感染症
月曜日の続きです。
解答 1日遅れてすみません。
月曜日の問題は以下の如くでした。
次の感染症のうち 今年日本で死亡者数が最も多いと予想されるものはどれですか?
1、新型コロナウィルス
2、パピローマウィルス
3、C型肝炎ウィルス
4、B型肝炎ウィルス
5、結核
6、エイズウィルス
7、ピロリ菌
8、連鎖球菌
9、インフルエンザウィルス
10、サルモネラ菌
さて 解答です。
1、新型コロナウィルスは、第二波 第三波の程度にもよるが、第一波で800人程度なので、多くてもせいぜい2000人程度まで
2、パピローマウィルスは、子宮頸がんの大半 肛門がん 陰茎がん 口腔がんの一部 咽頭がん の一部 食道がん一部の原因となるが、最も多い子宮頸がんで発症13000人くらい死亡約3000人なので、多くても年間10000人くらいまで
3、4、C型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルスはいずれも原発性肝臓がんの原因 かつては、年間4万人死んでいた時代もあったが、ここ15年くらい薬が劇的に進化して 特にc型肝炎は特効薬出現で絶滅途上。で、年間2万5000人程度
5、結核はかつて、ストレプトマイシンの注射薬が開発されるまでは不治の病と恐れられ、年間数十万人が死んでいた国民病の時代もあった。どの大学病院にも結核病棟があった。東大で結核病棟が廃止されたのは橋本行革の1990年代半ば。今でも第1類感染症に指定されている。ただし国民的なワクチン投与の予防策が行き届いて、今では、年間2000-3000人の死亡。
6、エイズウィルス 日本は残念ながら先進国の中で新規患者数が最も多く、年間約1500人ぐらい。特効薬開発に成功したお蔭で、ほとんど死なないが、一生薬を飲み続ける必要がある。今年日本には約三万人の患者がいる。
7、ピロリ菌、胃がんの95%ぐらいがピロリ菌が原因。2000年台初頭に、「胃がんの大半がピロリ菌が原因」と世界中の学会でコンセンサスが確立されたが、我国の対応は遅く ピロリ菌退治が保険認可されたのは2013年。かつては胃がん死亡 年間6万人弱だったが、ピロリ菌退治が広く一般に行われるようになって、死亡者数は減り始め、今年は死亡者数4万1000-2000人くらいだろう。
8、連鎖球菌、一部の肺炎の原因や人喰い増殖する危険なものもあるが、抗生剤がよく効くのであまり死なない。せいぜい1000人くらいまで
9、インフルエンザウィルス ここ数年の動きは日本の死者数は1000-4000人くらい コロナウィルスと感染経路がリンクしていて 今年は特に少なかった。一番人気であったのは アメリカでこの冬何万人も死んでいるという報道があったせいだろう。
10、サルモネラ菌 腸炎から下痢になる。上下水道の整備されていない極貧国では未だに万単位で死亡の原因となっている。抗生剤と点滴のない時代には数万人死んでいた。今では、抗生剤と整備された医療制度、きれいな上下水道のお蔭でほぼ0。
ということで
答えは
7、ピロリ菌でした。
正解者おめでとうございます。
ちなみに 余り学会では声高に議論されてきませんでしたが、私見では ピロリ菌の感染源は「土」です。
こんな感じで 講義を始めていました。
新型コロナウィルスは、感染してすぐ死ぬので、確かに怖いですが、命を脅かすものは、いろいろあって、バランスの良い予防が必要です。
歴史的に 感染症との戦いの中で、社会生活が営まれていることを、今回は改めて認識することになりました。
進化する疫病から、日本を守るため より強力で有能な行政組織を構築しなければなりません。
1983年に「慢性胃炎はピロリ菌が原因の感染症だ」とオーストラリアのヲーレン教授が唱えた。そして、その後の疫学的研究で、胃癌の原因もピロリ菌であることが有力となり、1994年WHOは全世界に向けて「胃癌の一番の原因はピロリ菌である。」と宣言した。
ところが、わが国の政府、当時の厚生省はこれを認めなかった。なぜなら、国立がんセンターに入院していた胃癌患者のピロリ菌の抗体価を測定してみると、約1/3が陰性であったのである。
しかし、しかし、である。その後の研究で、重大な事実が判明する。オーストラリアのピロリ菌と日本のピロリ菌は、同じではなかったのだ。当時の測定方法は、オーストラリアのピロリ菌に対する抗体価に対するものであって、日本のピロリ菌に対する抗体価ではなかったのである。
研究は続き、それでは、ピロリ菌を退治したら、胃癌の発生は減るのかと言うことになった。2000年代の前半、日本各地の大学や病院7-8箇所で、ピロリ菌を退治したグループでは、ピロリ菌を放置したグループに比べて、除菌したグループでは、除菌成功後3年たつと、胃癌の発生率が平均五分の一に下がることが判明したのである。症例対象は日本人で1300例を超える。しかし、厚生労働省はこれを一蹴して、香港のわずか100例前後のNew England Journal Of Medicine 論文を盾に、自らの無謬性を今でも貫いている。
これが昨今、国会で取り上げられたらしい。三木先生の話によると、浅香教授が国会に呼ばれた。議員さんから「胃癌は感染症なのか?」と尋ねられて、北大の浅香教授が「そうです。その通りです。」と答えたそうだ。肝炎ウィルスと同じ、厚生労働省の不作為の過失。その過失で約70万人の日本人が胃癌で死んだという真実が、厚生労働省のお役人様に突きつけられる日がついに来たのだろうか?
ただ、行政の混乱は医療現場にとって決して好ましくない。なんとか速やかに、人の輪も崩れず、胃癌も効果的に予防できる体制に移行できるように、願っているのは、三木先生も私も同じ考えだ。
クリニックの案内・地図|(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック|田渕正文院長の履歴|
感染経路 | 予防ワクチン | 感染の治療法 | 特徴 | |
1.ピロリ菌(胃癌)。詳細のページ | 土、土に接した飲食物、患者の胃液 | × | ○ | 現在、治療技術が確立されているのに、公的医療で受けれない。 |
2.B型肝炎ウィルス(肝臓癌) | 血液、産道感染、針事故、輸血 | ○ | ○▲ | 特効薬ができて、治療技術は進歩してきた |
3.C型肝炎ウィルス(肝臓癌) | 血液、針事故、輸血、血液製剤 | × | ○▲ | 近年では7~8割治せるようになった。 |
4.乳頭腫ウィルス(子宮頸癌) | 接触、性交 | ○ | × | |
5.EBウィルス(胃癌) | 接触、キス、性交 | × | × | |
6.HTLV-1(成人T細胞性白血病) | 性交、母乳、輸血 | × | × | 九州を中心として西日本に多い。 |
7.HIV(カポジ肉腫、悪性リンパ腫) | 性交、輸血 | ×,▲ | ▲ | 近年の薬の進歩で、致死の病気ではなくなた。 |
隣国、中国ではHIV/AIDSに対する、ワクチン投与が試験的に始まっているそうだ。(2007.2月,第3回日本消化管学会情報)