たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

予防

テレ朝のワイドスクランブルに出演。市村正親さんの胃がんからの復帰会見をうけて、胃がんの予防策について語る。

 今年の日本では、年間13万ないし14万人くらいが胃がんに罹患して、約5万ないし5万5千人が胃がんでお亡くなりになっている。昨日6月3日、有名な俳優、市村正親さん65(篠原涼子さん41のご主人)が胃がん手術からの復帰会見にあたり、胃がんの予防について、話をしてほしいということで、テレ朝のワイドスクランブル(生番組)で胃がん予防の説明をしてきた。キャスタは橋本大二郎さんと局アナの大下さん、秦さん、川村さん。
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 ポイントは、胃がんの原因はピロリ菌であり、ピロリ菌に感染している人は、人生で約12%の確率で胃がんが発生、ピロリ菌に感染していない、もしくは感染したこともない人は、胃がんがほとんど発生しない(0.5%未満)。したがって、ピロリ菌に感染しないことが胃がん予防の決め手。日本人のピロリ菌罹患率は、大まかに言って、(年齢-10)%。
 また、ピロリ菌に感染している人も、ピロリ菌を退治すると、退治して3年後から、胃がんの発生率が、5分の1にへります。ちなみに、お酒を飲んでいるきは3分の1、飲まない時は、10分の1くらいです。ピロリ菌を退治することが、一昨年から健康保険で認められました。
 ピロリ菌は、便の中に出てくると、コッコイド型という形に変形して、半永久的にじっとしています。つまり、種のような状態です。これが胃の中に入ると、再び、ヘリコプターのような形の栄養型に変わって、増殖します。ですから、間違えて、土を口に入れないようにすることが、感染予防のポイントです。
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 感染しているかどうかは、呼気や便、血液検査など胃いろんな方法でわかりますが、内視鏡検査をしてピロリ菌が引き起こす慢性胃炎の程度も判定すれば、保険でピロリ菌退治ができる制度となっています。
 ピロリ菌がご心配な方は、最寄りの内視鏡の上手な消化器内科にご相談ください。もちろん、当院でも対応できます。ご予約は03-3714-0422まで。
 

女優 坂口良子さん(57歳)大腸癌で逝く

 女優、坂口良子さんが27日午前3時40分に横行結腸がん(大腸がん)による肺炎のため、死去した。57歳だった。美人で明るい女優さんであったが、大腸癌で死ぬとは、何ともかわいそうである。症状のないうちに、内視鏡検査さえ受けていれば、こんなことにはならなかった。大腸がんの予防には、大腸内視鏡によるポリープ切除が効果抜群である。国をあげての検診体制の拡充が求められている。


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(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

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謹賀新年! 去年は、震災・原発事故など大変な一年であったが、今年はどんな年になるのやら。

 西暦2011年、平成23年が終わり、西暦2012年、平成24年を迎えた。2011年は3月の大震災・福島原発事故と戦後最大の天災が起こり、欧州の共同体に発する経済危機 が世界に及んだ、大変な一年であった。個人的にも事故・病気・税務署の横暴・経済不況などなど、月替わりで災厄がめぐってきた。一休和尚の歌うように、「正月は、冥土の旅の、一里塚、めでたくもあり、めでたくもなし」といった心境であるが、いつまでも悪いことは続かないはずであろうから、日々努力を怠らず、健康に注意して過ごし、今年は少しでも良い年にしていきたい。


 私は癌撲滅の理念の下、長年、努力を続けてきた。実際、中目黒消化器クリニックに通院して内視鏡検査をきちんとうけている人たちは、食道癌・胃癌・大腸癌の予防に、完全に成功している。しかし、日本全国で見ると、癌はますます増加して、ここ2-3年は、毎年約55-58万人が癌に罹患し、約33-35万人が癌で死んでいる。癌の一次予防が社会的に、ますます、重要になってきた。癌の発生を減らす方策を実行しなければならない時代が到来している。まずは、今年は、ピロリ菌退治、たばこ禁止、飲酒の抑制、大腸ポリープ切除の徹底、大気汚染抑制、がん関連ウィルスのワクチン投与、放射線被ばくの軽減などの癌発生予防の施策を実行すべき年だ。


 癌の発生が抑制されれば、癌による人々の苦しみが減るのは勿論のこと、癌にかかる医療費も抑制されて、政府の経済的負担も総合的に軽くなるであろう。日本経済にもよい。


2011年11月、富士山と玉を抱えた雲竜。


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桑田佳祐さんの食道がんはなぜ早期発見できなかったのか?

 微小な食道がんを見つけるには、色素内視鏡もしくは、特殊光拡大内視鏡による丁寧な検査が必須!! 
 

毛細血管が斑点状になって見える部分が早期食道がん。FICEによって血管が強調されてみえる。

 

 今月2日に初期の食道がんの手術を受けたサザンオールスターズの桑田佳祐(54)が、14日夜放送のTOKYO FM「桑田佳祐のやさしい夜遊び」にメールを寄せ、近況を報告した。先週7日の放送でICU(集中治療室)に入っていることを明かしていたが、驚異の回復力で「本来なら1週間ぐらいいるのですが、(手術から)3日後には普通の病室に戻されました」と告白。「毎日1歩ずつ。点滴の管が取れ、おならやウンチが出て、数値もよくなっていっています」と順調に回復している様子を明かした。(夕刊フジから引用)

 

 先日、マスコミのテレビ業界の人が来て、「桑田佳祐さんは半年に一回、検診を受けていたというのに、どうして、手術するような食道がんがでたのですか?あんな有名な人が半年に一回検診を受けていたのにどうしてって、業界ではみんな疑問に思っています。」 と尋ねてきた。

 

 「初期の食道がん」と「早期の食道がん」は素人的には同じような語感がありますが、専門的にはかなり違うものです。早期の食道がんとは、癌の浸潤範囲が粘膜内に限られているもののことです。この範囲のうちに発見した場合、99%以上助かります。一方、初期の食道がんとは、専門的にはきちんとした定義はなく、病気の初期といった程度のあいまいな意味です。助かるかどうかですが、必ず、助かるとの保証はありません。

 

 早期の食道がんであれば、内視鏡で切除することとで98%以上治りますので、今回、桑田佳祐さんが、開腹開胸の手術を受けて大変に頑張っていらっしゃるということは、桑田佳祐さんの食道がんは、残念ながら、進行がんであったということです。

 

 これがわかっているから、業界の人が桑田佳祐さんの食道がんを疑問に思っているのである。

 

 癌が発生してから、半年で進行がんになるのは稀である。それでは、進行がんなるまで病変はどうして見落とされていたのか?答えは、検診の方法にある。

 

1) バリウム検診。レントゲンでバリウムを飲む方法では、早期がんは発見できないのが常識。レントゲンは凹凸を判断する検査であるため、凹凸のある病変がみつかる。一般に食道がんは早期のうちは、ぺラッとして平らであり、粘膜下に浸潤して進行がんになってはじめて、凹凸が出てくる。したがって、バリウム造影によるレントゲン検診では、食道がんは進行してからでないと、見つからない。

 

 私が授業時間の半分を割いて東大の講義で教えているのはこの常識。学生諸君が医師になって間違った説明をして多大な賠償金を払わなくてもすむように、また、患者さんがその意思に反して、早期発見されず、癌で死んでしまわないようにするためだ。

 

2) 内視鏡検診。一般の内視鏡検診の早期食道がんの発見能は、バリウム造影によるレントゲン検診よりは優れている。ぺラッとして色調が違うところ(食道がんには、赤いものや白いものもある)を見つけるのがコツだが、ときに食道がんは周囲と同じ色をしてることもあり、色の変化だけではかなり見つけづらい。桑田佳祐さんの食道がんは扁平上皮癌であったそうだが、このタイプの組織型の癌の場合、ヨードを含む色素散布が発見にきわめて効果的である。扁平上皮癌の部分はヨードに染まらず、正常部分は ヨードに染まるのである。

 

 この染色法、少々、面倒なため、全症例に実施しているのは、私一人くらい しか、この日本にはいないらしいが・・・・。(学会のワークショップで判明)

 

3) 最新・最高の食道がん検診(色素特殊光拡大内視鏡検診)。 それでは、現段階の最高の方法は、なにかというと、色素と特殊光 (NBI,FICE)を利用した毛細血管観察である。つまり、特殊光拡大内視鏡検査である。食道がんの毛細血管は、正常とははっきりと異なる構造を持っているので、毛細血管を丹念にみていけば、1mmの食道がんも 正確に見つかる時代になっているのである。 上の図参照。

 

 桑田佳祐さんは、おそらく、レントゲン検診か、精度の低い内視鏡検診しか受けていなかったために、半年に一度の検診でも、手術しなければならないほど浸潤するまで、 食道がんが見つからなかったのだろう。

 

 ちなみに、当院では 少し時間はかかりますが、色素と特殊光を利用した毛細血管観察を、全例に行ってい ます。

 

 

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大腸癌新患 1日4人 

 5月は学会が続く。学会の間は大変忙しいものだが、今日は予想通りの忙しさであった。しかし、驚いたのは、何と、大腸癌の新患が4人もいたことだ。うち3人は進行がんの可能性が高い。一日でこんなに癌患者が来たのは、ここ数年 来初めてのこと。4人中3人は、大腸を予め内視鏡などでチェックしていなかった。一人の患者さんは「健康を過信していた」と言った。

 やはり、以前から何度も言っているように、大腸癌の予防のためには、何の症状もないうちに内視鏡検診を受けるべきである。インフルエンザや乳がんも怖いが、今や日本女性の死因のトップは大腸癌。 日本全土で一日約120人の方が、大腸癌で死亡している。

 

 マスコミや政府に対して一言注告。「新型インフルエンザをこれだけ騒ぐなら、大腸癌についてももっと騒ぐべき。大腸癌は完全に予防できる病気なのだから。」

 

 ちなみに日本全土で、肺がんは一日約200人、胃がんは一日約160人、肝臓癌は一日約120人の方が死んでいる。肺がん、胃がん、肝臓癌については大腸がんほど完全ではないが、現状を改善できる、それなりの新たな予防策はある。それぞれの学会は、予防策をずっと提示し続けてきている。しかし、その予防策を、日本政府はことごとく採用していない。まったく、情けないことだ。


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今年の感想 

 個人的には、いろいろと大変で残念な事が続いたが、家族全員が大きな病気にかかることもなく生き延びたのは何よりで、天に感謝している。


 クリニックには、毎年のこととはいえ、手遅れ気味の大腸がん患者が数名見つかり、大腸がん予防の啓蒙活動の社会的不足に嘆く。また、慢性胃炎のピロリ菌退治や、抗がん剤、各種治療や診断の制限などなど、社会保険診療枠の後退が悪影響をもたらした数々の患者を目の当たりにして、医師として、人間として、憤りと諦めを感じる日々であった。

 

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安いコストで高い効果! 1)がん予防策の充実を <医療制度改善策 2>   

 医療は、そもそも、病気の治療を目的としている。病気を治すという観点からは、治すのに有効な方法を選ばなければならない。誤診率の低い診断法を選び、誤診を避け、治療においては有効な治療を選択する必要がある。診断間違いと無効治療が最も無駄な出費であり、患者の病気も治らない。


 しかし、現行の医療制度は、目先の費用が安いとか圧力団体がいるという理由で、誤診率が高い診断法を奨励したり、効果の低い治療法を優先させたり、また、効果のある治療法を否定していたりと、問題点が多い。この問題点、専門外の人にはなかなかわからないので、一層、厄介なのである。


 病気には「治せるタイミングと方法」がある。たとえば、癌である。小さな芽のうちに治すのは、内視鏡で外科的に切除すればいいので、いとも簡単に治る。それが、大きくなり全身に散らばると、治すのに極めて苦労する。ところが、昨年、患者主導で制定された、癌対策基本法は、癌対策における予防の重要性を無視してしまった。転移した進行癌がなかなか完治しない現状を考えると、がん予防が極めて重要なのは明らかだ。


 しかし、がん予防に対する現在の政府の取り組みは、私の目から見ると、ピロリ菌、HCV、HBV、パピローマウィルス、大腸ポリープの取扱い方、喫煙の問題、HIVなどなど、理にかなっていない。現在、日本では、年間50万人ががんに罹患し、33万人が死んでいる。理にかなった方法を推し進めれば、癌は、少なくともその3分の2が予防できるはずだ。

 

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ニュートリノ質量発見…戸塚洋二教授死去、66歳 死因は大腸癌 8年間の闘病 

 

 小柴先生が、ノーベル賞受賞後、どの学会だったか、正確に覚えていないが、医学系の学会で講演をなさった。ニュートリノは、医療の世界とは遠い存在であるが、お話を興味深く拝聴させていただいた。自然を解明する、真理を探究するという点で、共鳴するものがあった。


 大腸癌は、de-novo発癌にしろ、adenoma-carcinoma sequence発癌にしろ、最初は、粘膜から発生して、小さい。癌が粘膜内に留まっているうちは、内視鏡で切除すれば、ほぼ100%治癒する。大きくなって、転移すれば、治療手段は進歩してはいるものの、治らないことが多い。症状のないうちに、大腸内視鏡を行い、ポリープを丁寧に切除することが、大腸癌予防のグローバルゴールデンスタンダードである。進行がん治療の、効果と費用、健康被害を目の当たりにすれば、大腸内視鏡によるスクリーニングとポリープ切除が、いかに福音か、納得しない人はいないだろう。


 報道を見ると、戸塚洋二先生の場合は、8年の闘病ということであるから、58歳で病気がわかったということだ。その2-3年前、55歳のころ、無症状のうちに、しかるべきところで大腸内視鏡検査を受けて、病変のつぼみであるポリープを切除さえしていれば、こんな痛ましいことにならずに済んだ。


 大腸癌をはじめ、胃癌や食道癌、十二指腸癌といった、消化管の癌は、しかるべきレベルの先生のところで、定期的に内視鏡検査を受ければ、癌死を予防できる。そこまで、消化管の内視鏡診断・治療レベルは進歩しているというのに、返す返すも残念で痛ましい。


 手前味噌で、申し訳ないが、消化管癌(大腸癌・胃癌・食道癌・十二指腸癌)の予防のために、当院の(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドックをお勧めします。

 

7月10日12時35分配信 毎日新聞
 素粒子ニュートリノに質量があることを発見し、ノーベル物理学賞の有力候補とされた東京大特別栄誉教授の戸塚洋二(とつか・ようじ)さんが10日午前2時50分、がんのため死去した。66歳。葬儀は12日午後0時半、東京都港区南青山の青山葬儀所。喪主は妻裕子(ひろこ)さん。04年に文化勲章受章、07年にノーベル賞の登竜門とされる米フランクリンメダルを受賞した。02年にノーベル物理学賞を受けた小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(81)の愛弟子で、日本人初の師弟そろっての栄冠が期待されていた。戸塚洋二さんは、静岡県富士市生まれ。72年、東大大学院博士課程を修了した。
 90年代半ばから、東大宇宙線研究所の観測施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)の責任者として、国内外の100人以上の研究者を率い、ニュートリノの精密観測を実施。98年、それまで質量なしと考えられていたニュートリノに「質量がある」と確認し、物理学の常識を覆す大発見として世界中の注目を集めた。
 7年前に大腸がんの手術を受けたが、その後、再発と転移を繰り返した。治療に専念するため、研究の第一線を退き、抗がん剤による本格的な化学療法を開始したが、最後までニュートリノ研究への情熱は衰えず、後進の育成に取り組んだ。
 恩師の小柴さんは、愛弟子の訃報(ふほう)に「息子を亡くした父親のようなものだ。どういうお気持ちですか、どう感じてますかなんて、聞かないでほしい」と言葉少なだった。

 

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第3回 日本消化管学会総会学術集会 報告

 2007年2月1日・2日の二日にわたって、東京港区芝の東京プリンスホテルパークタワーで、杉原健一東京医科歯科大学大学院腫瘍外科教授に会長により、第3回日本消化管学会総会学術集会が開かれた。消化管全般のトピックがコンパクトにまとめられて、結構効率よく情報が得られた、よい会であった。


  まず、中国のエイズの感染の広がりや、タイでのStrongyloidiasis(糞線虫症)の実態などについて、現地の先生の話を聞くことができた。  


 上海のSu Zhang先生によると、中国ではエイズの感染者は確定で183773人、推定でなんと86万人もいるという。エイズ予防の中国の国家予算も鰻上りだそうだ。

(何も対策を採らなければ、中国では2010年までに、エイズ感染者が1000万人以上になる?By Dr Su Zhang)

 

 糞線虫症は日本ではほとんど見かけない病気だが、タイでは多く、皮膚から侵入し十二指腸などの消化管に潜む病気である。急性症では皮膚の下を這い回り、肺を侵し、診断が遅れると死ぬことまである。全身を寄生虫が食い荒らした、日本では見たこともないような悲惨なスライドを、バンコクのSombat Treeprasertsuk助教授が見せてくれた。


 また、独協医科大学(藤盛孝博教授ら)から、癌の発生について従来の常識を覆すような面白い症例が発表されていた。白血病で骨髄移植し、お姉さんから骨髄をもらった男性患者に発生した口腔内の扁平上皮癌の性染色体を分析したところ、XXの女性型であったという報告である。つまり、癌は骨髄にある癌幹細胞cancer stem cellからやってくるのではないかという報告である。胃癌でもそのような学説が唱えられており、異性間での骨髄移植後に発生した癌の性染色体解析の症例蓄積が期待されるところだ。癌にも性別があったのである。大腸癌や大腸腫瘍はどうなのか? 今後の発表が期待される。


 潰瘍性大腸炎の難治化とサイトメガロウィルスの関係についても、京大や東大などからいくつかの発表があり、大変興味深いものがあった。京大のNakase Hiroshi先生の発表では、炎症のあるところにだけ、サイトメガロウィルスが必ず見つかるのだそうだ。研究が進めば、潰瘍性大腸炎も胃炎のように、感染症だったというような時代が来るのだろうか?

(PCR法によるCMVサイトメガロウィルスの検出率 炎症部17/17:100%、非炎症部0/13:0% by Dr. Nakase Hiroshi)

 

 私が関連した発表は、同僚の東京大学腫瘍外科講師、北山丈二先生のアディポネクチンadiponectinの胃癌抑制効果に関する発表であった。男性において、脂肪が高い人には、大腸腺腫や大腸癌などの大腸腫瘍が多く発生するという、私の大腸腫瘍のデータ解析結果(詳細)を受けて、それはなぜかと考えていくうちに、アディポネネクチンadiponectinの抗腫瘍効果を発見したようだ。アディポネクチンadiponectinは動脈硬化を抑える働きがあると知られている生体内物質で、もともと比較的多くある物質である。したがって、アディポネクチンadiponectinの補充による癌抑制の臨床実験も、理論的に安全にできる可能性が高い。アディポネクチンadiponectinの補充による癌抑制効果は、ねずみと同じく人でも癌抑制効果が臨床的に認められるのか、また、その効果の強さはどれくらいか、今後の展開が期待されるところだ。


 1日目の夜には学会主催の懇親会を行われて、高名な先生方 (北海道大学消化器内科教授 浅香正博先生、杏林大学医学部第3内科教授 高橋伸一先生、獨協大学総長 寺野彰先生、通産産業省診療所所長、星原芳雄先生、名古屋経済大学人間生活科学部管理栄養学科 教授 伊藤誠先生 助教授 早川麻理子先生、日本消化器病学会理事長を長年お勤めになった、元女子医大教授 竹本忠良大先輩など)ともワイン片手にフランクに話ができた。ピロリ菌退治による胃癌予防の厚生労働省による見送りの経緯や、偏在し甘やかされる研修医問題、病院から熟練医が逃げ出す医療崩壊、低い医療費、サプリメントなど怪しい情報をたれ流すテレビ広告などなど、日本全国の医療事情の悪化が話題の中心であった。

世界の大腸癌検診の動向  今秋の日本及び欧州消化器病週間 から 

 大腸癌は予防が大切である。大腸進行癌は、FOLFOX、FOLFILIやアバスチンなどの化学療法、ネオアジュバンド療法が進歩して生存期間の延長が認められるとはいえ、死亡率は改善されていない。


 欧州消化器病週間で、ドイツ消化器病学会の大御所クラッセンが、指定講演で、大腸癌検診について述べた。がん検診が未発達の旧東欧諸国の大腸癌5年生存率は、約30%、がん検診がある西欧諸国では大腸癌5年生存率は約50%と述べた。検診をすることで、大腸癌死から助かるチャンスが増大するのである。


 札幌で開かれた日本消化器週間で、アメリカの大腸癌検診協会長の招待講演があった。アメリカでは、便潜血反応よりも、S状結腸鏡や大腸内視鏡検査を用いることが多く、とくに、ここ2-3年、大腸内視鏡を受ける人が増え、検診対象年齢の人口の30%が受けるまでになっていると発表した。耳を疑うほどの高率であるが、これにより、大腸癌の死亡率が急激に減ってきているという。レーガン大統領がポリープを取ったときから、大腸内視鏡が広まり、大腸癌は内視鏡検査で完全に予防できるので、「自己責任の病気」と呼ばれて、大腸内視鏡がさらに広まっているという現状なのだそうだ。ちなみに、アメリカでは発見したポリープ(腺腫)はどんなに小さくても、すべて切除するのが原則であるとのこと。


 日本では、便潜血反応陽性者が内視鏡検診に廻される。日本で便潜血反応による大腸癌検診が始まったのが1988年。中曽根内閣の老人健康保険法に基づく。そのころは、腺腫は前癌病変なのですべて切除すべきというのが常識であった。それまで、5年で2倍に増えていた大腸癌死亡者数が、この検診の開始を境にして、増加しなくなりむしろ減少し始めた。日本全体で年間大腸癌死亡者数は4万人から3万5千人ぐらいに低下してきていた。当時、私は先輩の先生勧めで、東急百貨店でCLEAN COLONを目指す内視鏡による大腸癌検診を行い、東急百貨店保険組合の被保険者を大腸癌から10年にわたり完全予防してきた実績を残している。


 それが、90年代後半、工藤先生が「隆起型のピットパターン3L型の5mm以下の腺腫はすぐに取らなくても良い。」と学会で述べた後、医療費抑制の波とあいまって、学説が一人歩きして「5mm以下のポリープは取らなくてもいい」という考えが広まって、かなりの先生方が、小さなポリープを無視しはじめた。それで、どうなったかというと、近年、日本の大腸癌死亡者数は再び増加傾向に転じているのである。日本とアメリカの大腸癌死亡者数の動向を見ていると、日本も、大腸癌検診の中心を、便潜血反応から大腸内視鏡検査にシフトさせる必要があろう。


 また、腺腫はやはり全部取るべきであろう。 私は当初から工藤先生の考えには反対であり、すべての腺腫はどんなに小さくても見つけたら切除してきたし、切除するべきと唱えてきた。つまり、CLEAN COLONを目指した内視鏡を実践してきた。私の小さなポリープまで取るやり方は、各保険組合から不況時にいろいろと批判された。しかし、今回のアメリカと日本の大腸癌死亡者数の動向をみて、大腸内視鏡はCLEAN COLON を目指すのが、やはり、大腸癌予防の王道であったと確信した次第である。

内視鏡検診、大腸ポリープ切除の大腸癌予防の威力 

 進行大腸癌になった人は、ほとんど内視鏡による大腸検診を受けていない。先月の2例もそうだった。そして、おぞましい病名を告げられると、決まってこう言う。「どうして私が進行大腸癌なの?なにか悪いことした?」 「いえいえ、悪いことをしたわけではありません。「いいこと」をしなかったのです。「いいこと」とは無症状のうちの内視鏡検診です。」 


 ある保険組合から、53歳以上の社員全員の内視鏡検診と完全ポリープ切除を依頼されたことがある。1980年代後半、その会社の人徳の取締役が大腸癌で死に、社員一同大いにあわてた。大腸癌を完全にブロックしたいと思った役員たちは、社員全員の大腸ポリープの切除を、私に依頼してきた。私は合計630名あまりを約3年にわたり、社員全員の内視鏡を行い、すべてのポリープ(陥凹型腫瘍を含む)を完璧に切除した。病理検査の結果、腺腫以上の腫瘍性病変が432名に見つかり、癌は46名に見つかった。進行癌は2例であった。その後、腫瘍の個数や異型度に応じて、定期的な内視鏡検査とポリープ切除を丁寧に繰り返した。癌があったりや腫瘍の多かった人は年に1-2回、腫瘍の少ない人は1.5年に1回ぐらい、腫瘍のない人は3年に一回の 間隔で繰り返しおこなった。それを、約十年間続けた。その結果、その保険組合では、それまで平均して毎年2例ずつ大腸癌で死亡していたが、この検診を始めてからは、大腸癌で死ぬ人は0となった。当初の目的が達成できたのである。この功績で、保険組合の理事長は、大腸癌を克服した組合の指導者として、朝日新聞に取り上げられた。理事長 は自分の写真の大きく載った朝日新聞を私に見せながら、「先生ありがとうございました。」と大変な喜びようであった。


 内視鏡検診と大腸ポリープ切除は、大腸癌予防に大変な威力がある。大腸癌になりたくない人は、実績がある当院の内視鏡による大腸検診・大腸ポリープ切除を、癌による症状が出る前にお受けください。大腸癌を克服したい保険組合の方も、どうぞご相談ください。

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