10月14日から10月19日まで、ヨーロッパ消化器病週間がデンマークのコペンハーゲンで開かれた。8月28日のトピックで書いたように、最新の拡大内視鏡は7μmの解像度を持ち、核も見える。今回はその内視鏡で見える核のパターンを分類して、その臨床的有用性を検討した講演発表をおこなった。内視鏡診断が、また一歩、組織診断に近づいた。詳細スライドショウ
2005年10月
10月30
10月14日から10月19日まで、コペンハーゲンで開かれたヨーロッパ消化器病週間で、注目された新技術はフジノンの発表したFICEシステム。任意の可視波長を画像化するシステムで、今後の発展が期待できそうだ。また、オリンパスのカプセル内視鏡が日本に先立って、ヨーロッパで販売承認されたようである。全体には、IBD(潰瘍性大腸炎やクローン病)の発表が日本に比べて圧倒的に多く、実際、多くの聴衆が集まっていた。
聴衆は少なかったが、私としては大変注目される発表が、日本からあった。東邦大学消化器内科三木一正教授の発表である。萎縮性胃炎でCAG-A陽性のピロリ菌に感染している人は、萎縮のない胃でピロリ菌に感染していない人の約40倍の胃癌発生率があった。この数字は、C型肝炎から肝硬変になった人の肝臓癌発生危険度に匹敵する値である。C型肝炎ヴィルスなみの感染予防と治療が、CAG-A陽性のピロリ菌にもおこなわれるべきである。厚生労働省の遅い対応が、これまでも、いまも、多くの胃癌患者発生とその死に結びついており、これ以上の対策の遅れは「行政による不作為の殺人」ともいえ、犯罪的ですらある。エイズのミドリ十字のときのように。
スウェーデンのカロリンスカ医科大学は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、オーストラリアのバリー・マーシャル西オーストラリア大教授(54)と、病理専門医ロビン・ウォーレン博士(68)に贈ると発表した。ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生に関与している可能性を1983年に提案したことが22年を経て評価されたものである。その後、世界各地の研究で、ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんとの関係も明らかになってきている。ピロリ菌は地域によって、亜種があり、日本をはじめ、中国東北地区、朝鮮半島になど、東アジアに分布するピロリ菌は、cag-Aという発ガン因子をもつことがわかった。日本でのピロリ菌感染率は、戦前・戦中・戦後混乱期世代(50歳以上)に高く、これが、日本の高い胃癌発生率に結びついている。ピロリ菌の除菌によって、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の慢性化はなくなり、胃癌の発生率も低下する。現在、日本の健康保険制度では、ピロリ菌除菌療法は胃・十二指腸潰瘍 治療にしか適応がなく、胃癌の前段階の慢性胃炎に対しての適応はない。残念なことである。ウォーレン先生らがノーベル賞を受賞なさったのを機に国を挙げて、ピロリ菌退治をし、胃癌患者を減らしたいものである。戦前、結核予防法が策定されたように、胃癌予防法を策定し、慢性胃炎患者のピロリ菌の駆除に行ったらいかがであろうか!ちなみに、当院では、これまで2600例を越えるピロリ菌退治をしてきました。慢性胃炎でピロリ菌除菌をご希望の方は、御来院ください。
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