名古屋でに開かれた秋の癌学会で、最近の癌死亡者の動向が、発表されていた。内容は、全死亡に占めるがん死亡者数が、40%に近づいているというものであった。3-4年前は33%といっていたから、その急増ぶりは、予想されたものとはいえ、少し驚いた。


 今から、20年前、フジノンと協力して、世界で初めて臨床に使える電子拡大内視鏡を開発して、片っ端から、精密に大腸内視鏡をおこなって、7割の人に大腸腺腫を認め、その多さに驚き、なぜだろうと考えた。すべての大腸内視鏡検査を、電子拡大内視鏡で行い、すべてのポリープを切除するという方針を貫き、きちんとしたデータを集め続けて、大腸腺腫と癌(大腸に限らず全身の癌)との間に大きな関係があるのに気がついた。癌患者には97%以上の確率で、大腸腺腫が存在していたのである。また、70歳になっても大腸腺腫が出ない人は約3割いて、その人たちの既往歴に「がん」が存在する確率は1%以下であった。(つまり、日本人の3割は癌体質でない。)


 日本人の7割は、大腸腺腫をもつ、あるいは、持つ可能性のある癌体質の人たちである。たんぱく摂取量の改善、高血圧や高脂血症に対する効果的な薬が開発されて、脳血管障害による死亡が激減してきたため、「癌」で死ぬようになってきたのであろう。

 日本人の4割が癌で死ぬ。7割の人に大腸腫瘍が見つかっても何の不思議もなかったのである。大腸腺腫は単にそれが前がん病変というだけでなく、全身のどこかに癌がでる、癌体質のマーカーでもあったのである。小さな大腸腺腫を探り当てることは、単に、大腸がんの予防に効果あるだけでなく、患者の「癌体質」を見抜く鍵でもあるのだ。


 癌に対する治療の進歩や、予防策の進展、他の疾患の治療・予防策の進歩の状況にもよるが、今後、全死亡に占めるがん死亡は50%ぐらいまで増えるかもしれないが、それ以上は増えないのではないかと予想している。

 

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