開業医の収入は、勤務医の1.8倍という発表があった。日本経済新聞では、それゆえ、開業医の診療報酬をもっと減らすことができると書いていて、来年の4月の診療報酬改定では、開業医の診療報酬を減らすべきだと書いている。

 

 何も知らない若者がこの記事を読むと、そうだなと納得してしまうかもしれない。

しかし、私から見ると、3つのトリックが隠れている。

 

 1つは、開業医の年齢と、勤務医の年齢を考慮していないこと。開業医は経験豊かな高齢者が多く、勤務医には卒業したばかりの先生が多い。年齢別に比べる必要があろう。

 2つは、開業医の経費と、勤務医の経費は異なる。開業医は薬も買わなくてはいけないし、テナント料も経費として払わなくてはいけない。年収を比べるのではなく、課税所得を比べるべきだ。

 3つは、実は、診療報酬は、ここ数年、診療所に比べて、病院をより厳しくして、診療費を切り詰めてきた経緯がある。何のことはない、時期をずらして、病院も診療所も全部切り詰めているのである。

 現在の医療費は年間約29兆円である。日本政府は「2025年には医療費をさらに8兆円切り詰めて、医療費を年間21兆円にする。」という目標を達成するために、3つのトリックを利用して、詭弁を弄しているのだ。C型肝炎訴訟・薬害エイズの問題でもそうだが、真実を真摯に語らず、ごまかして逃れようとする、日本政府の体質がありありと浮き出ている。

 

 厚生労働省の発表は、どこか、大本営発表に似ていると感じるのは、私ひとりだけであろうか?このままでは、医療界は、今後も、打撃を受け続け、最後には焼け野原になり、とどめに原爆を落とされて、消滅してしまうのであろう。

 

 ちなみに、キャリアの厚生省官僚と開業医と病院勤務医の世代別平均課税所得を公表したら、皆様が予想もしない金額が公表されるだろう。キャリア官僚の年収・課税所得額はかなり高いのである。