏡で検査したところ、ポリープは良性と診断された。十二指腸のポリープ切除手術は胃などと違って切除部位が傷付きやすく、皇太子さまのポリープは非常に珍しい場所にあるという。金沢医務主管は「万全を期すため、東大病院で手術することにした」と述べた。手術後は同病院で約1週間の入院、退院後もお住まいの東宮御所で約1週間の静養が必要という。

皇太子さま、6月6日に東大病院でポリープ切除 (2007年5月31日23:00 日経新聞)

 宮内庁は31日、皇太子さまの十二指腸ポリープの切除を、6月6日に東京大学医学部付属病院で行うと発表した。内視鏡を使った切除術で、開腹はしない。5日から約1週間入院し、退院後も東宮御所で少なくとも1週間静養される。同庁によると、ポリープは「亜有茎性良性腺腫」で、大きなものではないという。ただ十二指腸のポリープは症例が少ないため、万全を期して東大病院で専門医らが切除する。皇太子さまは3月24日に宮内庁病院で健康診断を受けられた際に十二指腸ポリープが見つかり、5月12日に同病院で組織片を採取して詳しく調べていた。

皇太子さま、6日にポリープ切除=東大付属病院で-術後1週間入院・宮内庁  5月31日18時0分配信 時事通信

 宮内庁は31日、皇太子さまの十二指腸に見つかったポリープについて、6月5日に東大医学部付属病院(東京都文京区)に入院され、6日に内視鏡で切除すると発表した。皇太子さまは、3月24日の定期健診で十二指腸にポリープが見つかり、5月12日に宮内庁病院で内視鏡で検査を行った。その結果、ポリープは亜有茎性良性腺腫と確認された。十二指腸のポリープは1万人に2、3人程度の珍しいものであるため、万全を期すため設備や人員が整った東大医学部付属病院で切除し、術後の経過も慎重に診る必要があるという。切除後1週間前後入院し、退院後も少なくとも1週間はお住まいの東宮御所で静養する。

東大病院は万全の体制で内視鏡手術へ

 マスコミ各社が、5月31日、一斉に報じたところによると、皇太子殿下の十二指腸ポリープは、亜有茎性の良性腺腫で、発生部位は腺腫としては非常に珍しい場所とのことである。そして、6月6日に東大病院で切除されることになった。東大病院で行うのは術中の穿孔や大出血に備えてのことである。術後2週間の安静を予定したのは、後出血を危惧しているためである。私は十二指腸も含めて、各種ポリープを山のように取ってきたが、穿孔という偶発症は、万が一といったレベルだが、やはり、一定の率でおきてしまう。病変が大きくなると、穿孔や大出血という偶発症の危険率も上がる。偶発症発生のときは、開腹してでも助けようということなのだ。ちなみに、「十二指腸ポリープは1万人に2-3人」という時事通信の報道には、疑問がある。十二指腸ポリープは、2-3人に一人にはあるありふれた病変である。おそらく、今回の皇太子の十二指腸ポリープ、つまり、亜有茎性の腺腫に限ってのコメントを、解釈し間違えたものと考えられる。

 さて、一般に、十二指腸というのは、結構特殊なところである。管腔がせまく、空気の入れ方によっても、スコープの動かし方にかなり制限を受ける。また、十二指腸壁は、1mmの薄さの大腸よりもさらに薄い。特に、膵臓で裏打ちされていないところの、内視鏡的処置は穿孔しないように細心の注意が必要だ。筋層と病変の間に液体を注入して、穿孔のリスクを減らすEMR法を採用するのも一法だろう。十二指腸では、キャップ法やITナイフは穿孔例の報告が多いので、お勧めできない。スネアで切断するとき、通電して妙に硬い感じがしたら、筋層をつかんでいる可能性が高いので、スネアの握りなおしが必要だ。スネアは腰の強すぎるのは避けたほうがよい。病変が大きかったり、特殊な形をしていてスネアがうまくかからないときは、無理に一括切除しようとするより、分割切除のほうが穿孔のリスクは低い。また、十二指腸ポリープは切除後に病変が奥へ落ちていくと予想されるので、病理標本を確実に得るためには、2チャンネルスコープを用いて、ダブルスネア法でやるのがいいだろう。

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