たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

カプセル内視鏡

カプセル内視鏡を導入。全小腸が苦痛なく検査できます。小腸ドックを開始しました。

 カプセル内視鏡は、2000年、今から9年前5月、アメリカ、サンディエゴDDW2000で初めて発表された。発表者はイギリス人、P.Swain博士。彼自身による自作のカプセル内視鏡で、無線による画像の送信という画期的な技術で、当時、内視鏡医の間で大いに話題になった。私も、じかに彼の発表を聞いてとても驚いた。以来、アメリカでは、2002年ごろから盛んに臨床使用された。日本でも治験を経て導入されたが、先進諸国の中では、例によって一番遅く、2007年に漸く、販売の認可が下りた。カプセル内視鏡は、直径約10mm長さ28mmの小さな電池仕掛けのカメラで、画像を電波で発信するように作られている。角はなく、飲み込み 易い、滑らかな形をしている。小腸全域を観察するのに適しており、各国で一定の臨床的評価を与えられている優れものである。小腸の腫瘍や、潰瘍の発見などには、極めて効果的である。ただし、胃や大腸についての評価は微妙。

 

アスピリン内服による小腸潰瘍  :  右画面をクリックすると動きます。

 

 現在の社会保険診療では、胃内視鏡、大腸内視鏡を行っても、原因が特定できない「消化管の出血」に適応が限られている。

 

 一方、自由診療では、小腸が細くなっている以外、とくに適応制限はない。

 

 アスピリンなどを長期に飲んでいる方は、小腸に潰瘍や炎症ができているケースが多く、潜在的な出血があったりして、要注意です。

 また、原因不明の腹痛で悩まされている方や、

 腫瘍家系の方にはお勧めです。(小腸にも時々癌ができます。昭和天皇陛下の死因が小腸癌と発表されたのは、記憶に新しいところです。また、現皇太子殿下も、近年、小腸腫瘍を内視鏡で切除なさいました。)

 

 カプセル内視鏡による小腸ドックをご希望の方は、メールにてご連絡ください。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

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アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 第2日目 

爆発事件?事故?学会場が大きく揺れる。進歩する学問と技術 大腸用カプセル内視鏡、逆行観察用細径内視鏡、virtual colonoscopy など
 

  サンディエゴはからりと晴れ上がり、強い日差しの一日であった。お昼時、展示ブースめぐりをしていたときに、ドカンと大きく学会場がゆれた。消防車が学会上の前をけたたましく何台も走り抜けた。何事かと思っていたら、約1時間して、講演の最中に全館放送が流れた。「学会場の東方で問題があったが、避難する必要はありません。」 放送のたびに、講演が何度も中断された。ここ10年ほぼ毎年、学会に来ているが、このような出来事は始めてである。「テロかな?ガス爆発かな?」と思っていたが、学会は、放送による中断があっただけで、ほぼ無事に進行した。


 2-3年前から、大腸用カプセル内視鏡が開発されているのだが、その臨床的評価が発表されていた。まず、一番の問題点は、大腸は停滞時間が長いので、電池切れになって全大腸が観察できないのである。1-2割は下部大腸と直腸が観察できないらしい。腸の動きを早くするために、いろいろな工夫がされていたが、さらなる工夫が必要であろう。また、1cmを超える大きなポリープでも見落としがあり、全体としての大腸ポリープに対する感受性も8割ぐらいで、今のままでは、大腸ポリープのスクリーニングには、少し限界があるように感じられた。しかし、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の評価には、十分使用できそうである。


 大腸内視鏡観察は大腸ひだの裏が見落としやすい。そこで、内視鏡先端に透明なキャップなどをつけ、襞を押さえつけて、裏側を見たりするのであるが、Advantis Medical System 社から、鉗子孔から挿入できて、Uターンのできる画素数320*240の直径約3mmぐらいの内視鏡が開発されていた。反対側から襞の裏を見ようというわけである。この製品はこれからの臨床評価であろう。


 また、CTによる大腸表面の画像化技術(vertual colonoscopy)も電子機器と優れた画像処理プログラムの向上により、かなりの所まできていた。

夜は、普段会えない先生方や日本人関係者と会食して、情報交換。

 

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第73回日本消化器内視鏡学会総会報告   カプセル内視鏡・経鼻内視鏡・ダブルバルーン式小腸内視鏡・拡大内視鏡・特殊光内視鏡・超拡大内視鏡・レーザー共焦点式内視鏡

 5月9日から11日まで、新緑薫る、東京のグランドプリンスホテル新高輪と国際館パミールで、東邦大学医学部消化器内科教授 三木一正先生会長のもと、第73回日本消化器内視鏡学会総会が開催された。いろいろと勉強になったが、個人的には、特別講演2の愛知癌センター腫瘍病理部長、立松正衞先生の話が面白かった。ピロリ菌には梅エキスの中のリグナンという成分がよく効くと発表していた。実験室レベルでのデータだったが、臨床的にはどうなのだろうか、引き続きの研究発表が期待される。また、系統発生のはなしで、鳥には大腸がないとか、胃の酸と消化酵素が別々の細胞から分泌されるのは、脊椎動物の中でも哺乳類だけ?!だとか、大腸腺管は腺管ごとにmonoclonalだとか・・・結構面白い話を教えてもらった。話題の主体は、胃の腸上皮化成のはなしで、sox2,cdx1,cdx2やmuc5ac,muc2+mac5ac,muc2・・・といったものとの胃癌発生母地である腸上皮化成の絡みや、胃癌は幹細胞レベルからではなく、もう一歩進んだ前駆細胞レベルででてくるとかといったことであったが、脇のほうが面白かった。


 経鼻内視鏡・拡大内視鏡・特殊光内視鏡・超拡大内視鏡・レーザー共焦点式内視鏡など
各種の内視鏡がこの10年ほどの間に、開発され臨床応用されている。これらのスコープ開発の方向性は大きく3つあり、より簡単に、楽に検査をおこなうという第一の方向性と、より正確により精密にという第二の方向性と、見えなかったもところ(小腸)をなくすという第3の方向性である。第一の代表が経鼻内視鏡・カプセル内視鏡である。第二の方向性が拡大内視鏡・特殊光内視鏡・超拡大内視鏡・レーザー共焦点式内視鏡である。第3の方向性がカプセル内視鏡・ダブルバルーン式小腸内視鏡だ。それぞれの方向に、臨床的な経験やアイデアが積み重なって、発展していく経過を見るのは、楽しいことだ。オリンパスからモノバルーン式小腸内視鏡が新たに発売されていた。内視鏡の分野はすべて、わが社でやるぞ!というオリンパス社の気概を感じた。

日本消化器内視鏡学会報告

 日本消化器内視鏡学会が、5月26日から29日まで東京赤坂見附のホテルニュウオータニで開催された。いろいろと面白い発表がある中でもっとも注目したのは、オリンパス社製カプセル内視鏡である。画質は既存のギブン社のものより優れたものであった。従来、カプセル内視鏡はその特性から、小腸の診断に主に使われていたが、オリンパス社製のものは、胃も観察できるほどのイメージを持っていた。今後しばらく、カプセル内視鏡の進化が起こり、10年後には、内視鏡の世界も大きく変わりそうである。

カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の開発で可能となった全小腸内視鏡検査

小腸は長さ約5mないし7m、直径1.5cmないし2.5cmの細長い管状の臓器です。2000年以前は、すべての小腸の内側を見ることは、テクニカル的になかなか難しいことでした。ですから、我々専門家は、そのころ、小腸のことを暗黒大陸と呼んでいました。2001年ごろに、カプセル内視鏡が開発されて、全小腸を容易に観察できるようになりました。(ちなみに、主要国の中でカプセル内視鏡が政府に認可されていないのは、日本だけです。アメリカ、中国、韓国、ヨーロッパの政府はずっと前から認可しています。カプセル内視鏡が使えないのは日本と北朝鮮だけ?!) しかし、カプセル内視鏡の原理的欠点は、組織検査ができないこと、ポリープの切除や、止血処置ができないといったことでした。2002年秋、ジュネーブのUEGW学会のとき、ある内視鏡製作会社の開発責任者から、ダブルバルーン小腸内視鏡を開発したが、売れるだろうか?商品化しても大丈夫だろうか?と質問を受けました。わたしは、その方法はカプセルと違い、組織検査やポリープ切除、止血処置などもできるから、臨床的に有用であり、是非商品化すべきだといいました。翌年の春にダブルバルーン内視鏡は市販され始めて、いまや、全世界で売れています。小腸の病変・病気に対しては、カプセル内視鏡でスクリーニングを行い、ダブルバルーン内視鏡で精査・処置するというスタイルが定着しつつあります。ちなみに、当クリニックでもダブルバルーン小腸内視鏡が可能です。


 

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