午前中は、「内視鏡特殊光観察の光と影ー色素内視鏡を越えられるか?」に参加。

 FICEとNBIが色素内視鏡よりも優れている点は、毛細血管が簡単に見える点である。微小食道癌・喉頭癌の存在診断では既に十分な臨床的成果を挙げている。そこで、大腸や胃ではどうか ?という企画なのだ。

 

 大腸腫瘍ではピットパターン診断の研究が、ずいぶんと進んでいる。毛細血管観察によるFICEやNBIの上乗せ診断効果はわずかなようだ。潰瘍性大腸炎に 発生する(COLITIC CANCER)癌の存在診断についても、FICE、NBI、AFIともに大きな成果は未だない。

 

 胃癌では、胃小溝や胃腺口の消失や、縮れたような不整な微細血管の出現が、癌特有の所見である。しかし、 新潟の八木一芳先生によると、癌が粘膜表面に顔を出しているときは、高い診断能を得られるが、癌が粘膜中層を這うように広がるときは、診断能は低くなってしまうそうだ。座長の八尾隆史先生は、「生検による組織検査は、 やはり、欠かせない。」とコメントしていた。未分化型の胃癌の広がりを正確に診断するのは、難しいのである。

 

 消化管内視鏡の最大の目標は、癌の有無を確認することと、癌の広がりを把握すること、癌を取り去ることである。これらが短時間に容易にできる、さらなる新しい技術の開発が要求されている。獨協医大中村哲也先生の発表、「増感因子を用いたレーザー光による診断と治療(PDD、PDT)の胃癌への応用の試み」は、その答えのひとつかもしれない。

 

 昼は、島根の木下芳一教授の「メタボリックシンドローム時代の上部消化管疾患に迫る」に参加。要は、胃酸分泌亢進の時代的背景と逆流性食道炎、機能性ディスペプシアとの関係といったところのお話だったのであるが、島根医大における20年前と5年前と今の患者の数と、年齢構成の違いについての話が面白かった。

 

 島根は、いまや3人に1人は、60歳以上の老人先進県。病院の経営のために、患者数と年齢構成を調べてみたら、80才代、70才台、60才台の患者数が純増して、20年前の2.5倍の患者がいるとのこと。しかし、医師の数は20年と同じ。 「昔の教授がうらやましい。」と。

 その話を京都大学の千葉勉教授にしたら、「それは田舎島根の特殊事情じゃないか?」といわれて、「京都でも調べてみたら」と言い返し、2人で調べてみたら、京都大学も事情は同じだったそうで、京都のことを、「 都会と思っている田舎」と、コメント。さらに、彼らの出身大学のある神戸の中核病院をさらに、調べてみたら、なんと、神戸も同じ事情だったそうである。 「田舎と思われていない田舎」・・・・。

 

 夜の懇親会で、その病院の消化器科部長と歓談。「年度末に、常勤が2人やめて、補充が見つかりません。朝の9時から夜の9時まで外来をして、くたくたです。「癌中核病院」として指名されて、50km先からでも患者が押し寄せてきて、とても、もう医療レベルが維持できません。もう、崩壊です。」 医局をつぶし、研修医の5時帰宅を推奨し、使命感をもって臨床を続けている医師 たちに、報いなかった(むしろ、いじめ続けた)政策のつけが、爆発しはじめている。文部省と厚生労働省、この政策立案に関った官僚は、医師を大切にしなかった間違いを素直に反省すべきだろう。

 医局をつぶせば、地域病院の医療レベルが下がり、研修医を5時に帰宅させれば、臨床能力の育成が遅れ、診療報酬を下げれば、病院がつぶれ、医師がパンクすることがわからなかった人たちには、医療行政を司る資格はない だろう。

 

 発見伝茶屋での2次会で、癌研の武藤徹一郎院長と話。先生、酔った勢いで曰く、「 一度、(医療界は)つぶれるしかないな、つぶれないと、わからないんだよ」「それでは、患者も医者もみんな困りますよ、先生、何とかしてください。彼ら(官僚)に一言、言ってくださいよ。」「うるさいと遠ざけられるんだ。」「ところで、先生、今の医学生に何か言いたいことありますか?東大の講義で伝えますよ」「そうだな、「使命感を持ち、大望を抱け」 ということかな。」「わかりました。」・・・・(使命感を持って、医療を続ける人が、いじめられる姿を、目の当たりにしていては、いくら使命感を持てといっても、空々しい思いに駆られるのは学生ばかりではあるまい。)

 

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