たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2009年01月

アルコールと食道癌 柿沢弘治さん 食道癌で死去 <食道癌は拡大内視鏡で確実に予防できるのに残念!>

  <訃報>柿沢弘治さん75歳=元外相
1月27日17時16分配信 毎日新聞「元衆院議員で、羽田内閣の外相を務めた柿沢弘治(かきざわ・こうじ)さんが27日、食道がんのため東京都内の病院で死去した。75歳。」 

 

 我々の世代には、有名な政治家であった柿沢さんがお亡くなりになった。ご冥福をお祈りします。

 

 日々、食道癌を拡大内視鏡検査で予防しているだけに、惜しいと思う。内視鏡の開発が進み、最近では、拡大内視鏡を用いると、食道癌が初期から確実に診断できるようになっている。癌によるIPCLの特徴的な拡張像が拡大内視鏡で観察できるようになったからだ。

 

 食道癌が心配な方々には、しかるべきレベルの先生に拡大内視鏡で食道をきちんと見てもらうことをお勧めします。

 

 ところで、食道癌の危険因子は、私が学生のころ、「アルコール、たばこ、50歳以上、男性」といわれていた。最近では、女性も酒を飲む時代になり、酒のみの女性の食道癌も結構見かける。また、近年の研究で、「アルデヒド脱水素酵素の活性が低い人が、アルコールを飲むと、食道癌になりやすい」こともわかってきた。つまり、元々、酒に弱い人が無理して酒を飲んでいると、食道癌になりやすいわけだ。

 

 私のクリニックを訪れた食道癌の人たちは、たしかに、ほとんどが酒好きであった。接待にかこつけては飲む商社マン、閉店と同時にワインを1本あけるレストランの経営者、打ち合わせと称して酒をあびる放送業界マン、対官僚・対政治家接待が好きな仕事だった社長さん、ストレスを酒で紛らす弁護士さん、その他、元来の酒好き、酒びたり・・・・・。

 

 ちなみに、大腸にとってもアルコールはあまりいい影響はない。大腸ポリープや大腸癌もアルコールで出やすくなる。

 アルコールで膵炎も悪化するし、膵臓がんも出やすくなる。

 C型慢性肝炎もアルコールで肝硬変になるまでの期間が短縮して、原発性肝臓癌が出やすくなる。

 ピロリ菌退治による胃癌発生の減少効果も、アルコールで弱まる。(アルコールを飲まない群では10分の1程度と好成績であるが、アルコールを飲む群では3分の1程度しかない。)

 

 酒文化は人生を豊かにしてくれるが、短くもしてくれる。上手なお付き合いが必要だろう。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集

医療と社会経済   

  治す方法がわかっていても、その方法を購入する財力がなければ、病気を治すことはできない。財力に見合う治療法しか、選択できない。この事実を回避したいのであれば、知恵を絞ることも大切であるが、基本的には、医療の進歩を上回る経済力を持たなければならない。これは、自由診療では勿論のこと、ともに助けあう社会主義的な保険医療でも、同じである。


 昨年2008年秋、アメリカ発の金融危機が日本に襲来した。日本の財力の約33%が、この金融危機で消滅した。多くの資産が消滅した日本経済には、今や暗雲が立ち込めている。この危機をチャンスに変えて、生き抜くには何が必要なのだろうか?洞察力、 技術力、行動力、独創力、組織力、知識力、知力、努力、・・・・・、健康、・・・・、運。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集

厚生労働省が作成した不完全な傷病名マスターファイル   認知されていない「多発性大腸ポリープ」と「A型胃炎」 

  レセプト電算義務化を控えて、傷病名マスターファイルが2006年に社会保険庁のホームページから配布されている。約2万1千個強にも及ぶ傷病名がコード化されている。それだけあれば、すべての病名が網羅されているように思うが、そうではなかった。


 なぜか、糖尿については、えらい細かい。なんと194個にも細分化されて、コード化されている。これを決めた人はきっと糖尿病の専門家に違いない。


 ところが、私の専門である消化器病名は、いたって手薄である。まず、「多発性大腸ポリープ」という傷病名がない。大腸ポリープと大腸ポリポージスはある。大腸ポリープといえば、学問的には、普通、ポリープが一個だけあったことを意味する。大腸ポリポージスといえば、学問的には100個以上のポリープがあることと定義されている。大腸ポリープが2個から99個までの状態については、「多発性大腸ポリープ」と呼ぶのであるが、その傷病名コードがない。ほんとうにびっくりした。


 また、A型胃炎という傷病名もない。A型胃炎とは、胃の細胞に対する自己抗体ができて、胃に炎症が起こる自己免疫性胃炎のことであるが、これがない。また、それに相当する自己免疫性胃炎という傷病名コードもない。ちなみに、B型胃炎とは、自己抗体のない胃炎を指し、現実には、ピロリ菌による胃炎のことだ。さすがに、「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」というコードはあった。ただ、学問的には「ヘリコバクター・ピロリ胃炎」という用語よりも、「ヘリコバクター・ピロリ起因性胃炎;Helicobactor pylori induced gastritis」という用語が一般的だ。「ピロリ胃炎」、わからなくはないが、しろうとっぽい。


 そういえば、厚生労働省に多くの技官を送り込んでいる某K大学医学部を受診したことがある患者さんが変なことをいっていた。「先生は私のこと「A型胃炎」っていっていたけど、某K大でそのことを話したら、そんな病気なんて聴いたことないと言われました。いったいどういうことなんですか?!・・・・・・」


 ・・・・・・・「いったいどういうことなんですか?!」とは私のせりふだ。ルールを作成するお役人には、しっかりとした医学的知識がある人になってもらいたいものだ。

 

クリニックの案内・地図(ポリープ切除付)無痛内視鏡消化管ドック田渕正文院長の履歴

田淵正文院長の業績消化器疾患について超音波による前立腺がん治療:HIFU | E-mail |

中目黒消化器クリニックの第2ホームページ| 職員募集

アーカイブ
カテゴリー
  • ライブドアブログ