たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2017年11月

不正な減額査定 情報公開で医療を守ろう

平成29年7月22日の28歳男性クローン病の患者さん(TT)の医療について
緊急の下血・下痢・腹痛の患者を治すために行った医療が、症状詳記の質問もなく、大きく減点審査されたのは遺憾だ。下記のような症状詳記を加えて再審査請求を出すことにした。

7月21日に下血と病勢の悪化で来院した、同日に、胃と腸の内視鏡検査を行った。クローン病の悪化で大腸には活動性の縦走潰瘍をみとめた。終末回腸にはアフタ性潰瘍を認めた。さらに、大腸ポリープと食道腫瘍を認めて切除した。出血源は不明瞭であった。7月22日、ロゼワイン状の下血が増悪したため、カプセル型小腸内視鏡と上下の緊急内視鏡を行った。まず、上部消化管検査では、内服していたカプセル内視鏡が胃内に滞留していたので、内視鏡的に小腸に入れた。
DSC00013
DSC00026
DSC00030
胃体上部後壁に小潰瘍を認めた。潰瘍底から滲むような出血が認められた。Deurafoi 潰瘍と考えて、クリップにて止血した。
DSC00048

カプセル型小腸内視鏡では、空腸にはび慢性のリング状的な発赤を認めた。
DSCN0571

回腸では、散在性にアフタ性の潰瘍を認めたが、明らかな出血源はなかった。
DSCN0570
大腸内視鏡を行ったところ、直腸には、ロゼワイン色の血液が貯まっていた。
DSC00000

DSC00009

回盲部にはカプセル内視鏡とダミーカプセルがあった。
前日、大腸ポリープを取ったあとの潰瘍から滲むような出血を認めた。

DSC00013
クリップを用いて止血した。
DSC00022
その他、大腸広範に縦走潰瘍を認めて、クローン病の病勢はかなり強かった。
DSC00033
以上から、胃潰瘍、小腸潰瘍、大腸潰瘍、各場所からの滲むような出血が、下血の原因と判断した。
主な治療は、上部内視鏡による胃の止血術、下部内視鏡による大腸の止血術、クローン病に対するレミケードの点滴だった。これらの治療により、下血・下痢・腹痛は止まり、退院できた。

 以上を決められた通りに、保険請求した結果、下部内視鏡による止血術と、カプセル型小腸内視鏡が理由Cにて減点された。上記の通り、難しい症例をきちんと検査して、きちんと治したのだから、症状詳記も求めずに、問答無用で20万円も査定するのはやめてほしい
IMG_3216[1]


 現行の制度では審査官は無記名で、誰が審査しているのかわからない。担当の審査官の名前は公表すべきだ。以前、国保の審査委員会に担当審査官の名前の公表を請求したところ、「個人的な恨みや犯罪の手がかりになるので発表しない」と回答された。裁判官は実名を公表している。公正なことをしている自信があれば、公表できるはずである。ブラックボックスは許されない。ここにも、情報公開で正すべき、行政制度がある。

 医療保険の審査制度は、私ばかりでなく多くの人たちから、いろいろと問題が指摘されている。

 前月の衆院選で自民党が大勝してから、政府は来年の保険点数の切り下げを宣言しているし、審査委員会は以前は問題にしていなかったような細かなところも指摘してくる。高齢大国というのに、このままでは、病人や高齢者の健康は守れそうにない。
  
 政府は財源不足を、医療費削減、高齢者・病人切り捨ての理由としているが、政府と中央銀行を一体としてみる統合政府という観点からは、政府の財政はここ数年で大きく改善していて、統合政府の借金はかつて1100兆円あったが、ここ数年、日銀が毎月8兆円前後、通貨を市場に投入して国債を回収しまくったので、もう500兆円ぐらいしかないはずである。

 国民のニーズが経済のエネルギーである。超高齢社会を迎えている今の日本では、「健康に暮らす」ということはもっとも大きなニーズである。健康に暮らすことに医療は欠かせない。これを財政悪化という詭弁を用いて、抑制することは、実経済にもマイナスになることが、どうして分からないのだろう。




Burj Khalifa で浅香先生と出会う

バルセロナの帰り道 ドバイに立ち寄って観光視察で ブルジュハリファへ登ったところ浅香先生とばったりと出会った。先生とは先生が北大講師の頃からの知り合い。ピロリ菌退治を保険適応にした大教授。昼食を一緒にして情報交換した。日本の「がん予防」は大いに改善すべきと意見が一致。タバコ禁止、ピロリ菌の退治、大腸ポリープ切除の促進が「がん予防」の切り札。がん予防の促進が、正しい医療費削減の方法。政府のあり方やマスコミの偏った報道も問題。世界水準からは大きく遅れている。まったく一致した。
アーカイブ
カテゴリー
  • ライブドアブログ