西暦2012年4月18日から、第98回日本消化器病学会総会が東京新宿京王ホテルで開催されている。会長は自治医大消化器病内科教授 菅野健太郎先生。 菅野先生は同じ岡山県出身、岡山朝日から東大の理科3類に入学した。先生が駒場の助教授時代には、随分と大腸内視鏡の症例を送っていただいた。現在、菅野健太郎先生は、消化器病学会の日本消化器病学会の理事長でもある。理事長で学会長も兼ねるとはあまりないことだ。理事長になる前に、前理事長の跡見先生から学会長を頼まれていたので、このような変則的なことになったのであるが、菅野先生自身「自分としては、いたしかたないと思うが、少し不本意な面もある」とおっしゃっていた。人生成り行きだからこんなこともあろう。


 さて、今回の学会のテーマはトランスサイエンス。このテーマは理事長・学会長人事と違って、菅野先生が主体的に選んだものである。トランスサイエンスとは、「科学的真実を市民の前に提示して、開かれた対話の中で、科学者と市民が共同して、最善の政策決定をして、健全な社会を維持していくというあり方」を意味しているそうだ。昨年2011年3月11日の大震災と、続く2011年3月15日の広島原爆5個分の放射能がもれた福島原発第3原子炉の爆発事故、その後引き続く避難と、環境汚染、食物汚染・・・・・。正に時期を得たテーマであった。


 会長が招待したのは、100年前に死んだ田中正造先生と原田正純先生、そして、Tadatake Yamada先生と。田中正造先生は、100回忌ということで、菅野健太郎先生に呼び出され、スクリーンに現れて、私たちを睨んでいた。田中正造先生は、三井栃木県足尾銅山鉱毒による谷中村の破壊を文明の凶器と言って、民を救うために一生をささげた。一方、原田先生は、チッソによる熊本県の不知火湾の水銀汚染によって引き起こされた、今も続いていいる水俣病をめぐる政府や学者、人々の行動、これを「水俣学」として著書を現わした先生である。お二人とも、政府(官吏)と企業とお抱え科学者が結託して、弱者を苦しめる社会の有様を看破して糾弾した。


 一方、Tadatake Yamada先生は菅野健太郎先生のミシガン留学時のメンター(=お師匠)、今はビルゲーツ財団の理事長である。講演の中で、世界一のリッチマンであるビルゲーツの悩みは、社会的貧困であるという。 あのビルゲーツが社会主義??と一瞬驚きそうになったが、数秒後「薬を買う少しのお金もない貧困が全世界にあふれていることが自分の存在を脅かすと認識している 。たとえば、SARSは中国の農村で見つかって、すぐに、香港、インドネシア、オーストラリア、カナダとへと感染拡大した。貧乏人の病気が金持ちにも感染したことがビルゲーツにとって衝撃的だった。」と聞いて、やっぱり、ビルゲーツはカトリック的スーパー自己中心主義者と認識。マイクロソフトの商売の仕方からの印象と一致。ポリオを全世界からなくすことや、マラリアを予防することが、目前の課題という。 マラリア予防のアイデアを募集して、山田さんTadatake Yamada先生は、100個の一見くだらないアイデアにも、1個ぐらいはあたりがあるという。


 また、ビルゲーツが富を注いでも治したいという病気として、膵癌、IBDを、講演の中で3-4回繰り返していた。アップルの社長が膵がんで死んだので、ビルゲーツも、きっと膵癌を随分と気にしているのだろう。また、身近な親戚にIBD 患者がいるのだろう。カトリック的であろうと、社会主義的であろうと、困っている人を助けようとする気持ちには、貴いものがあり、共感を感じる。ちなみに日本でも膵臓癌死亡者数は、近年漸増し約3.2万人、肝臓癌を抜いて、消化器領域の死亡者数第3位に躍り出ている。


 菅野先生の理事長講演 は圧巻であった。理事長講演は竹本忠良先生が後進に道を譲ってからというもの、結構、藤原先生の講演をはじめ、熱い講演が多いのであるが、内容の激しさでは菅野先生が群を抜いていた。菅野先生の語り口はクールなのであるが、内容は極めて激しかった。昨年の福島第一原発事故 による放射性セシウム、 有機水銀、ダイオキシン、の健康被害に始まり、最後は、たばこ、お酒の発癌促進という研究結果まで話が及び、これらを「トランスサイエンス」しなさいとクールに厳しく訴えたのである。

 「トラサイ」党が立ち上がるかもしれない。


中央がTadatake Yamada先生、右端が菅野健太郎教授

 

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