たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2014年09月

北見、網走、知床を見学、武部新先生を表敬訪問。

 研修医をしている長男が、ローテートの一環として、北見の病院にこの一カ月勤務している。その激励も兼ねて、連休を利用して北見を訪問。北見といえば「武部新先生」。後援会事務所を訪問して、情報交換をした。親と子の関係のはなしや、ピロリ菌や大腸がんの話について大いに盛り上がった。(先生は今夜、お通夜に行く予定、お亡くなりになったのは、50歳前後の女性の方・・・)今年は大腸がんに罹患する人は約18万ないし20万人、大腸がんでお亡くなりになる人は約4万ないし4万5千人。(年間の総死亡者数は約120万人・・・)症状の出ないうちに内視鏡検査を受けてポリープを取っておけば、死なずに済んだのに・・・・DSCF7821

大きな胃がんの内視鏡的切除(ESD)に成功!

 7月に福島県から71歳の胃がん患者が来た。地元の医療機関では胃癌病変が大きく、内視鏡では取りきれないと判断されて、開腹手術を勧められた。しかし「どうしてもおなかは開けたくない。胃は取りたくない。」といって、知り合いのつてで、中目黒消化器クリニックの評判をきいて、受診してきた。内視鏡検査と超音波内視鏡検査をした結果、病変は胃体部にあり、直径約12-13cm、2か所潰瘍があって、その箇所でsm層は淡くて不明瞭。広汎Ⅱb+Ⅱc+Ⅲ、mmとmpが面を形成してひっついている。大きさ深さともにESDの適応かどうかは微妙であった。CT-PETでは遠隔転移も、所属リンパ節の腫れも認められなかった。

 「病変が大変大きいので、一回のESD手術では取りきれない可能性が強いです。4-5回の内視鏡手術が必要かもしれません。また、病変の一部に深そうに見えるところがあるので、その部分がうまくはがせるかどうか、技術的にはかなり困難そうです。また仮に内視鏡的には取りきれても、癌の脈管浸潤などの遠隔転移やリンパ管転移の兆候が組織標本にあれば、追加で胃切除が必要です。また、これだけ大きいとESDのときに、穿孔もありえて、その場合は東大病院に緊急で引き受けてもらいます。(瀬戸教授に事前連絡)、それでよろしければ、同意書にサインしてください。」

 厳しい説明にもかかわらず、患者はすらすらと同意書にサイン。

 8月末から内視鏡によるminimum invasive な治療が始まった。ESD手術は延べ4回、延べ17時間かかった。潰瘍のあるⅢの治癒過程の部分、すなわちmmとpmのついている部分はフックナイフで綺麗に剥がれた。激しい出血や一時的な穿孔による腹膜炎も起こしたが、ともに内視鏡的な処置で乗り切って、なんとか病変は取りきれた。また、術後の合併症はこれだけの大きさであるから、予想通り何回が下血があった。そのたびに夜中でも緊急止血処置。文字通り、大変な症例であった。
 開腹手術では、3時間ぐらいで終わるようなものであるが、胃を切除すれば、おいしいご飯もこれまでのようには食べられない。術後のQOL(quality of lif)を考えると、17時間の粘りと深夜の出血との戦いは決して無駄ではない。(ついでに、文字通り寝食を忘れて治療していたので、患者ばかりでなく、術者の私も3kgほど痩せた。)
 病理標本の結果は、癌は粘膜内にとどまり、切除後潰瘍の辺縁からの組織検査でも癌は出てこなかった。
つまりは、うまくいったらしいのである。(分割切除であるから、組織標本の価値が少し低いため、らしいという判断)
 さて、現行の保険診療の手術点数規定によれば、何回もの内視鏡手術に比べて一回の開腹手術のほうが安上がりである。保険医診療担当心得の中には、病気はできるだけ安く治すようにと書いている。だから、保険医なら、開腹手術を選ぶべきであったと判断して、今回のような治療内容を過剰医療や保険適応外ときめつけ、診療報酬を与えないとする考え方がある。   

 しかし、本当に過剰医療や保険適応外であろうか?

 開腹手術は内視鏡手術とは違って、月日がたつと一定の割合で術後のイレウスを起こす。何回も入院を繰り返す症例が少なからずある。したがって、「開腹手術が数度の内視鏡治療に対して安い」と本当にいえるかどうか疑問である。また、そもそも、術後に思うようにおいしいご飯を食べられなくなるのは、それを克服する内視鏡治療がある現状を考慮したとき、「開腹手術が病気をほんとうに治したかどうか?」の疑問もある。審査担当の先生方は不当な保険診療とレッテルを張る前に、このあたりの事情をよくよく考慮していただきたい。

西川公也先生 農林水産大臣就任おめでとうございます。

 いろいろとご指導していただいている西川公也先生が、9月3日の内閣改造で、念願の農林水産大臣にご就任なさった。ご就任本当におめでとうございます。
 一週間前の8月27日には、TPPの仕事があって大臣にはなれないとおっしゃっていたが、人事は下駄をはくまでわからないもののようだ。就任2週目にしてやっと10分、時間を取っていただき、後援会の幹部3人と一緒に、大臣室でお会してお祝を述べることができた。きょうも夜の11時まで予定がびっしりで、近く有明湾のギロチンの問題で九州に飛ぶとのこと。この難しい問題の解決策もすらすらと述べておられた。
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ピロリ菌の感染ルートは?

9月3日に市村正親さんの胃がん手術からの復帰会見をうけて、胃がんの予防についてテレビで説明してきましたのは前にも述べたとおりです。その後、見逃してしまったという声が寄せられましたので、先週して非公開の形でyoutubeにアップしました。これまで3000例を越える症例をピロリ菌退治してきましたが、とくに感染ルートについては、なるほどといえる目新しいものです。是非ご覧ください。 http://youtu.be/HCiwBPvDynM 

今日は敬老の日

本日は敬老の日です。常日頃、医師としてご老人の健康管理に努力しているので、私にとっては毎日が敬老の日みたいなものですが、休みをいただいたので一言申し述べたいと思います。「国際的には長寿を実現している日本です。しかし、個別にみると若くして癌で死んだり、身体が不自由になるようなかわいそうな方々も多数いらっしゃいます。医学はこの30年かなり向上しました。癌予防のテクニックも向上しています。あとは、政治が動けば癌の発生数は半減するでしょう。今年、癌になる人は86万人、癌でお亡くなりになる方は36万人と予想されています。癌の治療には毎年10数兆円の費用がかかっています。若い人には比較的縁遠くても、老人にとっては癌は身近な問題です。増大する社会保障費については宮崎謙介先生のおっしゃる通りです。ですから、政治が動いて、医学の成果を社会に還元して癌を減らすことは、国民の福祉の向上には勿論、社会保障費減額のためにも大切ではないでしょうか!」

テレ朝のワイドスクランブルに出演。市村正親さんの胃がんからの復帰会見をうけて、胃がんの予防策について語る。

 今年の日本では、年間13万ないし14万人くらいが胃がんに罹患して、約5万ないし5万5千人が胃がんでお亡くなりになっている。昨日6月3日、有名な俳優、市村正親さん65(篠原涼子さん41のご主人)が胃がん手術からの復帰会見にあたり、胃がんの予防について、話をしてほしいということで、テレ朝のワイドスクランブル(生番組)で胃がん予防の説明をしてきた。キャスタは橋本大二郎さんと局アナの大下さん、秦さん、川村さん。
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 ポイントは、胃がんの原因はピロリ菌であり、ピロリ菌に感染している人は、人生で約12%の確率で胃がんが発生、ピロリ菌に感染していない、もしくは感染したこともない人は、胃がんがほとんど発生しない(0.5%未満)。したがって、ピロリ菌に感染しないことが胃がん予防の決め手。日本人のピロリ菌罹患率は、大まかに言って、(年齢-10)%。
 また、ピロリ菌に感染している人も、ピロリ菌を退治すると、退治して3年後から、胃がんの発生率が、5分の1にへります。ちなみに、お酒を飲んでいるきは3分の1、飲まない時は、10分の1くらいです。ピロリ菌を退治することが、一昨年から健康保険で認められました。
 ピロリ菌は、便の中に出てくると、コッコイド型という形に変形して、半永久的にじっとしています。つまり、種のような状態です。これが胃の中に入ると、再び、ヘリコプターのような形の栄養型に変わって、増殖します。ですから、間違えて、土を口に入れないようにすることが、感染予防のポイントです。
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 感染しているかどうかは、呼気や便、血液検査など胃いろんな方法でわかりますが、内視鏡検査をしてピロリ菌が引き起こす慢性胃炎の程度も判定すれば、保険でピロリ菌退治ができる制度となっています。
 ピロリ菌がご心配な方は、最寄りの内視鏡の上手な消化器内科にご相談ください。もちろん、当院でも対応できます。ご予約は03-3714-0422まで。
 
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