11月に大腸進行癌の患者さんが2例受診してきた。

 はじめの一例は、54才の女性で、保険の外交員として長く付き合いのあった人である。自覚症状はなく、毎年受けている会社の検診で、便潜血反応が陽性となったのがきっかけである。長く付き合っていたにもかかわらず、大腸内視鏡検査は、今回初めてであった。大腸内視鏡検査をしたところ、直腸下部に進行癌が見つかった。「毎年便潜血の検診を受けていて、どうして進行癌なのか?」と質問された。素人から見れば、尤もな疑問である。便潜血反応の感受性は、早期癌で10ないし20%ぐらい、進行癌で70%ぐらいである。進行癌ですら、30%は便潜血反応が陰性になるのである。長廻先生(前
群馬県
立がんセンター長)は、「50歳になったら自覚症状の有無、便潜血の有無にかかわらず、一度はちゃんとした先生に大腸内視鏡検査をしてもらいなさい。」と、いつも講演で述べておられたが、まさにそのとおりの症例であった。彼女が、もし、50歳で内視鏡検査を受けていたなら、癌はポリープか早期がんの状態で、内視鏡的に簡単に切除されていたことであろう。


 次の2例目は、67才女性で、ご主人を直腸癌でなくされた未亡人である。この方は、一年前から「妙におなかが張る」という自覚症状があった。ご本人も自分は大腸癌ではないかと疑っていたのだが、ご主人の大腸内視鏡検査が痛く苦しく、また「生まれてこの方、自分は清く正しく生きてきたのだから、自分には癌などという災厄が訪れないだろう。」という希望的思い込みから、検査を受ける勇気がなかなか湧いてこなかったご様子である。秋口から、おなかの張りがだんだん悪くなって、ご友人から私の大腸内視鏡検査はまったく痛くないと聞いて、ようやく受診なさったようである。大腸内視鏡検査をしたところ、癌は上行結腸にあり、既に大腸を閉塞するまでに増殖していた。


 お二人とも、症状や所見のないうちに、大腸内視鏡専門の先生の大腸内視鏡を受けていれば、進行癌にはならずに済んだことであろう。大腸癌で死にたくない人で、一度も大腸内視鏡検査を受けてないかたは、早く検査を受けるようにお勧めします。とくに、大腸内視鏡検査は痛く辛いものだと思って、大腸内視鏡検査を逃げている方は、私が無痛大腸内視鏡検査をしていますので、どうぞ、連絡してください。
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