たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2008年12月

今年の感想 

 個人的には、いろいろと大変で残念な事が続いたが、家族全員が大きな病気にかかることもなく生き延びたのは何よりで、天に感謝している。


 クリニックには、毎年のこととはいえ、手遅れ気味の大腸がん患者が数名見つかり、大腸がん予防の啓蒙活動の社会的不足に嘆く。また、慢性胃炎のピロリ菌退治や、抗がん剤、各種治療や診断の制限などなど、社会保険診療枠の後退が悪影響をもたらした数々の患者を目の当たりにして、医師として、人間として、憤りと諦めを感じる日々であった。

 

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不老不死の方法について(1)  テロメラーゼ?

  中国の古代、今から2238年前、中国を武力によって統一した秦王政(始皇帝)は、不老不死の妙薬を求めていた。全国巡幸して、斉の国(今の青島あたり)を訪れた際、徐福に命じて、東方にある蓬莱の国に、不老不死の薬を求めさせた。蓬莱の国とは、私たちの生きる国、日本であったらしい。 もとより、不老不死の薬などなく、徐福は片道のミッションであったらしい。


 さて、現代医学をして、不老不死は可能であろうか?人は個体として必ず死んできた。しかし、細胞は連綿として生き残ってきた。細胞は減数分裂して生殖細胞となり、他者と遺伝子シャッフル して、次世代につながっていく。つまり、細胞レベルでは途中、生殖細胞という変態をするが、人の細胞は不老不死なのである。理論的には、不老不死は可能 かも知れないのである。


 老化の研究は進んでいる。一般に、細胞には寿命がある。培養していると、何回か分裂したのち、自然に消滅する。この自然消滅のメカニズムが研究された。よく知られているのは、DNAの螺旋構造を維持するテロメアである。 テロメアはDNAの端にあって、こよりの役を果たす。このテロメアは、細胞分裂するたびに短くなる。そして、一定の長さ以下になると、こよりの役を果たせなくなり、DNAはアンワインディングして 酵素に消化されて、細胞は消滅するらしい。


 一方、試験管の中ではがん細胞は、永遠の生命を持つものもある。これらの細胞では、このテロメアを伸ばす酵素、テロメラーゼが働いていた。 テロメラーゼを誘導するか、テロメラーゼをそとから補うこと、これが、不老不死の必要条件であろう。ちなみに、テロメラーゼ関連の薬は、いろいろと開発されているらしい。ただし、その働きを抑えて、癌を治すというタイプの薬のほうが多いようだが・・・。

 

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不老不死の方法について(2)   ES細胞? iPS細胞?

 細胞から核をとり出して、核を抜いた卵細胞に入れて、子宮に戻して発育に成功したものが、コピー動物(クローン)である。しかし、現在まで、家畜レベルで成功したクローン生物を見ていると、寿命は、一般の生物に比べて短いらしい。クローンの考えかたは、不老不死に似ているようだが、不老不死とはつながらないものである。しかし、なぜ、一般細胞が生殖幹細胞に変われたのか?  「卵細胞の細胞質に含まれる何らかの因子が作用した。」

 そう考えて、因子を選んで、その再現実験が繰り返された。その一つの答えが、有名な山中教授のiPS細胞である。iPS細胞は、個体(ねずみ)に戻すと、奇形腫という腫瘍を作るそうだ。ということは、iPS細胞は生殖幹細胞に近くて、いい線を行っているのだが、不完全な幹細胞なのであろう。いまのところ、iPS細胞は、不老不死とはつながらないのであるが、完全な自己の幼若幹細胞を作ることに成功すれば、その細胞を点滴して、自然に死滅していく細胞を補って、個体としての不老不死が完成する可能性はある。

 

 とすれば、幼いころの、幼若な自己の幹細胞を凍結保存しておき、年取ってから、点滴して入れれば、個体としては、不老を保つことができる可能性は高い。古くなった元々の細胞から癌が出てくる可能性が高いので、不死とは行かないだろうが、不老は可能だろう。しかし、若いころはもう過ぎ去ってしまい、自己の幼若な幹細胞は、この世にはない。

 

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不老不死の方法について(3)  臍帯幹細胞?

 ただし、他人のであれば、利用できる幼若な幹細胞はある。利用しやすいところでいえば、たとえば、臍帯の幹細胞である。臍帯はもともと捨ててしまうものである。白血球の型と赤血球の型が一致すれば、他人の幼若な細胞が、自然消滅した部分を補う可能性は高い。つまり、不老の可能性があるのである。


 以上の考え方から、広い世界の中には、既に研究をはじめているグループがある。彼らの報告によると、臍帯幹細胞は不老ばかりでなく、糖尿病、透析直前の腎不全、劇症肝炎、パーキンソン病、アルツハイマー病などにも有効例があるとのことだ。臍帯幹細胞投与は、以前から、白血病や先天性代謝疾患に、行われている。安全性については、多くの研究 ・臨床経験があり、利用しやすい。


 知り合いの中国の教授たちが臍帯幹細胞投与と各種疾患についての研究をしており、この治療法にご興味をお持ちのかたは、ご連絡ください。

 

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核も見える拡大内視鏡診断は、「内視鏡的病理学」  

  拡大内視鏡のレベルは、さまざまな技術革新にともなって益々進んでいる。20年前に臨床で使える電子拡大内視鏡をフジノンと協力して世界で始めて開発してから、内視鏡的に対象の病理や生理を探求し続けてきた。拡大内視鏡で核が観察できる時代になり、内視鏡的診断学は、内視鏡的病理学というべき領域まで、進展している。食道と大腸では、色素を撒いたりしての手間を少しかければ、病理診断に用いる解像度と同等の画像情報を得ることができる。従来の病理学とは観察する角度が違うので、病変が表層に出ていれば、拡大内視鏡的診断が、旧来の病理学を凌ぐ。内視鏡的病理学という言葉を新たに提唱できる時代となった。

 

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増える癌による死亡。 大腸腺腫(大腸ポリープ)は全身の癌の前兆。

  名古屋でに開かれた秋の癌学会で、最近の癌死亡者の動向が、発表されていた。内容は、全死亡に占めるがん死亡者数が、40%に近づいているというものであった。3-4年前は33%といっていたから、その急増ぶりは、予想されたものとはいえ、少し驚いた。


 今から、20年前、フジノンと協力して、世界で初めて臨床に使える電子拡大内視鏡を開発して、片っ端から、精密に大腸内視鏡をおこなって、7割の人に大腸腺腫を認め、その多さに驚き、なぜだろうと考えた。すべての大腸内視鏡検査を、電子拡大内視鏡で行い、すべてのポリープを切除するという方針を貫き、きちんとしたデータを集め続けて、大腸腺腫と癌(大腸に限らず全身の癌)との間に大きな関係があるのに気がついた。癌患者には97%以上の確率で、大腸腺腫が存在していたのである。また、70歳になっても大腸腺腫が出ない人は約3割いて、その人たちの既往歴に「がん」が存在する確率は1%以下であった。(つまり、日本人の3割は癌体質でない。)


 日本人の7割は、大腸腺腫をもつ、あるいは、持つ可能性のある癌体質の人たちである。たんぱく摂取量の改善、高血圧や高脂血症に対する効果的な薬が開発されて、脳血管障害による死亡が激減してきたため、「癌」で死ぬようになってきたのであろう。

 日本人の4割が癌で死ぬ。7割の人に大腸腫瘍が見つかっても何の不思議もなかったのである。大腸腺腫は単にそれが前がん病変というだけでなく、全身のどこかに癌がでる、癌体質のマーカーでもあったのである。小さな大腸腺腫を探り当てることは、単に、大腸がんの予防に効果あるだけでなく、患者の「癌体質」を見抜く鍵でもあるのだ。


 癌に対する治療の進歩や、予防策の進展、他の疾患の治療・予防策の進歩の状況にもよるが、今後、全死亡に占めるがん死亡は50%ぐらいまで増えるかもしれないが、それ以上は増えないのではないかと予想している。

 

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たばこ税の増税見送りは、日本の恥!。 見送りを決めた政党人は、肺癌や心筋梗塞で死に向かう人々の苦しみを知るべきだ。 

 医療崩壊の日本のなかで、タバコ税を増やして、社会医療費に充てるという政策が示された。やっと、「日本の健康政策も国際水準に追いつくのかな」と、光明を見る思いで、期待した。ところが、「増税すると売り上げが減って、増税しても、税金の総額が増えない。」という理由で、結局、この政策は見送りとなった。テレビでは、とある自民党のお偉方<M>がしたり顔に、税のからくりを解説していた。


 タバコは、もともと、肺癌・食道癌・心筋梗塞・肺気腫の原因になるなど、健康によくない。止めるだけでも、将来、病気に苦しむ人々が減って助かる。この間も、ヘビースモーカーのおばさんに、肺癌が見つかって手術をした。患者や家族の苦しみ・悩みは、大変なものである。

 せっかく、一石二鳥の理屈に合った政策が出てきたのに、やる前から止めるのは、残念でならない。タバコ好きの患者を数多く診てきたが、タバコ好きは、値段が少々高くなっても、将来死ぬといわれても、まずタバコを止めない。

 

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