たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

ピロリ菌

内視鏡による胃癌検診の実態にびっくり、ちょっと嘆かわしい発言

   シカゴで行われたDDWに引き続いて
先々週後半、内視鏡学会が大阪で行われました。続けて8日間も学会に参加したので さすがに、結構疲れました。

    
 
    富士フィルム後援のサテライトシンポジウム「胃癌内視鏡検診時代における経鼻内視鏡の位置づけのセッション」で気になる演者の発言がありました。疲れていますが聞き過ごせませんでした。

     「内視鏡検診では撮影枚数が60枚まで、そして生検するのは対象者の7%まで」と言う決まりを作っていて、それを実施している医療機関に課しているらしい。「決まりを破れば、検診代を払わない」そうだ。ピロリ菌はチェックしないらしい。そして、検査時間は経ったの5分だそうだ。
    演者はしきりにコストと画一化に言及した。そして、生検は、内視鏡診断の放棄だとまで言い切った 。だから7%以上の患者さんに生検をするのを、許さんということらしい。
    しかし、経験から言って、この内容と心構えでは小さな癌を見落とすだろう。検診を行なっている先生の技量向上も難しいだろう。見落としで訴えられる危険性も高い。
    時間とコストが足らないなら ピロリ菌の感染の既往がなくて、かつ、慢性胃炎のない ベリーローリスクの方々の内視鏡胃癌検診をやめればいいのではないか?。残ったハイリスク群でしっかりと時間と手間をかけて見落としがないようにすべきだ。
   ピロリ菌と慢性胃炎の進行程度をチェックせずに 全例を内視鏡検診の対象者にしているのは効率が悪い。
    内視鏡検診の実態がコストの関係でお粗末にならざるを得ないのであれば 全例内視鏡胃癌検診ではなく、ABC検診の方がいいでしょう。

   



第3回がん撲滅の会でがん半減の方策を語る

第3回がん撲滅の会が、2月26日 ホテルニューオータニ 鶴の間で開催されました。
412名の方にご参集いただきまして、誠にありがとうございました。
ビデオができましたので、是非ご覧ください。
1)ダイジェスト版 約3分


1)唐澤克之先生 最新の放射線治療 約30分

2)田淵正文 がん半減をめざして 約90分
知って得する「がん予防知識」が素人の方にもわかりやすく
解説されたと大変好評でした。
お時間のあるときにじっくりとごらんください。



 

胃癌のリスクを劇的に減らす方法

胃癌のリスクを劇的に減らす方法

<副題 バリウム検診に代わる胃癌撲滅の最新理論と技術>


田淵正文


 近年の日本では、胃がんの発生数は減少してきたとは言え、以前、多くのお方が胃癌でお亡くなりになっている。先日もNさんという53才の女性が胃の痛みで、来院された。上部内視鏡とエコー検査で転移をともなう進行胃癌と判明。手を尽くす暇も体力もなく、わずか3カ月であっという間にお亡くなりになった。内視鏡で見ると、Nさんの胃にはピロリ菌がうようよしていた。ピロリ菌が胃がんの原因と分かった今でも、ピロリ菌退治の体制確立が遅れている。そのため、このような悲劇が毎日約150人、日本の各所で起こっていると思うと、おもわず、涙が出てくる。

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 胃癌のリスクを劇的に減らす方法が開発されている。それは、ピロリ菌退治だ。ピロリ菌退治をすると、退治して3年以上たつと、胃癌の発生率が約8割も減少するという臨床実験結果が、10数年前から全国の多数の研究施設から報告されているのだ。一方、ピロリ菌に一度も感染したことがない人には胃癌が発生しないという衝撃的な研究結果も複数の施設から報告されている。日本全国で毎年約5万人~5万5千人の死亡者がでる胃癌、その罹患者数を激減させる道筋が明らかになってきた。


 さて、ピロリ菌とは何か?どういう生態なのか?


ピロリ菌は胃の中で繁殖する細菌である。胃の中というと、胃酸がある。胃は塩酸を分泌し。その酸の濃度はPH1~2ときわめて強酸である。したがって、胃の中ではどんな細菌も死滅するだろうと考えられてきた。事実、大腸菌、ビフィズス菌など、ほとんどの細菌は、強酸の分泌する胃のなかで生きてはいけない。


ところが、1983年、胃の中で繁殖し、胃炎を引き起こす細菌がオーストラリアで発見された。発見者はマーシャル先生とウォーレン先生(後の2005年この功績でお二人はノーベル賞を受賞)。胃の出口のことを、ラテン語でピロリということから、この細菌は「ピロリ菌」と命名された。調べてみると、このピロリ菌、ウレアーゼという酵素を持っていて自らアンモニアを産生して、胃酸を中和するという特殊能力をもっていた。そのため、強酸の胃の中で生きて繁殖していけるのだ。逆に、酸性の環境以外では、自ら産生するアンモニアのため、繁殖できない。生物にとって、アンモニアは猛毒だからだ。


ピロリ菌の生態や感染経路は、どうなっているのか?胃の中で繁殖したピロリ菌は、消化管の動きに沿って、便の中に出てくる。注意深く観察すると、ピロリ菌は酸のないところでは、栄養型の竹トンボのような形から、球形のコッコイド型に変態する。調べてみると、このコッコイド型のピロリ菌は増殖せず、じっとしていて、半永久的に感染力を持っていた。いわば、ピロリ菌の卵状態であった。


日本では人糞を長年肥料として土にばらまいてきた歴史がある。つまり、日本の土の中には、卵状態のピロリ菌がいる。この卵状態のピロリ菌が何かの拍子に間違えて口から胃に入ると、人はピロリ菌に感染するのだ。ピロリ菌の感染源は土である。


意識的に土を食べる人はいない。だが、土と接するハエやゴキブリのからだの表面には、ピロリ菌が証明されている。だから、ハエやゴキブリが触れた食材を知らず知らずに食べるとピロリ菌に感染する。土のついた野菜などの食材をそのまま口にすると、これまた、ピロリ菌に感染する。土と接する井戸水などもあやしい。ただ、ありがたいことに、このピロリ菌、熱に弱く煮沸すると感染力はなくなる。

ピロリ菌がガンを引き起こすメカニズムの解明も進んでいる。ピロリ菌の持続性の感染により、慢性胃炎がおこり、炎症の持続によって、胃の細胞に遺伝子異常が蓄積されて、ガンが発生しやすくなる。さらに、ピロリ菌には、D因子という膜に孔をあける4量体の蛋白を合成する遺伝子があり、この遺伝子のコピー数が多いピロリ菌ほど、がんを惹起させることも報告されている。

今、このピロリ菌にどのくらいの人が感染しているのか?ピロリ菌の感染率は年代によってちがう。土に接触する機会の多かったお年寄りの方ほど、感染率は高い。おおざっぱにいって、年齢マイナス10%くらいの感染率だ。たとえば、30歳なら20%ぐらい、40歳なら30%ぐらい、50歳なら40%ぐらいだ。

では、ピロリ菌に感染しているのかいないのか、どうやって調べるのか?血液テスト、便テスト、呼気テスト、内視鏡検査などで診断できる。2013年2月からは、内視鏡検査で陽性と認められた場合、社会保険でピロリ菌退治もできるようになったので、治療も考えれば、現時点では、内視鏡検査が妥当かもしれない。

それでは、ピロリ菌、どうやって退治するか? PPIという胃酸を強力に抑制する薬と酸の環境でも活性のある抗生剤2種類を1週間飲むことで、ピロリ菌は約90%除菌できる。それで、退治できない人でも、別の抗生剤の組み合わせで、ほとんどが退治できる。しかし、先に述べたように、ピロリ菌のいる食材を食べていると、すぐに再感染するので、見掛け上なかなか退治できないので、要注意だ。

現段階では、よく勉強して最新知識をもっている、内視鏡検査の上手な消化器内科の先生に相談してみるのが、ピロリ菌退治の最短コースだ。


さて、一方、現行の胃癌検診といえばバリウム検査だ。実は、このバリウム検診、1994年にWHOが全世界に向けて「禁止勧告」を出していて、現況では、胃癌のバリウム検診は、日本以外では1カ国も実施されていない。それは、放射線被曝により受診者の約2%に遅発性のがんが発生するからである。現に、この検査をずっと続けているわが国では、近年、悪性リンパ腫などの血液系のがん発生数は、ウナギ登りで、40年前は年間7500人程度であったものが、今や年間約4万人と激増しているのである。

1994年、WHOは「人口の約8%前後が胃癌に罹患する日本では、かりに2%ぐらいの人が遅発性に発癌したとしても、他に方法がない現状では、日本に限り、バリウム検診は容認される。」としていた。

しかし、「ピロリ菌退治をすると、胃癌の発生率が約8割減少」し、「ピロリ菌に一度も感染したことがない人には胃癌が発生しない」という研究結果が医学界の常識となった現在、WHOの勧告は一層重いものとなっている。もはや、従来のごとく、バリウム検診が続くとは考えられない。現行の胃癌のバリウム検診体制は早晩廃止され、ピロリ菌除菌を中心とした検診予防体制が確立されるであろう。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロリ菌の感染ルートは?

9月3日に市村正親さんの胃がん手術からの復帰会見をうけて、胃がんの予防についてテレビで説明してきましたのは前にも述べたとおりです。その後、見逃してしまったという声が寄せられましたので、先週して非公開の形でyoutubeにアップしました。これまで3000例を越える症例をピロリ菌退治してきましたが、とくに感染ルートについては、なるほどといえる目新しいものです。是非ご覧ください。 http://youtu.be/HCiwBPvDynM 

テレ朝のワイドスクランブルに出演。市村正親さんの胃がんからの復帰会見をうけて、胃がんの予防策について語る。

 今年の日本では、年間13万ないし14万人くらいが胃がんに罹患して、約5万ないし5万5千人が胃がんでお亡くなりになっている。昨日6月3日、有名な俳優、市村正親さん65(篠原涼子さん41のご主人)が胃がん手術からの復帰会見にあたり、胃がんの予防について、話をしてほしいということで、テレ朝のワイドスクランブル(生番組)で胃がん予防の説明をしてきた。キャスタは橋本大二郎さんと局アナの大下さん、秦さん、川村さん。
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 ポイントは、胃がんの原因はピロリ菌であり、ピロリ菌に感染している人は、人生で約12%の確率で胃がんが発生、ピロリ菌に感染していない、もしくは感染したこともない人は、胃がんがほとんど発生しない(0.5%未満)。したがって、ピロリ菌に感染しないことが胃がん予防の決め手。日本人のピロリ菌罹患率は、大まかに言って、(年齢-10)%。
 また、ピロリ菌に感染している人も、ピロリ菌を退治すると、退治して3年後から、胃がんの発生率が、5分の1にへります。ちなみに、お酒を飲んでいるきは3分の1、飲まない時は、10分の1くらいです。ピロリ菌を退治することが、一昨年から健康保険で認められました。
 ピロリ菌は、便の中に出てくると、コッコイド型という形に変形して、半永久的にじっとしています。つまり、種のような状態です。これが胃の中に入ると、再び、ヘリコプターのような形の栄養型に変わって、増殖します。ですから、間違えて、土を口に入れないようにすることが、感染予防のポイントです。
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 感染しているかどうかは、呼気や便、血液検査など胃いろんな方法でわかりますが、内視鏡検査をしてピロリ菌が引き起こす慢性胃炎の程度も判定すれば、保険でピロリ菌退治ができる制度となっています。
 ピロリ菌がご心配な方は、最寄りの内視鏡の上手な消化器内科にご相談ください。もちろん、当院でも対応できます。ご予約は03-3714-0422まで。
 

スキルス胃がんにならないために「ピロリ菌チェック」をしましょう

 

厚生労働省の統計によると、2012年、日本人の平均寿命は女性が86.41歳、男性が79.94歳である。こんな日本において、60才台での死亡は、早死にと言わざるをえない。yjimagesakuma_images   

 最近、音楽プロデューサーの佐久間正英さん(享年61)が今年の1月16日に、俳優の蟹江敬三さん(享年69)が今年の3月30日に、お亡くなりになった。ともにスキルス胃がんであった。お二人とも、すばらしい才能で、スキルス胃がんにならなければ、まだまだ大活躍が続いていたと思われる。誠に惜しい。

さて、胃癌の方でピロリ菌に感染していない人は、ほとんどいない。さらに、スキルス胃癌にかぎると、ピロリ菌に感染していない人は、まったくいない。つまり、ピロリ菌にかかっていなければスキルス胃がんにはならないのである。10年前に、ピロリ菌をあらかじめ退治しておけば、彼らも死ななくて済んだのである。
 ピロリ菌をチェックしていない方は最寄りのよく勉強している消化器の先生に相談してみてください。もちろん私のところ(中目黒消化器クリニック)でもチェックしています。血液検査では約90%の正確さで判定がつきます。呼気でも、検便でもチェックできます。(費用と正確さでは検便がお勧め)

蟹江さんや佐久間さんのように胃癌で死ぬことがないようにするには、個人のレベルでは、ピロリ菌チェックの検診を受けるなりして、自分で自分を守らなければならないが、社会的には、ピロリ菌退治の体制を国をあげて早急に構築する必要がある。


木場のレインボーFMのラジオ番組に出演、トラサイ宣言を行った

 日本では、がんに対して適切な予防対策が取られていません。ここ25年間の医学の進歩が、日本においては、がんの予防・がん撲滅政策に反映されていません。ために、無駄に死んでいる人が年間十数万人もいます。これは、死んでいく人たちや家族の 苦しみや悲しみも勿論ですが、その経済的・社会的被害が日本を弱くしていることも見過ごせません。新たな医学の進歩を日本政府のがん予防・がん撲滅政策に反映させるため、政治の世界に参加して、「日本を取り戻す」決意をしました。科学の正しい知識を広め、議論して、政策に生かし、がん予防・がん撲滅を正しく行い、日本を明るく楽しい凛とした国にしようと思います。




ラジオ番組を撮影した動画は下記をクリックしてご覧いただけます




クリニックの案内・地図
(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集| 20130529日本がん撲滅トラサイ宣言

ピロリ菌退治

ピロリ菌退治が保険収載されました。学会では大きな話題となっています。

児玉清さん(77)、胃癌で死去 

 

長年、テレビの司会などで活躍していた、俳優、児玉清さんが、胃がんのため16日に死去した。2年前から出題を担当してきた加藤明子アナウンサー(35)によると、「11日にお見舞いしたとき、『去年10月に胃カメラをのんでおけばよかったんだよね』とポツリ。ショックが大きくて、あとはちゃんと聞けなかった」とのこと。

 みなさん、胃癌で死なないため、症状がないうちに内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌のチェックも大切です。

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東京大学消化器内科 第一回同窓会でささやかれた、厚生労働省の不作為の過失。その過失で約70万人の日本人が胃癌で死んだ。 

 1983年に「慢性胃炎はピロリ菌が原因の感染症だ」とオーストラリアのヲーレン教授が唱えた。そして、その後の疫学的研究で、胃癌の原因もピロリ菌であることが有力となり、1994年WHOは全世界に向けて「胃癌の一番の原因はピロリ菌である。」と宣言した。

 

 ところが、わが国の政府、当時の厚生省はこれを認めなかった。なぜなら、国立がんセンターに入院していた胃癌患者のピロリ菌の抗体価を測定してみると、約1/3が陰性であったのである。

 

 しかし、しかし、である。その後の研究で、重大な事実が判明する。オーストラリアのピロリ菌と日本のピロリ菌は、同じではなかったのだ。当時の測定方法は、オーストラリアのピロリ菌に対する抗体価に対するものであって、日本のピロリ菌に対する抗体価ではなかったのである。

 

 研究は続き、それでは、ピロリ菌を退治したら、胃癌の発生は減るのかと言うことになった。2000年代の前半、日本各地の大学や病院7-8箇所で、ピロリ菌を退治したグループでは、ピロリ菌を放置したグループに比べて、除菌したグループでは、除菌成功後3年たつと、胃癌の発生率が平均五分の一に下がることが判明したのである。症例対象は日本人で1300例を超える。しかし、厚生労働省はこれを一蹴して、香港のわずか100例前後のNew England Journal Of Medicine 論文を盾に、自らの無謬性を今でも貫いている。

 

 これが昨今、国会で取り上げられたらしい。三木先生の話によると、浅香教授が国会に呼ばれた。議員さんから「胃癌は感染症なのか?」と尋ねられて、北大の浅香教授が「そうです。その通りです。」と答えたそうだ。肝炎ウィルスと同じ、厚生労働省の不作為の過失。その過失で約70万人の日本人が胃癌で死んだという真実が、厚生労働省のお役人様に突きつけられる日がついに来たのだろうか?

 

 ただ、行政の混乱は医療現場にとって決して好ましくない。なんとか速やかに、人の輪も崩れず、胃癌も効果的に予防できる体制に移行できるように、願っているのは、三木先生も私も同じ考えだ。

 

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東京は猛暑。胃癌のレントゲン検診について  

 梅雨が明けてから、はや二週間ほど、東京の猛暑は尋常ではない。コンクリートとアスファルトの照り返しとクーラーの室外機からの熱風が強烈で、中目黒周辺の道の昼過ぎから5時ぐらいまでの温度は40度から45度ぐらいまである。クリニックの前の道路とクリニックのガラス窓に打ち水をすると、サーっと乾いていくが、それでも。すっと温度が下がるのがわかる。また、目黒川沿いの桜並木の下は少し温度が低い。

 

カプセル型小腸内視鏡で確認された空腸部の悪性リンパ腫。

この患者さんは若いころから、毎年バリウム造影によるレントゲン検診を受けていた。

 

 さて、話は飛ぶが、胃癌のレントゲン検診は海外ではどこでも行われていないのを、皆さん、ご存知だろうか?WHOが胃癌のレントゲン検診をしてはいけないと勧告しているのである。胃癌のレントゲン検診でX線を浴びて発生する白血病や悪性リンパ腫などの癌の数と、レントゲン検診を行って、早期発見によって助かる胃癌患者の数を比較すると、世界的には、前者が後者を上回るため、レントゲン検診を禁止しているのである。

 

 では、なぜ日本で胃癌のレントゲン検診が行われているのか?それは日本では、胃癌の患者が多く、レントゲン検診の精度が高く、早期発見で助かる人が多かったからである。(過去形であることに注意)。しかし、最近の日本は事情が少し違う。1983年にピロリ菌が発見されて、1990年に日本の学界では、ピロリ菌が慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因だとわかり、そして、疫学的考察から、胃癌との強い関係が指摘された。1994年には、ピロリ菌は胃癌の一番の原因であるとWHOが世界に向けて通知した。(わが国の厚生省はこの宣言を否定)。1995年ごろから、ピロリ菌退治の方法が確立されて、2001年ころには、ピロリ菌を退治すると、胃癌になる確率が、退治しない場合の約5分の1になることが、全国の大学、大病院の臨床研究で証明されているのだ。(厚生労働省はこの学会からの報告を香港からの論文を根拠に否定)。しかし、唯々諾々とレントゲンによる胃癌検診が日本では続いている。

 

 賢明な読者なら、私が何を言いたいのか、もうお分かりであろう。ピロリ菌にかかっていない人や、慢性胃炎になっていない人からの胃癌発生はきわめて低いのである。そういった胃癌のリスクが低い集団の人たちに対しても、レントゲン検診が、旧態依然と進められているのだ。これはよくない。即刻改善すべきだ。胃癌のリスクの低い集団の人たちに対して、レントゲンによる胃癌検診を行うべきではない。実は、リスクは簡単に評価できる。今は、ピロリの感染や慢性胃炎の存在は血液検査や便検査で簡単にわかるのである。ピロリ菌の抗体価、便中のピロリ菌抗原、血液検査(ペプシノーゲン1とペプシノーゲン2)などを調べればよいのである。

 

 レントゲン検診による早期胃癌の発見率は、昔のファイバースコープの時代ですら、内視鏡検診による早期胃癌の発見率の3分の1しかなかった。内視鏡は無痛で行う無痛内視鏡技術も進歩し、また、拡大内視鏡では病理所見に近い観察能力を持つまでにいたっている。

 

 しかし、日本政府の厚生労働省は、今年も、「胃癌検診の基本はレントゲン検診である」と宣言した。また、慢性胃炎のピロリ菌退治を社会保険診療で 治療できるように、学会は10年来頼んでいるのに、厚生労働省はまだ認めていない。国民の命と健康を守るために、厚生労働省の上級お役人は、目を覚ましてほしい。自分が天下りするかもしれないからといって、利益集団である検診施設組合や健康保険組合などの政治的圧力に屈して、国民の命を犠牲にしていいんですか?

 

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田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集

慢性胃炎と診断を受けた人は、皆、ピロリ菌か?

 ホームページのアクセス調査をしていると、上のような、サーチがあり、このホームページが上位にヒットされていた。この質問に対しての解答は、これまでの内容を読んでもわからないので、この際、きちんと記載しておきたい。


 今の日本において、慢性胃炎の原因の90-95%は、ピロリ菌である。その他は、自己免疫性の胃炎などである。私が学生時代に習った言い方では、ピロリ菌による慢性胃炎をB型胃炎と呼び、抗胃細胞抗体(抗胃壁細胞抗体)による自己免疫疾患としての慢性胃炎をA型胃炎と呼ぶ。


 実地に臨床をしていて、胃の炎症が長く続く状態としては、その他に、

1)(非ステロイド系坑炎症剤(NSAIDS))投与で粘膜再生抑制による薬剤性胃炎や、

2)コーヒー・アルコールなどによる胃粘膜を直接傷害する飲食物・薬による胃炎や、

3)クローン病による胃炎、

4)食物アレルギーによる胃炎、

5)過度のストレスによる胃粘膜血流現象に基づく、胃粘膜防御機構の破綻に基づく胃炎(狭義のストレス性胃炎)

などなどをよく経験する。


 胃のウィルス感染については、EBvirus感染が胃癌と関連しているという報告もあるが、詳細は研究待ちの状況である。

G-file 3 目黒区胃癌検診 集団的誤診

 いまの目黒区の庁舎は、土地投機バブルで失敗してつぶれた「千代田生命」のビルである。いまから、約10年前、目黒区の区庁舎が中央町にあり、まだ、中目黒に移ってくる前の話である。当時の区長は、汚職を摘発されて自殺した薬師寺さんであった。

 

 そのころの目黒区医師会は、2派閥が対立しており、ハードな医師会長選が行われた。結果、現職系の候補を破り、M会長が誕生した。M会長の下、医師会の人事が刷新されて、私は、目黒区医師会のがん検診委員となった。

 

 さて、その初会合のとき、がん検診委員長(肝臓の専門医)が言うには、「昨年度の目黒区の胃癌検診の予算は1600万円でした。その予算を医師会が引き受け区民の検診をしているのですが、胃癌の発見は0人という成績でした。ここ数年、胃癌発見者は0人ないし1人という成績が続いています。大変な問題だと思うのですが、 田渕先生何かご意見はありませんか?」と振られた。

 

 当時、一般に、がん検診は、「一人の癌患者を見つけるのに必要な費用が、230万円より上か下か」が、検診のよしあしの分かれ目とされていた。目黒区の胃がん検診は、その基準からいえば、まったくの不合格であった。がん検診委員長が、「大変な問題」というのも、尤もなことなのであった。

 

 当時の目黒区の胃癌検診の仕組みは、まず、年齢などで絞り込んだ対象住民に、胃癌検診のはがきを出す。はがきを見たうちの希望者に対して、碑文谷保健所でレントゲン車によるバリウムによる胃二重造影(検診用の直径10cmぐらいの写真撮影10枚程度)を無料 (=区の予算)で行い、所見のある人を拾い上げて、要精密検査の指示を郵送する。そして、区内の医療機関で、さらに、内視鏡検査もしくは二度目の通常の胃のバリウム二重造影検査(A4サイズの写真撮影)といった精密検査(無料 =区の予算)を受けるというシステムであった。

 

 私は、さらに以前、東京共済病院に勤務していたころ、目黒区医師会からの依頼で、碑文谷保健所で撮影した、検診用のフィルムを読影していた。その画像は、 残念ながら、読影に耐えられる代物ではなかった。バリウムが胃粘膜にきちんとのっていないし、バリウムがすぐに十二指腸の第3部分へ流れていて、胃と重なってしまっているのである。当時の読影は、東邦大学大橋病院の消化器医と東京共済病院の消化器医で担当していたのであるが、一緒に読む、東邦の先生方も私と同じ感想を持っていた。「こんな写真では、読めない!」

 

 「この写真なんとかならないのか?」と、医師会の担当の先生に、撮影しているレントゲン技師さんにクレイムをいってほしいと、お願いしたところ、翌月に返ってきた答えは、「看護婦も医師もついていないので、胃の動きをとめる注射ができない。したがって、バリウムが十二指腸の第3部分 へ流れるのは、避けられない。車なので、写真のサイズは変えられない。」というもので、要は現状を変えられないと返事であった。

 

 読影の席で、取りまとめ役の医師会の先生は、「7~8%ぐらい拾い上げてください」と、我々にリクエストした。読めない画像を前に、我々は、その人の年齢や、問診内容で、要精密検診者を決めていたのである。したがって、1600万円の胃癌検診で一人も癌が見つからないのも、当然といえば当然としか言いようのない結果なのであった。

 

 私は、目黒区がん検診委員長に、以上のような事情を説明した。そして、東大の三木一正先輩が開発した、ペプシノーゲン法による胃癌検診を提案した。興味を示した委員長は、早速、三木一正先生に目黒区医師会での講演を依頼した。三木一正先生は講演を快諾してくださり、講演は実現した。

 

 胃癌は、慢性胃炎の進行した状態で、出やすくなる。ペプシノーゲンは、慢性胃炎の進行度を示す指標である。検診対象者の血液中のペプシノーゲンを測り、慢性胃炎の悪いほう約7~8%を、要精密者として、内視鏡による精密検診をおこなうというシステムを三木先生は紹介した。足立区では、同じ1600万円の予算で、このペプシノーゲン法を採用して、一年で23人の胃癌患者を発見していた。

 

 やっと1人見つけられる目黒区のシステムと、同じ予算で23人も見つけた足立区のシステムと、どちらが優れているか、論議の余地などなかった。目黒区医師会のがん検診委員会は全員一致で、ペプシノーゲン法の採用を採択した。そして、がん検診委員長は、早速、区の担当者に、胃癌検診にペプシノーゲン法を採用したい旨、申し出た。

 

 区の返事は意外なものであった。「ペプシノーゲン法を採用すると、レントゲン技師が不要になってしまうので、碑文谷の2人のレントゲン技師が在職の間は、ペプシノーゲン法は採用できない。」と。レントゲン撮影をするという手段が目的化して、本来の目的、胃癌患者をより多く、より早く見つけて人の命を救うという目的が、忘れられているのだ。

 

 その後、人の命の重さよりも官僚システムを重視した、目黒区の薬師寺さんは、汚職が発覚して自殺した。そして、当時、ペプシノーゲン法を導入した足立区長Yさんは、その後すぐに、 議会からの不信任決議が採択されて、リコールされた。かれは小数会派(共産党)であったのだ。

 

 慢性胃炎は、胃癌の発生母地であり、慢性胃炎の原因の90%はピロリ菌である。慢性胃炎に対するピロリ菌治療は、学会での議論確定15年たった今でも、社会保険では認められていない。

 

 今年も、厚生労働省はいう、胃癌の検診は内視鏡よりもレントゲンが基本と。日本の医療の霧は、政治によってますます、深く濃くなっている。中世、ガリレオガリレイは、地球は太陽の周りを回っているとする地動説を唱えたが、その内容は当時の権力者、カトリック教会には受け入れられず、迫害された。

欧州消化器病週間・学会報告 その1

 2006年10月20日から26日まで、ドイツの首都ベルリンICCにて、欧州消化器病週間が開かれた。10月22日のオープニングセレモニーで、Prof. Peter Malfertheiner 会長は、挨拶の中で、「日本からの演題発表が多く、欧州勢もがんばって研究成果をあげてほしい」と発言した。確かに、小腸内視鏡やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)といった日本から発信されたものだ。内視鏡作成・販売は、オリンパス、フジノン、ペンタックスが有力3社である。すべて日本の会社である。また、ピロリ菌の発見により2005年にノーベル医学賞を受賞した、Prof. Barry Marshall が講演した。自分より先に、胃に細菌がいることを指摘した研究者は、4-5人いた。とりわけ、日本の Ito という研究者が電子顕微鏡の写真を撮って報告していた。実に惜しいところまで行っていたのだが、しかし、彼はピロリ菌の病原性(胃炎や胃潰瘍を起こすこと)については気がつかず、私が、ノーベル賞をいただくことになったと述べた。研究成果は、単に事実の発見だけではなく、その意味を考えながら進めるべきものでなのである。目の前の事実も角度を変えて意味を考え直すと、科学の革命的進歩をもたらすかもしれないのである。


 ところで、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の治療薬の開発などについては、欧州勢のほうが圧倒的に優勢であった。

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The Final Answer ピロリ菌と胃癌 日本消化器病週間・学会報告

     浅香正博北海道大学消化器内科教授が、札幌で開かれている日本消化器病週間で、10月12日に、ピロリ菌と胃癌について、「ファイナルアンサー」と題して、講演を行った。浅香正博先生とは、私が1993年に北大で「大腸腫瘍のピット診断」の講演を行ったときからの知り合いである。当時は、講師で、消化器部門のハウプトであった。彼はテニスが趣味の貴公子である。


 講演の中で、教授は全国集計の結果、年齢訂正の日本人が生涯を通じて胃癌になる確率は、ピロリ菌抗体陽性者で11.2%、ピロリ菌陰性者で1.8%であったと 発表した。ピロリ菌の感染(もしくは感染の既往)は、胃癌の発生を6.2倍に増やしているというわけだ。また、教授自身の胃内部を示した。10年前はピロリ菌がいて、荒れた年寄り風のでこぼこ状態であったが、ピロリ菌除菌して、10年経過したいまは、つるつるてかてかの若くて健康な胃に戻っていると述べた。除菌は、若返りの一環でもある。


 胃癌の死亡者数は全国で約6万人である。除菌政策を採用すれば、少なくとも、胃癌の死亡者は2万人以下になるであろう。若年者のピロリ菌感染は、とくに、危険なので、ぜひ、退治すべきである。これ以上の政策の 。遅れは、重大な責任問題だ。ピロリ除菌政策を即時に採用しなければ、現在の厚生労働大臣をはじめ、同省役人は、近い将来、罰せられることになるであろう。


 当院では、ピロリ菌のチェックと除菌を行っています。1000例を超える経験があります。ご希望の方は、ご一報ください。

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「がんの罹患率と死亡率の激減を達成するには」第2話 がん検診を含めてがん問題全般 その1 がん検診

  私は4年前から、内視鏡診断を中心に、東大の医学部学生を相手に講義を担当している。その際、必ず教えるのが、がん検診の問題である。

 

1) バリウムによる上部消化管検査では、食道癌は助けられない。食道癌は凹凸が出ると、粘膜下(SM)浸潤している。sm癌の5年生存率は40%以下である。したがって、食道癌を100%助けようと思えば、粘膜内に留まるうちに見つけなくてはならない。 ところが、粘膜内の癌は大半が平坦で形態的な変化がない。バリウム造影検査は、形態の変化を捕まえる検査である。したがって、バリウムで 見つかった癌は、理論的にsmよりも深い癌である。つまり、助けられないのである。


2) 胃癌の発見率について、内視鏡検診は、平均して、バリウム造影検診の3倍である。


3) 便潜血反応の進行癌を見逃す率は30%である。進行大腸癌だとわかって手術目的で入院してくる患者に対して、便潜血反応を行ったところ、陽性70%、陰性30%。つまり、進行大腸癌の30%は便潜血反応 で、見落とされる。


4) バリウム検診では、慢性胃炎は正常として取り扱われる。慢性胃炎は胃癌発生のリスク状態なのに、正常と言うコメントがなされる場合が多い。


5) ピロリ菌の感染の既往がない人には胃癌ができない。胃癌の出ない人に胃癌検診をする必要はないのに、ピロリ菌の感染既往の有無にかかわらず、日本では全員バリウム検査をしている。

 

 以上の内容は、臨床医として必須の知識なので、学生に教えるわけである。これらの内容が示すところは、バリウム検診・便潜血による消化管癌検診は実は穴ぼこだらけということなのである。よく考えてみるとお分かりだと思うが、これは、今の権力にとっては不都合である。なぜなら、「がん検診をうけていれば大丈夫。お上の指導する内容に誤りはありません。あるはずがないじゃないですか!」という立前なのだから。「穴ぼこだらけなものを、権力が民に押し付けている」なんて、いえない。権力の座、利潤の仕組みから落ちこぼれてしまう。


  権力が真実を曲げて報道する。権力の嘘を真に受けてしまい、現場にいないと、医師でも、間違った常識を持ってしまう。もっと怖いことは、権力に良心を売った医師や看護師、レントゲン技師、カウンセラーが、自分たちの利益のために、仮面をかぶって平気で、嘘を振りまいてい く。そんな姿をずいぶんと見てきた。美しいのはうわべだけ、闇の心だ。真実は悲しみに満ちたがん患者の家族の涙、がん患者の苦痛という悲惨な現実である。それもずいぶんと見て来た。なにが、「美しい日本」なのか?


 真実は「お上から推奨されて実施されているがん検診は、経済的理由から、そんなに大丈夫ではない」のである。このがん検診をめぐる諸問題は、官僚の無謬神話と同根の問題なのであり、現在、日本の最大の問題(強権官僚の無責任性・無罪性)と強く 関係している。官僚の行ったこと・言ったことが間違いでも、官僚は罪を問われない。

 

 癌学会の演者は、国立がんセンターの杉村先生である。この権力の中枢に近い方が、どこまで、本質をえぐるか?興味深い。

王貞治監督、 慶応大学病院を退院する

 王監督の病状は、胃上部の前壁に、約5cm大の癌があり、腹腔鏡手術をしたところ、リンパ節転移が1つ認められたと報道された。医療関係の報道はプライバシーのため、ときにゆがむので、報道が正しいかどうかは不明だが、この報道は専門家にとって、いくつかの疑問が残るものであった。胃体部上部前壁の癌で5cmといえば、普通は進行癌である。つまり、癌は筋肉層以下に浸潤していて、転移のリスクの高い状態である。術前にリンパ節転移を確実に診断する方法がないので、術中に触診しながら、リンパ節の切除範囲の広さをきめるものであるのだが、腹腔鏡手術では、リンパ節の触診ができないので、はじめから、根治を目指していなかったのかといぶかしく思うのだ。つまり、もしかして、完治不能な状態なので、胃癌からの癌性出血のコントロールのために、胃を腹腔鏡的に切除して、過大な侵襲を避けたのかもしれない。


 今日の会見で、王監督はずいぶんとやせていた。もともとソクラテスのような深刻な顔が、さらにソクラテスになっていた。8-9kg体重が減ったという。糖尿病でもあるのだろうか?もしなければ、どんな栄養管理だったのだろうか?ちょっと心配になってきた。 報道によると奥さんは胃癌でお亡くなりになったとのこと。最近の研究で、ピロリ菌はいろんな種類があり、その発癌因子CAG-Aの遺伝子解析結果から、菌ごとに、発癌の強さの違いがあることがわかってきている。奥さんと同じものを食べていた王監督が、発癌因子が同じピロリ菌を持っていた可能性は高い。 王家のピロリ菌は、超悪玉であろう。子供さんたちもハイリスクであり、もし、まだ、ピロリ菌チェックをしていないのなら、早くして、ピロリ菌がいたら、除菌すべきである。


 ご家族が胃癌になった人は、がん予防のため、ピロリ菌をぜひ退治してください。ピロリ菌について詳細はこちらをクリック

王監督、胃癌になる

 王監督といえば、世界のホームラン王で、私が小学・中学・高校のころにちょうど大活躍していた。私は当時、大の巨人ファンであった。王が打席に立つとホームランの期待でわくわくしていたし、4回に1回はその期待に応えてくれていた。今回、王監督が胃癌になって、慶応病院で腹腔鏡手術を受けることになったという。毎年、検診を受けていて、癌が見つかったということだそうだ。してみると、おそらく、早期がんであろう。腹腔鏡手術をうけずとも、内視鏡でなおりそうなものであるが、腹腔鏡手術をするということは、sm以下に浸潤しているのであろうか。sm癌であれば、大まかに10中8-9助かるが、手術には成功してぜひ助かってもらいたいものだ。ところで、王さんは胃癌予防のために、ピロリ菌退治していたのであろうか?

TBS「主治医の見つかる診療所」 キスでピロリ菌は伝染するの?

  5月7日日曜日のゴールデンタイムのTBSテレビ「主治医が見つかる診療所」をみていたら、 昨年胃がんの手術を受けた大橋巨泉さんが登場した。2回除菌を受けたが、ピロリ菌が治らないという。ピロリ菌は胃癌の原因なので、何とか、治したいらしい。そこで、巨泉さん、コメンテーターの癌研有明病院JF先生にいろいろと質問した。ピロリ菌の感染ルートを尋ねられた彼女は、キスで伝染するとコメントした。つかさず、大橋巨泉さんが「僕は、ワイフと毎日しっかりキスしているが、彼女はピロリ菌除菌に成功したよ。」と突っ込みを入れた。番組ではすぐに茶々が入り、結論でなしで、話題は次に移っていった。私の2500例を超える臨床経験でも、キスでピロリ菌は伝染しない。巨泉さんの突込みが正しいのである。JF先生の名誉のために言っておくと、研究初期には、確かにピロリ菌患者の口腔内から、ピロリ菌の性質を持った菌が見つかるという報告があるにはあった。しかし、人間は、歯を磨いたりアルコールを飲んだりして、ピロリ菌は口の中では極めて生存しにくい。


 では、ピロリ菌の感染ルートは何かというと、土である。土の中には、ピロリ菌が丸く小さくなって(コッコイド型)になって、冬眠しているのである。これが、ゴキブリやハエにつき、最終的に、食べ物などに付いて胃に入ってくるのである。胃に入るとピロリ菌は、鞭毛を広げて、ヘリコプターのような形になって、増殖するのである。(この形からヘリコバクターと命名された。ちなみに、以前は、キャンピロバクター・ピロリと呼ばれていた。)


  私の臨床経験では、歯を磨いたり、アルコールを飲んだりしない、「犬」とキスする、ご婦人方の除菌は必ず失敗した。犬は、土でもどこでも舐めるのである。

最後にもう、一言、ピロリ菌に感染したときの胃癌発生率が1%以下とJF先生は述べていたが、これも間違いで、一生を通じてみると、13%ないし18%ぐらいである。今の日本は年間100万人死亡する人がいて、ピロリ菌感染率が6-7割で、年間約10万人が胃癌になるのである。内、5万5千人が胃癌で死ぬ。


  テレビは大きな影響力を持つので、内容の間違った健康番組を垂れ流すのは、殺人にも等しい。わからないことは、せめてわからないというのが、科学者の掟であろう。プロデューサーも襟を正して品位のある、内容も十分吟味した番組を作るべきである。

癌撲滅政策の提案

 ここ1-2年、中国人と付き合うようになった。彼らを見ていて感じることは、中国人は、目的を理解すると、決断と行動が素早く、日本人は決断と行動が遅いということだ。ちなみに、中国人というのは、総称で、40-50の民族からなり、中国の戸籍には、どの民族か明記されている。有名な一人っ子政策は、モンゴル族とかウィグル族とか満族とかいった少数民族には適応されていない。中国とは多民族集合体なのである。他民族からの侵入がいつあるとも限らない、生命の危険な環境が、理に基づいた、すばやい決断、そういう性格を選び出したのだろう。

 

 先日、日本の癌診療について、NHKが番組を制作していた。アメリカの癌診療が進んでいて、日本の癌診療が遅れているとかのイメージを持たせるような、番組構成であったが、現場から言わせてもらうと、お互いに相手に優る点と劣る点をもっていて、癌診療についてアメリカの体制が一方的にいいというわけではない。乳がん検診体制は、アメリカが日本に優るのかもしれないが、胃癌検診体制は、日本がアメリカに優る。ただし、日本の胃癌検診体制には改善点が多いが・・・。

 

 それから、とても気になったのは、アメリカで開発されているさまざまな癌に対する薬に対する評価である。グリベックという薬は、慢性骨髄腫という血液の癌と消化管の肉腫の一部(GISTの多く)に特効的な効果を示した。イレッサは肺がんの一部を治せるようになった。全部ではない。保険承認をめぐってNHKの番組でも問題になっていた血管新生増殖抑制薬:アバスチンは延命効果をもつが、癌を完治することはできない。その他の新たな化学療法の薬は、延命効果、ADLの改善があり、効果のある症例の割合が増えて、たしかに良くなっているが、全体としてみると、残念ながら、いまだ癌を治せない。助からないステージではやはり95%以上は死ぬ。

 

現在、日本は「2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で死ぬ」時代である。特効薬のない癌を予防する、すぐできる「癌撲滅政策」は、医学的に考えて何であろうか。

1)     癌死ランキング1位=肺癌に対して「たばこの販売禁止」。たばこは、肺がん、食道癌の原因になると知られている。喫煙の肺癌発生オッズは20ぐらいである。肺がんは年間約6-7万人死亡している。たばこをやめれば、20年後には肺がんの数は20分の1になる可能性もあるだろう。肺がんの死亡者数が年間3000-4000人に減るということだ。

2)    癌死ランキング2位=胃癌に対して「ピロリ菌の退治」。胃癌の大半は、ピロリ感染が元になっている。ピロリ菌を退治したグループは、退治しないグループに対して、胃癌発生がどのくらい減るのであろうか?いろいろと研究結果が発表されてきたが、ピロリ菌退治成功して3年後以降は、5分の1から3分の1に減るという。最近の研究では、除菌後お酒を飲まないグループでは10分の1以下になるようである。私のクリニックで、ピロリ菌退治した人たちの癌発生は、年0.5%ぐらいである。この政策が実施されれば、胃癌の死亡者数は約5-6万人から、1-2万人に減るであろう。

3)     癌死ランキング3位=大腸癌に対して「大腸内視鏡検診」。40-50才時の大腸内視鏡検診を開始して、ハイリスクグループの絞込みとポリープ切除をおこなうと大腸癌はほとんど予防できる。私の経験では、このプログラムにのって大腸癌で死んだ人はいない。この政策が実施されれば、年間3-4万人死んでいる大腸癌は、年間2000人以下になる。


 これが、私がすぐに思いつく、がん死のランキング1位から3位までの対策である。現在、日本人の癌死年間33万人中、約14万人が救われるだろう。医療費の削減効果も大きい。癌の特効薬のない今、疫学的な強力な健康政策が必要だろう。


 その他、肝癌はB型C型肝炎ウィルス、子宮頸がんはパピローマウィルスなど、感染症による癌は、より強力な感染予防対策により、長期的な癌発生低下が見込めるであろう。

 

昨年、アメリカDDWに行き、中国の地方政府の中には、先進的ながん予防政策を採用しているところを知って驚いた。病気を治すということは、体の中にある自然との闘いである。癌は洪水災害みたいなものである。今の日本に必要なのは、国民の健康と幸福を希求し、道理に基づいた素早い決断をして、それを実施できる政治組織であろう。

ピロリ菌発見者(マーシャル先生とウォーレン先生)にノーベル賞

 スウェーデンのカロリンスカ医科大学は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、オーストラリアのバリー・マーシャル西オーストラリア大教授(54)と、病理専門医ロビン・ウォーレン博士(68)に贈ると発表した。ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生に関与している可能性を1983年に提案したことが22年を経て評価されたものである。その後、世界各地の研究で、ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんとの関係も明らかになってきている。ピロリ菌は地域によって、亜種があり、日本をはじめ、中国東北地区、朝鮮半島になど、東アジアに分布するピロリ菌は、cag-Aという発ガン因子をもつことがわかった。日本でのピロリ菌感染率は、戦前・戦中・戦後混乱期世代(50歳以上)に高く、これが、日本の高い胃癌発生率に結びついている。ピロリ菌の除菌によって、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の慢性化はなくなり、胃癌の発生率も低下する。現在、日本の健康保険制度では、ピロリ菌除菌療法は胃・十二指腸潰瘍 治療にしか適応がなく、胃癌の前段階の慢性胃炎に対しての適応はない。残念なことである。ウォーレン先生らがノーベル賞を受賞なさったのを機に国を挙げて、ピロリ菌退治をし、胃癌患者を減らしたいものである。戦前、結核予防法が策定されたように、胃癌予防法を策定し、慢性胃炎患者のピロリ菌の駆除に行ったらいかがであろうか!ちなみに、当院では、これまで2600例を越えるピロリ菌退治をしてきました。慢性胃炎でピロリ菌除菌をご希望の方は、御来院ください。

ピロリ菌を心配して、胃癌を早期発見—開腹胃切除を免れる

先日、このホームページをみた30歳の娘さんが、ピロリ菌のいるお父さん(58歳、仮称、小泉純一郎)を心配して、ピロリ菌を退治してほしいと当院を訪れました。まずは、内視鏡検査ということで、上部消化管内視鏡検査を実施したところ、直径3mmの陥凹型早期胃癌が見つかりました。内視鏡で粘膜切除術をおこない、病理検査の結果、病変は粘膜内に留まっていました。粘膜内に留まっていれば、リンパ節転移や、肝転移や、腹膜播種の可能性は、ほとんどありません。小泉純一郎さんは、開腹して胃を切除する必要はありませんでした。娘さんの機転が、お父さんの胃を、いや、命を救ったのでした。

 このような、ピロリ菌を心配して来院して、内視鏡をしてみると胃癌がみつかるという、エピソードはよくある話です。ピロリ菌を放置している人に胃癌が発生してきます。ついでに言うと、大腸ポリープが出る人や癌家系の人は、その人の癌遺伝子が変異しやすいことが知られています。そのような人は、大腸に限らず、腺組織をもつ臓器(食道、胃、十二指腸、胆嚢、胆管、膵臓、肺、腎臓、前立腺、乳腺、子宮)に、それぞれ(食道癌、胃癌、十二指腸癌、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌)が出やすいことが知られています。大腸ポリープがあって、癌家系であって、ピロリ菌のいる人は、三重の胃癌のハイリスクを持っています。当院での消化管ドックを受ける最もメリットのある人たちといえます。

ピロリ菌を放置してスキルス胃癌になる。・・・残念!

今年(2004年)の初めに、5年ぶりに内視鏡検査を受けに来た60歳ぐらい社長がいらっしゃいました。5年前にピロリ菌がいるので、退治しましょうとアドバイスしておいたのですが、彼は仕事が忙しくて、しばらく、来院できなかったといっていました。内視鏡検査をしてみるとスキルス胃癌(進行の早く、胃癌の中でも最も悪性度の高い癌)が見つかりました。スキルス胃癌は内視鏡では治療できないので、東大病院に紹介しました。そこで、いろいろ治療を受けたのですが、結局、先日お亡くなりになりました。ご冥福をお祈りすると共に、5年前に、なぜもっと熱心にピロリ菌退治をお勧めしておかなかったか、毎年、なぜ内視鏡検査をお勧めしなかったのか、と大変後悔させられました。胃癌の発生はピロリ菌退治で抑制できます。(詳細)ピロリ菌を退治しましょう。
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