4月19日から21日まで、青森県の青森市で、弘前大学第一内科教授 棟方昭博会長のもとで第93回日本消化器病学会総会が開催された。


 小さな町で、宿泊施設と飛行機便を確保するのにかなり苦労した。結局、行きは陸路新幹線となり、前日は八戸に一泊して、学会初日に青森市に乗り込んだ。


 学会では、多くの時間を、「ESDとEMRのすみわけ」というテーマに費やしていた。

 

 ESDはEMRに比べて、切除範囲を正確に切除できるが、時間がかかる。また、技術を習得するまでにも多くの症例と時間がかかる。そろえる道具も少なくなく、現行の胃ESD=12万円では病院経営を圧迫するという話もあった。去年、学会は胃ESDの保険収載を24万円で厚生労働省に希望したそうであるが、結果は半額回答の12万円であったとのこと。ESDには、スタッフは熟練したものが3-4人必要で、2-3時間かかり、十分な器具をそろえるとすれば費用もかかる。それらを十分考えれば、厚生労働省はESD=12万という価格は再検討が必要であろう。


 食道:発表数、症例数が少なく、結論や推薦ガイドラインもなし、あまり討論にならず。


 胃:一括全切除が病変を病変の再発・遺残をさせないポイントという、歴史的反省の上、EMRの上手な施設では、20mm、EMRが下手なところでは5mmを境にしてEMRとESDがすみ分けるべきと主張。胃におけるESDの穿孔率は、2-7%ぐらい。修練すると穿孔率は下がってくるようだ。


 大腸:拡大内視鏡検査によるpit pattern diagnosis (ピットパターン診断)で、正常と腫瘍の境界がはっきりとわかること。また、病変の悪性度の高いものがまれであることから、分割EMR(pEMRもしくはEpMR)でも、病変を残す確率が極めて低かったというpEMRの歴史的評価の上、スロープ形の陥凹(工藤進英教授はpseudo-depressionと呼ぶが、陥凹していることは事実なので、用語としては変だ!)を伴う2cm以上のLST(側方発育進展型腫瘍)病変のみがESDお勧め病変ではないかとの意見が強かった。大腸ESDの穿孔率は、5-15%。大腸では修練しても穿孔率はあまり下がらないとのコメントもあった。


 私としては、胃は1.5cmぐらいがすみわけの境。大腸では、ESDの穿孔率の高さと分割切除の安全性より、すべての病変について、pEMR=EpMRを第一選択とするべきで、ESDは 一般的には、かなり、危険だと考えている。

 

 帰り道の途中に、雪の八甲田さんにドライブし、さらに、三沢までいって、静かな湖と太平洋の荒波をみた。青森県は自然エネルギーの宝庫だった。