食道癌の術後に吻合部がときに狭窄して、食べ物が通らなくなることがある。どんなに手術の上手な施設でも時々起る厄介な術後合併症だ。狭窄には膜様の狭窄と線維性の狭窄がある。膜様の狭窄は、狭窄部位が短く、バルーンでの拡張を繰り返すと大半の症例で、改善してくる。しかし、線維性狭窄は難治で、治療は一筋縄ではいかない。食道癌手術で有名な順天堂大学の梶山教授( 大学の同級生)のところでも、このような症例は治療に大変苦労しているらしく、彼の弟子が書いた総論を読むと、バルーン拡張を何度も繰り返すしかないと書いてある。

 

 さて、今回、バルーン拡張を何回も繰り返したが、すぐに悪化して、4カ月も食事が食べられなくて困っている症例があるので、なんとか治してくれないかと、関連施設の病院から依頼された。大病院から小さなクリニックに紹介されて、患者はおっかなびっくりやってきた。いろいろと調べたところ、狭窄はほとんど閉塞しており、無理してやっと直径2mmのカテーテル型の超音波内視鏡が通せるぐらいであった。長さは約5-6センチで、線維幅は1cm以上であった。APC(アルゴンプラズマ)で線維を焼き、焼きかすを根気強く丁寧にはぎとり、トンネルを掘った。


 途中、何回も出血して大変であったが、なんとか成功し、直径10mmの内視鏡が貫通した。しかし、1週間ほうっておくと、線維が急速に増殖してきて、すぐに閉塞してしまう。そこで、十分広げた後に、着脱式の新型のステントを挿入して、治療に成功した。


 患者さんが喜んだのはいうまでもない。今回行った方法は優れていて、食道癌術後吻合部線維性狭窄の内視鏡的治療の標準方法となるのではないかと 考えている。


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(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

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