たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2005年03月

原因不明の腹痛や血便・下痢の原因は小腸にあることが多い

腹痛や血便で来た患者に対しては、上部内視鏡検査(俗に胃カメラ)と大腸内視鏡検査を行うのが一般的です。小腸は検査の難しい臓器でしたから、一般的に症状がかなりひどくないと検査しないものでした。しかし、胃カメラや大腸内視鏡検査だけでは診断のつかないこともあります。昨日述べたように、全小腸内視鏡のできるカプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡が開発されて、全小腸の検索や処置ができるようになって、原因不明とされていた、腹痛や血便・下痢の、かなりの割合が診断できるようになりました。クローン病、アレルギー性小腸炎、結核性小腸炎、鎮痛剤による薬剤性小腸炎、炎症や手術後の機械的狭窄などが、腹痛の原因として意外に多いことがわかってきました。原因不明の腹痛でお悩みの方は、ご相談ください。小腸内視鏡がその悩みを解決するかもしれません。

カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の開発で可能となった全小腸内視鏡検査

小腸は長さ約5mないし7m、直径1.5cmないし2.5cmの細長い管状の臓器です。2000年以前は、すべての小腸の内側を見ることは、テクニカル的になかなか難しいことでした。ですから、我々専門家は、そのころ、小腸のことを暗黒大陸と呼んでいました。2001年ごろに、カプセル内視鏡が開発されて、全小腸を容易に観察できるようになりました。(ちなみに、主要国の中でカプセル内視鏡が政府に認可されていないのは、日本だけです。アメリカ、中国、韓国、ヨーロッパの政府はずっと前から認可しています。カプセル内視鏡が使えないのは日本と北朝鮮だけ?!) しかし、カプセル内視鏡の原理的欠点は、組織検査ができないこと、ポリープの切除や、止血処置ができないといったことでした。2002年秋、ジュネーブのUEGW学会のとき、ある内視鏡製作会社の開発責任者から、ダブルバルーン小腸内視鏡を開発したが、売れるだろうか?商品化しても大丈夫だろうか?と質問を受けました。わたしは、その方法はカプセルと違い、組織検査やポリープ切除、止血処置などもできるから、臨床的に有用であり、是非商品化すべきだといいました。翌年の春にダブルバルーン内視鏡は市販され始めて、いまや、全世界で売れています。小腸の病変・病気に対しては、カプセル内視鏡でスクリーニングを行い、ダブルバルーン内視鏡で精査・処置するというスタイルが定着しつつあります。ちなみに、当クリニックでもダブルバルーン小腸内視鏡が可能です。


 

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