たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

大食い

フジテレビ、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演、「大食い」についてコメント 

  本日、午前中、お台場のフジテレビV6スタジオで、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演した。テーマは「大食い」。「大食い」は危険だというテーマで番組制作を進めていたが、私が土曜日に指摘した危険のうち、「膵炎」が意外だったようで、12/22に行った録画だけでなく、結局、出演も依頼されることになった。


 出演者は、メイン司会が、高樹沙耶さん、サブ司会が野島卓(フジテレビアナウンサー)さんと石本沙織(フジテレビアナウンサー)さん。水曜日ゲストがタレントの磯野貴理さん、一日ゲストが近藤典子さんと私、田淵正文。水曜日の企画プレゼンターが武田祐子(フジテレビアナウンサー)で、アシスタントはタレントの武田航平さんであった。10時のティータイムに集まったマダムたちの疑問に、ゲストのお医者さんがお答えするといった風情の番組であった。


 最初に、4kgのカレーライスを30分でぺろりと平らげる、女性のビデオが流されて、私は、びっくり。そして、彼女は、まだもう一杯食べられると発言。そんなに食べるのであるなら、太っていると思いがちであるが、彼女は150cm35kgという異常にスリムな体である。


 なぜそんなに食べて満腹にならないか?そして、そんなに食べるのにどうして太らないのか?と尋ねられた。満腹になる仕組みを簡単に説明した。視床下部にある満腹中枢を刺激するのは、血糖値の上昇、胃の伸展などである。彼女の胃が異常に大きくて、なかなか伸展しないのではないか、また、彼女は消化吸収機構にいろいろ問題があって、実は小腸が栄養を十分に吸収しないのではないか、そのため、血糖値が上昇せず、満腹にもならないし、太りもしないのではないか、と推測を述べた。


 次に、大食いで起こる「からだの異常」についての話になった。実際はいろいろあるのだが、話題はシナリオどおり、膵臓へと向かう。大食いでは、膵臓が hyper-function になり、さらに over-function から、膵臓が傷む。その様子を、磯野真理さんと武田航平さんが、レゴを分解するコントで演じてみせた。医学的には、「毛細血管の中性脂肪が、漏れ出してきた膵液中のリパーゼで分解されて、油滴となり、毛細血管が閉塞して、油滴梗塞を起こし、膵臓が溶ける。」と説明したのであるが、素人さんには、わかりにくいので、コントにしたわけだ。番組制作会社NEXTEPのスタッフの面々の知恵には恐れ入るばかりだ。


 事前の打ち合わせで、武田祐子さんはじめ、番組制作のスタッフが強く興味を持ったのは、実は、社会保険医療の範囲では、慢性膵炎につける薬がないことであった。確かに、商品名フォイパンや商品名カモステート(どちらも化学物質名はメシル酸カモスタット)という「慢性膵炎の急性増悪時に2週間投与に限ってだけ認められている薬があるのだが、実質的には、審査で全額査定されるために、ほとんどの医療機関では投与を差し控えているのが東京都の実情実態である。


 つい最近も、この薬を飲まないとおなかの調子の悪くなる人が、女子医大で処方してもらえないといって、自由診療の私のクリニックに来院していた。その人いわく、「女子医大の外来に、張り出されている処方注意薬のリストに、この薬の名前が出ていました。コレが欲しいといったのに、先生は出せないの一点張りでした。」


 番組の中で、武田祐子さんがそのことについて触れようとする。「会社の検診では、膵臓はどのようにチェックされているのですか?」「あまり詳しくやっていません。」「どうして膵臓をあまり調べないことになっているのですか?」「・・・(しばし沈黙)・・・・・軽い膵炎は食べないと治っていくからで、放置しているのです。」 


 沈黙の中で、心のなかで答えた言葉は 「社会保険医療では、慢性膵臓炎に出す薬がないので、保険医療機関では、その診断を嫌がるのです。」。その言葉を飲み込んだ理由は、番組の雰囲気に合わないと判断したからである。保険医療問題は、奥が深く、暗い問題なので、明るく楽しい「ハピふる」にはそぐわないだろう。「大食い」というのは、わんこそば食い競争が示すように、いわゆるひとつの「コケチッシュ」なレクレーション、文化であるからだ。


 慢性胃炎や慢性小腸炎、大腸ポリープなどにも、同様の問題があり、一度、正面きって、社会保険医療の問題点を番組として取り上げてもらいたいものである。
 

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大食いの危険性について フジテレビの取材を受ける。 12月26日放送予定。 

 12月20日(木)、本年10月1日からスタートしたフジテレビ系列の新番組「ハピふる!」から、取材の申込があった。


「最近、大食いタレントの影響などで、“大食い”が注目されています。ただし、大食いというのは、生活習慣病、肥満・・・などなど、さまざまな危険とも、隣り合わせであると思います。私ども「ハピふる」ではそういった“大食い”の危険性を視聴者のかたがたに促すことができればと思い、今回、水曜日の「これって、私だけ?!」のコーナーで「大食いの危険性」を取り上げることにしました。ついては、先生にご協力いただきたく・・・云々」といった内容であった。

 
つまり、“大食いの危険性”について、コメントが欲しいとのこと。


 
そもそも、日本人は、わんこそばの早食い・大食い競争の例を挙げるまでもなく、早食い・大食い競争が好きな民族である。12月26日オンエア予定ということで、ずいぶん、急いでいたのか、申し込みの翌日、金曜日の夜に、番組制作会社の面々が、インタビューのフジテレビのアナウンサー武田祐子さんを連れてやってきた。武田さんはテレビで受ける印象よりも小柄で華奢な感じであった。

Q1. どのような状態で大食いといえますか?

A1. 一般的に、まわりの人よりたくさん食べれば、「大食い」といわれます。まわりの人の1.5倍ぐらい以上食べると「大食い」といわれているような印象がありますが、医学的に「大食い」は明確には定義されていません。しかし、それでは、お答えになりませんので、敢えて、私なりに考えてみました。

 ひとつは、カロリー面からのものです。人の平均一日摂取カロリー量(Kcal)は体重(kg)の25から30倍といわれています。25は坐業の人、30は肉体労働の人です。たとえば、体重60kgの人なら、1500から1800Kcalとなります。その1.5倍以上食べれば、その人にとっての大食いといえるのではないでしょうか。つまり、60kgの人なら、2300から2700kcal以上で「大食い」といえるのではないかと思います。


 もうひとつは、胃の容積から考える基準です。日本人の標準的な胃の容積は、約1.5リットルです。ですから、それより多い容量を一気に食べると、「大食い」といえるかもしれませんね。

Q2.「大食い」をすべきではないのは、どのような人ですか?

A2.医学的に大食いを避けなければならない人は、1.膵臓の弱い人、2.消化管に潰瘍のある人、3.手術後などで腹膜癒着のある人、4.肥満の人、5.糖尿病の人などです。

Q3.「大食い」には、どのような弊害が出てきますか?

A3.

1.膵臓の弱い人は、膵臓炎になり、食後、上腹部が重く痛むようになります。それでも大食いを続けると、さらに、膵臓炎が悪化して、始終、腹痛があるようになります。腹痛だけでなく、背部痛が出る場合もあります。とくに、恐いのは、急性膵臓炎です。3-4日で急死することもあります。あの徳川家康も、「てんぷら」をたらふく食べて、急性膵炎で死んだと伝えられています。
2.消化管に潰瘍のある人は、消化管が膨らむことにより、急に消化管が破れて腹膜炎をおこして、激しい腹痛と発熱に襲われたり、また、潰瘍から出血して、急に吐血や下血をするなど、命に係わる緊急事態が起こりやすくなりますので、要注意です。
3.手術後などで腹膜癒着している人が、「大食い」すると、癒着で腸が細くなっているところに、食べ物が詰まって、通過不全状態になります。これを医学的には「イレウス」と呼びます。イレウスになりますと、腸が捻転したり、腐ったりして、大変な痛みになり、腐ったところから、毒素が出たり、血液の中にばい菌が入ったりして、一気に死亡することもあるため、緊急開腹手術が必要になります。
4.大食いが続けば、カロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病になります。肥満は、心筋梗塞、脳梗塞、などなど、恐い病気にかかりやすくなります。

5.糖尿病はひどくなると、網膜の血管が壊れて目が見えなくなったり、腎臓が悪くなって透析しなければならなくなったり、手足に痺れが来たりします。また、勃起不全がおこったり、不感症になったりして、性生活にも大きな支障をきたす場合もあります。

 さらに、注意しなければならないは、「大食い」が、病気の症状として現れることです。心因性食欲不振症では、食欲不振というものの、時に大食いします。この場合、大食いした後、自ら、嘔吐を促して、食べたものを吐くといった異常行動をとる場合があります。この病気は、やせていることにあこがれることがきっかけでなるといわれています。脳幹でのホルモン異常がおこり、精神にも安定が失われて、回復不能となり、死亡することもあります。カーペンターズのカレンが32歳の若さで、死んだのはこの病気が原因でした。我々おじさん世代では、有名な話です。

Q4.「大食い」のメカニズムを教えてください。

A4.食べ物は、胃に蓄えられて、少しずつ、小腸に流れていきます。普通、胃に蓄えられている時間は平均2時間です。食べ物は小腸に入ると蠕動で下に流れていきます。胃の容積は1.5リットルぐらいですから、たくさん食べるためには、胃から小腸への流れと小腸の下への蠕動運動が速くて強いことが要求されます。胃と小腸の間に関所は、幽門というところで、ここが大きく開いていると、食べ物が流れやすいとされています。

Q5.他局の番組になるのですが、大食いタレントの大食い時のCTを取って、胃が極端に拡張していたようですが、胃が大きくなることもあるのでしょうか?

A5.生まれつき、大きな人もいるでしょうし、大食習慣から胃が大きくなる場合も考えられます。また、特殊な結合組織を持っているため、胃が極端に拡張できる可能性も考えられます。胃の容積が大きければ、腸への流れが悪くても結構たくさん食べられるでしょうね。

 ところで、腹いっぱい食べて、もう要らないという食欲の抑制は、視床下部にある満腹中枢の刺激によって起こります。満腹中枢は胃壁が機械的に伸展されたり、血糖値が上がったり、脂肪細胞に脂肪吸収されると出てくるレプチンという物質などで刺激されます。 この満腹中枢が、さまざまな原因で障害を受けると、満腹しなくなり、いつまでの食欲が残り、「大食い」となります。

Q6.やせの「大食い」が多い理由は?

A6.やせているほうが、おなかが膨らむ余地が多いので、多く食べやすい。また、やせていると、脂肪細胞が少なく、そのため、脂肪細胞から出てくる食欲を抑える物質(たとえばレプチンなど)も少なくなる。以上のような事情で、やせの「大食い」が多くなるのではないかと思います。 

 
などなどと、打ち合わせを含めて、撮影は約2時間に及んだ。ダイレクターの近藤隆さんは、結構、下調べをしていて、胃下垂、褐色脂肪細胞、逆流性食道炎、などと、「大食い」の関係も尋ねてきた。 しかし、放映時間は、長くても1分であろう。今頃、ディレクターの筋書きにあった形で、必要な部分だけが、取れだされて編集されているはずである。どんな風に編集してくるのか、興味深いところだ。


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