ヨーロッパの学会から、とんぼ返りして、木曜日からjddw2014神戸に参加。
胃がん検診に興味を持っているメディアが、私の本「私は<ガンで亡くなる方の2人に1人は救える!>と考えています」を読んで、共鳴して、学会場に私を取材に来た。
jddw2014-10-24interview

胃がん検診について、厚労省は「胃2重造影レントゲン検査」が標準検査と言っているが、
それに疑問に思っている専門家の医師は多い。私だけではない。

 いくつかの理由がある。
第一は、内視鏡検査は「胃2重造影レントゲンバリウム検査」の5倍くらい胃癌が発見できる。
第二は、レントゲン被曝により、20年ぐらいすると、被験者の2%ぐらいが癌になる。
第三は、胃癌の原因はピロリ菌と判明しているので、早期発見に努めるよりも、原因の除去をした方がよい。
第四は、バリウム検査で飲んだバリウムが腸でかたまって、腸閉塞となり、毎年約20名くらいの人が緊急手術を受けている。さらに毎年約2名は固まったバリウムで腸が破れて死んでいる。

 これに対して、行政側(国立がん研究センターの検診担当者)は、
第一に、内視鏡による胃がん検診には、胃がんを減らすという研究結果がない。研究結果がないのに内視鏡検査を胃癌検診の方法として採用できない。
第二に、内視鏡検診の行うには、それを行う医師が必要で、医師を確保するのは大変だ。
第三に、今の検診の主役の放射線技師の仕事がなくなる!
などなど・・・・・・

 しかし、いくつもの研究で、早期胃がんの発見率は、胃2重造影レントゲンバリウム検査に比べて、内視鏡検査のほうが数倍高い。(ちなみに、この学会の発表でPL検診センターからは両者は同等であるという発表が唯一あった。PL検診センターの内視鏡担当のアルバイトの先生方は東京で一番安い時給で働かされていて、モチベーションが低いという内情があるらしい。保険組合から検診を取るために検診単価ダンピングをしている・・・・)

 だから、今更、バリウムか内視鏡かどちらが人助けになるか?RCTしましょうというのは、倫理委員会を通るような内容ではないのである。

 バリウム検診で2%の人が癌になっているということは、WHOが1994年にすでに指摘されている。被曝の害は決して軽いものではない。日本人の大衆には知らされていないが、日本以外で胃がん検診を行っている国はないのである。
 お城のような立派なお部屋に座って、「死亡診断書を書いたことがない」人には、現場のことが分からないのだ。早期発見に失敗すれば、文字通り、胃がなくなり、ときには命がなくなる。そして本人も家族もほんとに悩み悲しむ。それを、日々目の当たりにしている我々は、「内視鏡検査をしているとき戦争しているのだ」という実感がある。しかし、お城の中にいる方には、それがないらしい。あるいは、よくわかっているのだが、新しいことをするのは面倒というお役人根性・・・・・?

 この30年の学問の成果から、わたしが考える胃癌対策は、「国民総ピロリ菌除菌」。そして、既往や家族歴そしてペプシノーゲンによってハイリスク集団の絞り込みをしたうえで、内視鏡検診をするという策である。