たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2006年07月

王監督、胃癌になる

 王監督といえば、世界のホームラン王で、私が小学・中学・高校のころにちょうど大活躍していた。私は当時、大の巨人ファンであった。王が打席に立つとホームランの期待でわくわくしていたし、4回に1回はその期待に応えてくれていた。今回、王監督が胃癌になって、慶応病院で腹腔鏡手術を受けることになったという。毎年、検診を受けていて、癌が見つかったということだそうだ。してみると、おそらく、早期がんであろう。腹腔鏡手術をうけずとも、内視鏡でなおりそうなものであるが、腹腔鏡手術をするということは、sm以下に浸潤しているのであろうか。sm癌であれば、大まかに10中8-9助かるが、手術には成功してぜひ助かってもらいたいものだ。ところで、王さんは胃癌予防のために、ピロリ菌退治していたのであろうか?

内視鏡検診、大腸ポリープ切除の大腸癌予防の威力 

 進行大腸癌になった人は、ほとんど内視鏡による大腸検診を受けていない。先月の2例もそうだった。そして、おぞましい病名を告げられると、決まってこう言う。「どうして私が進行大腸癌なの?なにか悪いことした?」 「いえいえ、悪いことをしたわけではありません。「いいこと」をしなかったのです。「いいこと」とは無症状のうちの内視鏡検診です。」 


 ある保険組合から、53歳以上の社員全員の内視鏡検診と完全ポリープ切除を依頼されたことがある。1980年代後半、その会社の人徳の取締役が大腸癌で死に、社員一同大いにあわてた。大腸癌を完全にブロックしたいと思った役員たちは、社員全員の大腸ポリープの切除を、私に依頼してきた。私は合計630名あまりを約3年にわたり、社員全員の内視鏡を行い、すべてのポリープ(陥凹型腫瘍を含む)を完璧に切除した。病理検査の結果、腺腫以上の腫瘍性病変が432名に見つかり、癌は46名に見つかった。進行癌は2例であった。その後、腫瘍の個数や異型度に応じて、定期的な内視鏡検査とポリープ切除を丁寧に繰り返した。癌があったりや腫瘍の多かった人は年に1-2回、腫瘍の少ない人は1.5年に1回ぐらい、腫瘍のない人は3年に一回の 間隔で繰り返しおこなった。それを、約十年間続けた。その結果、その保険組合では、それまで平均して毎年2例ずつ大腸癌で死亡していたが、この検診を始めてからは、大腸癌で死ぬ人は0となった。当初の目的が達成できたのである。この功績で、保険組合の理事長は、大腸癌を克服した組合の指導者として、朝日新聞に取り上げられた。理事長 は自分の写真の大きく載った朝日新聞を私に見せながら、「先生ありがとうございました。」と大変な喜びようであった。


 内視鏡検診と大腸ポリープ切除は、大腸癌予防に大変な威力がある。大腸癌になりたくない人は、実績がある当院の内視鏡による大腸検診・大腸ポリープ切除を、癌による症状が出る前にお受けください。大腸癌を克服したい保険組合の方も、どうぞご相談ください。

PET検診に疑問符、癌の85%を見落とし?!・・・がんセンター調

 時々、PET検診について質問を受けることがある。「ペット検診って癌がすべて見つかる理想の方法なので、内視鏡検診をやめてPETだけでいいですか?」と。少し古くなるが、2006年3月3日の読売新聞の健康欄に上記のような見出しが躍った。記事の一部を下に記載する。結論は、PETは消化管の癌の発見には不十分であるということである。コマーシャリズムの嘘に騙されないようにしてください。

 

 早期発見 切り札のはずが……


 国立がんセンター(東京)の内部調査で、画像検査PET(ペット、陽電子放射断層撮影)によるがん検診では85%のがんが見落とされていたことが分かった。PET検診は「全身の小さながんが一度に発見できる、がん検診の切り札」と期待され、急速に広がっているが、効果に疑問符がついた形だ。


 PETは、放射性物質が含まれた薬剤を注射し、がんに集まる放射線を検出してがんを発見する装置。同センター内に設置された「がん予防・検診研究センター」では、2004年2月から1年間に、約3000人が超音波、CT、血液などの検査に加えPET検査を受け、150人にがんが見つかった。ところが、この150人のうち、PETでがんがあると判定された人は23人(15%)しかいなかった。残りの85%は超音波、CT、内視鏡など他の方法でがんが発見されており、PETでは検出できなかった。


 がんの種類別では、大腸がんが見つかった32人のうち、PETでもがんと判定された人は4人(13%)。胃がんでは22人中1人(4%)だった。PETによる発見率が比較的高いとされる肺がんでも28人中6人(21%)、甲状腺がんで11人中4人(36%)にとどまった。PETは1994年ごろから使われ始め、現在は100近くの医療機関が導入、多くでがん検診にも使われている。がん検診には保険がきかないため、10~20万円程度の費用がかかる。日本核医学会の調査では、2004年9月の1か月間だけで4600人が受診した。PET検診と温泉ツアーなどをセットにした旅行企画も売り出されている。


 国立がんセンターの村松幸男検診部長は「PETでは『小さながんを見つけやすい』と言われてきたが、早期がんでは他の検査に比べ検出率が低かった。PET検診の意義は小さいのではないか」と話している。民間医療機関のがん検診では、がんのうちPETで検出されたのは64%、48%などのデータがある。国立がんセンターの超音波、CTなどを併用した検診では、がん発見率は一般の医療機関に比べ高いため、相対的にPETでの発見率が低下した可能性がある。


 PET(Positron Emission Tomography) がん細胞が糖分を多量に消費する特性を利用し、放射性物質と糖を含んだ薬剤を注射して放射線を検出し、がんを映し出す画像診断装置。全身を一度に撮影し、他の画像装置では発見しにくい転移も発見できる。脳卒中や心臓病の検査にも使われる。

2006年3月3日  読売新聞)

 

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