たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

2005年01月

自由診療は高いので損!?・・・治らない診療が最も高い

患者にとって、一番高い診療は治らない診療です。治らなくても費用は発生します。自由診療を賢く受けるには、治せる施設を選ぶ必要があります(これは自由診療に限ったことではありませんが・・・)。


   ところで、あまり知られていない制度ですが、自由診療にかかった費用でも、保険組合に相談すると、一部カバーされることがあります。たいてい、どこの組合にも所定の申請用紙があります。よくご存知の方は、診療後に所定の用紙を持っていらっしゃって、診療明細を依頼されます。


   また、任意保険(民間の保険、アフラックとか、ソニー生命とか、明治生命とか、日本生命とか・・・)に加入していると、内視鏡でポリープを切除した場合、契約内容によりさまざまですが、手術となり、一回につき5万円程度の保険金あります。ちなみに、本日、大腸内視鏡検査をお受けになったかたは、腫瘍性の大腸ポリープがあり、内視鏡下に切除しました。血液検査や病理検査や投薬を含めて7万円ほどの請求でしたが、「アフラックに加入していたので、手術特約で5万円ほどの保険金が下りるので助かります。」とコメントしていました。彼は、がん特約も契約しており、病理結果が癌であれば、20万円追加、さらに癌が浸潤していれば100万円の保険金が下りるそうです。こうなると、小さな癌や腫瘍をきちんと診断できる医師を選ばないと、身体的のみならず、経済的にもほんとうに損をするということです。

なぜ自由診療なのか?・・・保険診療は最先端でない

当院は現在、自由診療です。どうして自由診療なのですかとよく聞かれます。現在の保険診療はいろいろと制限があり、診断できるものも診断できなかったり、治せるものも治せなかったりするからです。たとえば、慢性胃炎に対するピロリ菌除去は保険診療では不可です。ピロリ菌退治は胃癌の抑制につながり、慢性胃炎も治るのに、保険診療では認められていません。その他、カプセル内視鏡や、肥満の治療薬、新種の抗癌剤、ステロイド注腸療法の用量制限、内視鏡による腸管縫縮術など、効果があるのに社会保険診療で認められていない有効な診断法や治療法が数多くあります。また、社会保険の運用も不明朗で、俗に言う経済審査が平然と行われています。医療機関は熱心に診療をすればするほど、理不尽な損害を蒙るのが現状です。 医の本分は第一に患者を治すことと考えています。

ペット(PET)検査vs内視鏡検査・・・癌の発見能力はどちらが上か? 

近年、PET(ペット)検査が、癌の早期発見に利用され始めました。(ちなみにPET検査は西台クリニックが有名)。当院では、消化管の癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌)を早期に発見しようという目的の患者さんが多いこともあり、患者さんから、PETで癌がすべてわかるといううわさを聞くが本当ですか?という質問がよくあります。この件を調べに、東大の核医学検査室を見学に行き、担当の先生方に尋ねたところ、塊をなす癌で1cmが感受の限界ということでした。PET検査は、細胞の糖分(グルコース)のとりこみを調べる検査方法なので、平滑筋が動く消化管では、疑陽性例が多くなるそうです。平坦な癌や5mm以下の微小な癌の診断は、PETでは無理とのことでした。消化管において、PET(ペット)では早期癌は見つからないということです。平坦陥凹型癌は、5mm程度の小さいうちから浸潤することもあり、当院でも行っているような、熟練した医師による色素法を併用した拡大内視鏡検査が、現在のところ、消化管癌の早期発見・早期診断には、最も正確で精密で安全といえそうです。ちなみに、今年から、内視鏡によるポリープ切除付消化管ドックを始めました。腸をきれいにするための前処置を含めて、拘束時間、約7時間(個人差あり)で食道癌、胃癌、大腸癌の完全なスクリーニングを行います。詳細

難しい大腸ポリープ(difficult polyps)・大腸癌を内視鏡で切除する

大腸ポリープの中には切除のきわめて難しいものがあります。癒着しているものや、病変基部が広範に及ぶもの、数が多いものの臨床的取り扱いは難しいものです。アメリカでは、ここ2-3年、切除のやさしいポリープと区別して、こういったポリープを(difficult polyp)と呼んで、特別に取り扱いはじめました。

先日、某日赤病院で、癌性のポリープが2個見つかり、開腹手術を勧められた患者さんがいました。癒着がある上に、大きさが数cmにもおよび、内視鏡では技術的に切除できないと言われたそうです。患者さんはどうしても開腹手術を避けたかったので、「中目黒消化器クリニックなら開腹せずに癌が取れるかもしれない。」との評判を聞いて、当院に来院なさいました。診察してみると、まさに、「difficult polyps」でありました。上記の3条件がすべてそろっていたのです。まず1つは、1cm弱の陥凹した病変(癌)がポリープ切除後の瘢痕収縮部の部分に発生していました(遺残再発?)。次に、腸管の約3/5周にも及ぶ約6cmの大きな側方発育進展型の腫瘍(癌)がありました。図1厄介なことに、単に大きいだけでなく、すぐ奥のポリープを先にとっていたため、癒着して大変取りにくい状態になっていました。そして、そのほかに大腸ポリープが13個ほどありました。

  私は、2チャンネル内視鏡や、拡大内視鏡、アルゴンプラズマ焼却装置、特殊切開器具、縫合器具などを駆使して、まったく合併症なく、完全に腫瘍(癌)を取り去ることができました。図2、図3。幸い癌は粘膜内にとどまり、転移の危険性はなく、開腹手術をせずに済みました。当院ではそんなDifficult polypにも十分対応できる技術と設備があります。

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