「人生いろいろ」「無錫(むしゃく)旅情」「珍島(ちんど)物語」などのヒット曲で知られる作詞、作曲家の中山大三郎さん(なかやま・だいざぶろう、本名同じ)が7日午前0時3分、下咽頭(いんとう)がんのため、都内の病院でお亡くなりになりました。64歳。99年(58歳)でがん告知を受け、00年(59歳)に声帯を除去。声が出なくなっても、最後まで創作活動への意欲を見せていたそうです。日本人男性の平均死亡年齢78歳からみると、早死です。残念なことと、ご冥福をお祈り申し上げます。


 下咽頭癌はどうすれば、予防できるのでしょうか?


 咽頭癌や食道癌(扁平上皮癌)は、アルコール(特にアルコール度の高いもの)、喫煙、熱い飲食物、特定の体質(アルコール脱水素酵素活性とアルデヒド脱水素酵素活性の微妙なバランス)が危険因子とされています。まず、これらのリスク因子を避けることが重要です。


しかし、これらが避けられない人、もう既にどっぷりと使っている人はどうすればいいのでしょうか?答えは、拡大色素内視鏡検査を受けることです。食道にヨー素を散布して、まだらな淡い染色域が多発してくると、咽頭癌や食道癌の発生が近いとわかるのです。


 下咽頭癌は、従来、耳鼻科の領域と考えられていましたが、最近は、消化器内視鏡による診断ができるようになってきました。内視鏡の先端にキャップをつけることにより、下咽頭の視野が得られやすくなったことと、咽頭癌の早期診断が拡大内視鏡観察で比較的簡単にできるようになったことが、その原因です。7ミクロンぐらいまでの解像力をもつ拡大内視鏡で扁平上皮癌(ep癌・m癌)を見ると、毛細血管が打ち上げ花火のような感じになっているのです。正常では、毛細血管は規則正しいループを描くのですが、癌組織の中では、その先端に血液が鬱血して、毛細血管が膨らみ、上から見ると、花火のように見えてくるのです。図1図2図3参照。早期に見つかったものは、内視鏡手術だけで治せることもあります。


 中山大三郎さんも、54歳ごろから、拡大色素内視鏡検査をしかるべき先生のところで、きちんと受けていれば、2005年4月7日の死去はなかったことでしょう。重ね重ね、ご冥福をお祈り申し上げます。すばらしい歌の数々ありがとうございました。