2013年10月
ベルリンは東京の晩秋から初冬という季節で、かなり寒く、黄色い紅葉が美しかった。また、ブランデンブルグ門には、11:30と夜遅くまで、プロジュエクトマッピングの動画が映し出されて多くの人々が鑑賞していた。
私は、1998年以来、毎年この大会に参加している。内視鏡の分野では、拡大内視鏡によるピット診断が一世を風靡し、その後、NBI、DBE、ESD、NOTES と時代の進歩が続いている。今回はどんな新しいものが発表されるのか大変楽しみにして参加した。
ここ数年の趨勢どおりに日本勢はESDとNBI拡大観察診断を中心に大活躍していたが、ESDがらみの発表は、各国から高度なレベルの内容が発表されていて、一部のヨーロッパ諸国と中国と韓国にはESDが完全に根付いているようだ。ESDは確実に世界に広がりつつある。
ところで、私がとくに興味を持って見ていたのは、内視鏡的縫合術関係であったが、数年前のOver Tube clipに引き続いて、いくつかの縫合用のプロトタイプの装置が発表されていた。これらの装置が、今後、どう展開していくか興味深いところだ。いくつのも縫合装置が提案されては、廃れていった、この十年の歴史を考えると、実際に、実臨床に役立つところまでたどり着くか、大変興味深いところだ。
1999年に私が世界で初めて発表したクリップによる縫合技術は、いまや当たり前のこととして、世界中の臨床に用いられていた。
猪瀬知事は、都営地下鉄と営団地下鉄が合体すべきだといっている。
研修バスの中でこれが議論になった。都の担当ブレイン職員に対して、片山さつき先生が質問。
1.会計面での折り合いがつかない点(都営地下鉄は9000億円の借金、ただし経営は赤字から黒字に転じて約700億円の黒字)、
2.災害に対する備えが都営地下鉄は遅れている(進度の深いところを走っているので水没しやすい?)、
3.公務員の人事の問題点(都営地下鉄の職員は地方公務員で強制的には退職して民間に移らせることはできない)
以上より、今「合体」ではなく、強靭化でしょうと意見を展開。
都職員は2についてまったく想定外であったらしく、答えにならない受け答えをしていた。
利用者にとっては、一体の料金体系で乗り換えても価格が増えないようにしてもらえば、それでいいのであるから、何にも一体化しなくても、料金が合理的なものになってくれれば、それで十分だ。それは、ソフト面を工夫することで達成可能ではあるまいか。
東京地下鉄というものを、2社で管理運営して、総収入を2社の持つ各線ごとの利用客数で案分するとか、というのはどうであろうか。
昨日は朝早くから、夕刻まで、学会を休んで、議員さんたちに同行して、東京視察研修に出かけた。
よく知らなかったのであるが、2020のオリンピックは、1964東京オリンピックの国立競技場をつぶして、その上にできる予定。名前は、国立霞ヶ丘競技場という。JSCの河野理事長が国立競技場を案内してくれた。なんか、昔の伝説の舞台をつぶすのは、少し悲しい、規模も北京の鳥巣に及ばない小規模なものだし、なんとかならないものなのだろうか?
たとえば、東京湾を新たに埋め立ててるとか、夢の島公園あたりに、どでかく建てるとか・・・・。会場を入れ替えるとか・・・・。
ついで、有明地区を視察。有明テニスの森や有明アリーナ、夢の島競技場を視察。
夢の島公園を歩いたのであるが、ちょうど日差しが強く、10月というのに汗だく。オリンピックは7月24日という真夏のど真ん中での開催。40度の炎天下で、みんな、ここを歩くのか?このままでは熱中症で倒れる人が続出するであろう。
東京都の職員に「なんとかもっといい季節にならないの?」と尋ねたところ、「他の競技会とかの兼ね合いで、IOCがこの時期を指定しているのです・・・・・・。」ならば、運用上暑さがしのげるように工夫が必要だろう。
1)C型肝炎治療の進歩
肝臓の分野では、C型肝炎の経口治療薬がトピックだった。これまで、C型肝炎の治療は、インターフェロンの注射を中心としたものであったが、エイズの治療薬の応用で開発された経口薬で、C型肝炎は9割がた治るという。エイズのウィルスはRNAウィルスで、この特効薬を血眼で開発しているうちに、同じRNAウイルスであるC型肝炎ウィルスも治る薬(シメピレビル(ソブリアート)NS3/4Aセリンプロテアーゼ阻害剤)が開発されたのである。
11月から、保険収載されるようだ。インターフェロン投与は、微熱や鬱状態をもたらすといった精神作用などが高頻度にあって、患者には結構大変な治療法であったが、講演によると、経口薬はそういった重篤な副作用はなく、治療効果も高く、これまで治りにくかった1b型にもよく効くという話だった。
2)膵臓がんの早期発見
膵臓がんは、年間死亡者数が約3.2万人に達している。ほとんどが進行状態で発見されるのであるが、中には早期で発見される場合もある。早期発見はどのような症例なのか?ポスター会場のいくつかの発表を見ていたが、ポイントは、「膵管拡張の発見」と「ステントを利用した膵液採取による細胞診」だった。すなわち、MRCPや腹部エコーで「膵管の拡張」を認めて、膵管ステントを挿入し膵液採取をして、細胞診をし癌を発見する。
この方法は、今後広まる可能性が高い。感受性、特異性の評価が今後の課題であろう。
ところで、膵臓がんの遺伝子発癌経路は詳しく解明されていて、大腸がんのK-ras変異陽性タイプとよく似ている。K-ras変異陽性タイプの大腸腫瘍は、COX2阻害剤で、発生が減るので、COX2阻害剤は、膵臓がんの進展にも効くと予想されている。
将棋に例えると、奥野先生は、他者と共同でいいと考えた新戦法を使ったものの、負けて、感想戦で、次は負けないぞと、頑張っている感じ。間野先生は、自ら編み出した新戦法で局地戦(ALKOMAは癌全体の3~5%)に大勝利を得て、柳の下の2匹目のドジョウをめざして同じ戦法で、次なる局地戦の準備を進めているといったところ。中村先生は、同じく独自の新戦法をアメリカで作り上げて、今まさに対局が始まってるところ。
さて、展示場を歩いていると、これまた、同期生の北山丈二先生とばったり。彼の研究は「がん性腹膜炎に対して、旧来の抗がん剤をちょっと工夫して投与すると、がん性腹膜炎がほぼ消える。」というもの。この勝ち続ける旧戦法改良版、抗がん剤が特許切れで、製薬会社の後押しがなく、社会的に苦戦しているとのこと。
新戦法であろうと、旧戦法であろうと、「勝つ戦法」を社会的に評価する仕組みが、日本人のために必要だろう。