レセプト電算義務化を控えて、傷病名マスターファイルが2006年に社会保険庁のホームページから配布されている。約2万1千個強にも及ぶ傷病名がコード化されている。それだけあれば、すべての病名が網羅されているように思うが、そうではなかった。


 なぜか、糖尿については、えらい細かい。なんと194個にも細分化されて、コード化されている。これを決めた人はきっと糖尿病の専門家に違いない。


 ところが、私の専門である消化器病名は、いたって手薄である。まず、「多発性大腸ポリープ」という傷病名がない。大腸ポリープと大腸ポリポージスはある。大腸ポリープといえば、学問的には、普通、ポリープが一個だけあったことを意味する。大腸ポリポージスといえば、学問的には100個以上のポリープがあることと定義されている。大腸ポリープが2個から99個までの状態については、「多発性大腸ポリープ」と呼ぶのであるが、その傷病名コードがない。ほんとうにびっくりした。


 また、A型胃炎という傷病名もない。A型胃炎とは、胃の細胞に対する自己抗体ができて、胃に炎症が起こる自己免疫性胃炎のことであるが、これがない。また、それに相当する自己免疫性胃炎という傷病名コードもない。ちなみに、B型胃炎とは、自己抗体のない胃炎を指し、現実には、ピロリ菌による胃炎のことだ。さすがに、「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」というコードはあった。ただ、学問的には「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」という用語よりも、「ヘリコバクター・ピロリ起因性胃炎;Helicobactor pylori induced gastritis」という用語が一般的だ。「ピロリ胃炎」、わからなくはないが、しろうとっぽい。


 そういえば、厚生労働省に多くの技官を送り込んでいる某K大学医学部を受診したことがある患者さんが変なことをいっていた。「先生は私のこと「A型胃炎」っていっていたけど、某K大でそのことを話したら、そんな病気なんて聴いたことないと言われました。いったいどういうことなんですか?!・・・・・・」


 ・・・・・・・「いったいどういうことなんですか?!」とは私のせりふだ。ルールを作成するお役人には、しっかりとした医学的知識がある人になってもらいたいものだ。

 

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