たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2006年08月

内視鏡的噴門部形成術に成功

 昨年から、オリジナルに開発した、針糸を使わない、内視鏡的噴門部形成術に、また一例成功した。難治性の逆流性食道炎で、PPIとH2ブロッカーを同時投与しても治らなかった患者に、この内視鏡的噴門部形成術を用いたところ、噴門部(胃の入り口、食道と胃の境目)が細くなり、食道の慢性難治性潰瘍がきれいに消失した。難治性の逆流性食道炎にお悩みの方は、ご相談ください。詳細は2005/07/24の項へ、こちらをクリック。

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手術前炎症の内視鏡像:
PPI(プロトンポンプ阻害剤)とか飲んでいたが治らないの図。






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内視鏡的噴門部形成術後の内視鏡像:
縦走する潰瘍が消失しているの図

王貞治監督、 慶応大学病院を退院する

 王監督の病状は、胃上部の前壁に、約5cm大の癌があり、腹腔鏡手術をしたところ、リンパ節転移が1つ認められたと報道された。医療関係の報道はプライバシーのため、ときにゆがむので、報道が正しいかどうかは不明だが、この報道は専門家にとって、いくつかの疑問が残るものであった。胃体部上部前壁の癌で5cmといえば、普通は進行癌である。つまり、癌は筋肉層以下に浸潤していて、転移のリスクの高い状態である。術前にリンパ節転移を確実に診断する方法がないので、術中に触診しながら、リンパ節の切除範囲の広さをきめるものであるのだが、腹腔鏡手術では、リンパ節の触診ができないので、はじめから、根治を目指していなかったのかといぶかしく思うのだ。つまり、もしかして、完治不能な状態なので、胃癌からの癌性出血のコントロールのために、胃を腹腔鏡的に切除して、過大な侵襲を避けたのかもしれない。


 今日の会見で、王監督はずいぶんとやせていた。もともとソクラテスのような深刻な顔が、さらにソクラテスになっていた。8-9kg体重が減ったという。糖尿病でもあるのだろうか?もしなければ、どんな栄養管理だったのだろうか?ちょっと心配になってきた。 報道によると奥さんは胃癌でお亡くなりになったとのこと。最近の研究で、ピロリ菌はいろんな種類があり、その発癌因子CAG-Aの遺伝子解析結果から、菌ごとに、発癌の強さの違いがあることがわかってきている。奥さんと同じものを食べていた王監督が、発癌因子が同じピロリ菌を持っていた可能性は高い。 王家のピロリ菌は、超悪玉であろう。子供さんたちもハイリスクであり、もし、まだ、ピロリ菌チェックをしていないのなら、早くして、ピロリ菌がいたら、除菌すべきである。


 ご家族が胃癌になった人は、がん予防のため、ピロリ菌をぜひ退治してください。ピロリ菌について詳細はこちらをクリック

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