2009年5月21日から23日まで、名古屋国際会議場で第77回日本内視鏡学会が開催されている。

今日は、6:50の新幹線に乗って品川から乗って、9:00丁度に会場に到着した。昭和大学横浜北部病院の工藤進英教授の教育公演を拝聴。その後の大腸拡大観察のセッションに参加。最後、抜け出して、芳野純治会長の会長講演を拝聴。ランチョンセッションはまたまた、工藤先生の「de novo癌」。午後は大腸ESDのセッションに参加。

 大腸腫瘍データベースを万の単位で持っているのは、日本では、私と工藤教授と広島の先生ぐらいか・・・・?

 

 工藤進英教授の講演で、私の万単位の大腸腫瘍データベースからみて賛同できる点は、

1)大腸がんの発育進展ルートには、マウンテン型と陥凹型があること

2)マウンテン型はK-RAS突然変異陽性で、陥凹型は陰性であること(これは、私のとった材料で、藤盛先生の教室が世界で初めて見つけたこと)

3)陥凹型早期大腸癌が平均約7mmで、粘膜下に浸潤すること

4)大腸癌検診で、便潜血反応は、陥凹型大腸癌発見に有効でないこと

5)リビアの砂漠の写真を見て、結節型側方発育型を連想すること

6)内視鏡や外科などの苦しい臨床現場に、新米医師が来ないこと

 

 工藤進英教授の講演で、私の万単位の大腸腫瘍データベースからみて賛同できない点は

1)長廻紘、藤盛孝博、田淵正文らの業績を一切語らない点、そのほか他派の研究も同様に語らない点。

2)小さな3L型の大腸腫瘍は、とらなくてもいいという点。(小さな3L型の大腸腫瘍は年1%程度癌化すると私の研究からは予想される。小さな病変を無視する風潮が粗診粗悪な内視鏡検査につながる。)

3)大腸癌検診を内視鏡で行った時、の効果についての発表がいままでないと述べたこと。(1997年ごろに、職域大腸がん検診で内視鏡を用いて、大腸の腫瘍をすべて取って、癌死が0になったという私の発表が、当時の朝日新聞で取り上げられた。)

4)陥凹型大腸癌を de novo癌と主張する点。(陥凹型の大腸腫瘍の中にも、異型度ピラミッドがあり、陥凹型大腸腺腫が少なからず存在します。また、陥凹型大腸癌のピッとパターンが必ずしも一様でないことから、陥凹型大腸癌の一部は陥凹型大腸腫瘍から異型度進展したものがある)

5)隆起型の大腸腫瘍切除が、大腸がん予防に結びつかないと主張する点。(私のクリーンコロンの研究からは、大腸隆起型腺腫の一年後の癌化率は1.3%(1996胃と腸)。また、その数の多さから、マウンテンルートは大腸癌全体の約7割、陥凹型ルートは約3割(これは先生も参加していた1994-1996の厚生省武藤班の結論でもあった。)したがって、小さな隆起型の大腸腫瘍も、お経を唱えるように、地道に切除するべき。77回唱えれば、次の年の癌発生が一つ減る。)

6)リビアの砂漠で陥凹型を連想した写真は、そこが丸くて平らなところがないので、陥凹型癌というよりも、バイオプシー後の接線観察といった感じ。

7)大腸ポリープ切除の内視鏡の点数が高いと主張する点。これ以上安くなれば、この3Kの内視鏡世界に参入してくる若手医師がますます減ります。先生の主張する大腸内視鏡による内視鏡検診も難しいものになると思います。

 

 芳野先生の講演で興味深かったのは、日本原子力機構と共同で開発している、ファイバー型内視鏡。原理は昨年のアメリカDDWでハーバード大学からのeye on the tip of fiber、と同じだが、同心円二重構造で、レーザー治療もできるという点である。その技術を応用して、師の星原芳雄先生がかつて行っていた、ファイバーグレーティングによる病変の長さ計測をレアルタイムで連続画像で成功しておられた。また、氏のライフワークである超音波内視鏡では、高出力型の30MHzの粘膜構造写真がきれいだった。

 

 大腸ESDのセッションでは、症例のかなりのものは、EMRなら2-3分でとれるものを、訓練のためか、わざわざ、20-60分かけて、とっているという印象を持った。胃癌とはちがって、大きなものでもpEMRで十分長期予後がよいので、わざわざESDする臨床的価値について、今後十分検討する必要があるだろう。 

 

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