たぶち まさふみ オフィシャルブログ

日本消化器内視鏡学会指導医 元東大医学部講師による、医療・政治ブログ

アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 第4日目 

サンディエゴ観光 など 

  午前中は、ASGEのまとめのセッションに参加。21年前に私が日本で考案して実用化した、水浸挿入方法が、アメリカ流にRCTで大真面目に評価されていたのにはびっくり。結果は従来方に比べて優秀という結論であったが、今頃になって評価ですか?!と複雑な気持ち。引用文献には私の名前は無かったのは残念。開発当時、英語の論文を書かなかったのでしかたないか・・・。


 3日間半もまじめに学会に参加し、少し疲れたので、午後からはサンディエゴ観光に出かけた。晴天で初夏の風が爽快。2000年と大きく違っていたのは、空母ミッドウェイが、老朽化のため現役を退いて、港に係留されて、博物館として公開されていたことだ。空母ミッドウェイは、負けしらずの空母で、アメリカ海軍栄光の象徴でもある。作戦司令室では、2003年3月イラクのバクダットを攻撃したときの様子が再現されていた。サッカーコート3面分の甲板には今までの戦闘機が所狭しと載っている。管制塔に登って、操舵室に入り、舵をまわしてみた。


 つい2-3年前まで現役で働いていた空母を公開するなんて、アメリカ海軍は無敵の余裕だ。管制塔から降りるとき、ベランダが激しく錆びていた。なるほど、無敵艦も「老い」には勝てなかったというわけかと妙に納得した。

 

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アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 第3日目

進歩する学問と技術 炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎とクローン病


  本日のサンディエゴの天気は曇り、前日と打って変わって肌寒い。


 アメリカはIBD先進国である。患者数も多ければ、治療法も多い。抗TNFα療法として、インフリキシマブや、アダリブマブ、セツキシマブPなどの分子標的薬剤の臨床効果や問題点、その他の作用機序による分子標的薬剤(抗CXCL10抗体、抗integrinβ7抗体など)の臨床試験結果などが発表されていた。また、従来からある薬の使い方の工夫や、別の疾患に用いる薬の転用、ある種のサプリメントなど、潰瘍性大腸炎やクローン病をなおすのに効果のあるものなど、治療に関する多数の発表がなされていた。


 抗TNFα療法を、ステロイド療法を始める前に使えば(トップダウン方式)、臨床的な治療効果が、ある基準を基にすると、30%から70%へと向上するという話もあった。


 夕方は肥満治療の発表に参加。米国は肥満先進国でもある。高度の肥満が多い。高度の肥満を解消する目的で、胃にバンドをかけて細くしたり、消化管をつなぎなおしたりして、消化管からの栄養吸収を抑える治療法が米国ではおこなわれているのであるが、その治療法の長期の問題点と克服の仕方がビデオで紹介されていた。内視鏡的肥満治療の問題と克服方法の話は面白かった。

 

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アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 第2日目 

爆発事件?事故?学会場が大きく揺れる。進歩する学問と技術 大腸用カプセル内視鏡、逆行観察用細径内視鏡、virtual colonoscopy など
 

  サンディエゴはからりと晴れ上がり、強い日差しの一日であった。お昼時、展示ブースめぐりをしていたときに、ドカンと大きく学会場がゆれた。消防車が学会上の前をけたたましく何台も走り抜けた。何事かと思っていたら、約1時間して、講演の最中に全館放送が流れた。「学会場の東方で問題があったが、避難する必要はありません。」 放送のたびに、講演が何度も中断された。ここ10年ほぼ毎年、学会に来ているが、このような出来事は始めてである。「テロかな?ガス爆発かな?」と思っていたが、学会は、放送による中断があっただけで、ほぼ無事に進行した。


 2-3年前から、大腸用カプセル内視鏡が開発されているのだが、その臨床的評価が発表されていた。まず、一番の問題点は、大腸は停滞時間が長いので、電池切れになって全大腸が観察できないのである。1-2割は下部大腸と直腸が観察できないらしい。腸の動きを早くするために、いろいろな工夫がされていたが、さらなる工夫が必要であろう。また、1cmを超える大きなポリープでも見落としがあり、全体としての大腸ポリープに対する感受性も8割ぐらいで、今のままでは、大腸ポリープのスクリーニングには、少し限界があるように感じられた。しかし、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の評価には、十分使用できそうである。


 大腸内視鏡観察は大腸ひだの裏が見落としやすい。そこで、内視鏡先端に透明なキャップなどをつけ、襞を押さえつけて、裏側を見たりするのであるが、Advantis Medical System 社から、鉗子孔から挿入できて、Uターンのできる画素数320*240の直径約3mmぐらいの内視鏡が開発されていた。反対側から襞の裏を見ようというわけである。この製品はこれからの臨床評価であろう。


 また、CTによる大腸表面の画像化技術(vertual colonoscopy)も電子機器と優れた画像処理プログラムの向上により、かなりの所まできていた。

夜は、普段会えない先生方や日本人関係者と会食して、情報交換。

 

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アメリカ合衆国サンディエゴ消化器病週間 San Diego DDW (digestive disease week)に参加 

第1日目 進歩する学問と技術 テロメラーゼ阻害剤、超細径内視鏡 SFE (scanning fiber endoscope)、硬度表示エコー、NOTESの標準化、内視鏡による消化管壁の縫合技術の評価などなど 

  サンディエゴを訪れるのは、2000年以来、8年ぶりだ。前回は、今は神保町で開業している末岡伸夫先生と一緒に、バレット癌の色素二重染色による拡大内視鏡診断をポスター会場で発表して、一日中、質問者が続くほど、大変注目された。私の開発した染色システムで撮影した色素拡大内視鏡のバレット癌の写真を、スタンフォード大学の消化器病学の教授が、卒業後教育の教材として使いたいと、申し出があったほどであった。最近は、いろいろな問題に煩わされているので、研究に割く精神的ゆとりがないため、今回は残念ながら特に発表はないが、発表がないのは、かえって落ち着いて、多くの発表を聞くことができて、気楽で楽しいものである。

 アメリカの消化器病週間に来ると、ここ2-3年、必ずサプライズな発表がある。今回は、直径1.2mmの操作型ファイバー内視鏡=SFE (scanning fiber endoscope)であった。米国で既に試作機ができて、臨床試験が終わっていたのには、びっくりした。画像もまずまずで、Eric J. Seibel先生いわく、「目を持ったガイドワイヤ」(guide wire with eyes)ということらしい。直径1.2mmという細さも凄いのであるが、これからは1mmを目指すという。この技術はさまざまに利用・応用されることになるだろう。


 それほどではないが、次に、驚いたのが硬度(=軟度)を表示するエコー画像処理システムである。硬い軟らかいは、触診と同じで,臨床上重要であるのは明白であるのだが、膵臓がんや転移性肝臓がんで このシステムによる画像が、がんの存在診断に特に有効であった症例が2-3示されていた。まだ、いろいろと技術的な問題があるようであるが、近いうちに臨床に供されるのは間違いあるまい。


 去年、びっくりしたNOTESであるが、今年は各国から237題もの発表がある。今日は、ドイツから人型練習モデルまでが発表されていた。海外では標準化が近いのである。腹腔内の細菌感染の問題や、胃壁の縫合操作の問題についても、基礎的な発表がなされていた。腹膜炎の問題について、開腹手術と経胃腹腔鏡で、腹腔内汚染があまり変わらないとする発表があった。また、消化管壁縫合技術面では、開発されている縫合技術7つのうち、4つが手縫いと同じ縫合力があるとの発表もあった。私が1999年に始めて報告し、私自身が今でも行っている「クリップによる消化管壁穿孔縫合」も、手縫いとほぼ同等の縫合力という評価であった。(確かに、だから、私の直腸ー尿道漏の縫合がうまくいくわけである。高い縫合力を得るにはそれなりの「こつ」がいるのではあるが・・・・。


 その他、前から報告のあった、テロメラーゼ阻害剤が、第3層試験を終了しそうで、もうすぐ、脳腫瘍グリオーマの治療薬として臨床に出てくる?という。また、テロメラーゼに関連したところでは、肺線維症が挙げられてていた。テロメラーゼ活性が先天的に低めの人に喫煙などの悪化因子が加わって、発生しやすい ことが、ここ1-2年わかってきたようである。抗がん剤としてのテロメラーゼ阻害剤だけでなく、老化や老化に関連した各種疾患治療を目的とした、テロメラーゼの活性剤やテロメラーゼアゴニストの研究も、今後、大きなテーマの一つとなりそうである。

 

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特殊光観察FICE6:色素染色下でも毛細血管視認性向上に有効 

  NBIやFICEといった特殊光観察下では、毛細血管がよく認識できるようになる。ただし、これまで、色素下での効果は限定的であった。今回、FICEパターン6では、 メチレンブルー染色下でも、毛細血管の視認性が向上した。青が青のまま、血管だけが強調されるので、わかりやすかった。


 

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繁栄するアラブ、香港  

  休み期間に、アラブ首長国連邦のドバイとアブダビと中国の特別行政区の香港とマカオを訪問した。ドバイとマカオは建築ラッシュで、特にドバイはワッと驚くようなすごい建築が立ち並んでいた。1990年には小さなビルが2-3個あっただけの通りに、摩天楼が文字通り林立していた。いずれの都市も地震がないので、日本に比べて超高層建築物の背が高い。ドバイの超高層ビル群や香港のフィナンシャルビルにも、びっくりしたが、一番凄いと思ったのは、アブダビに建設中のシェイクザイードモスクであった。一点の隈もない白い大理石に、きれいな石がアラビア風に象嵌されていた。内部の飾りもすばらしいものであった。

 ちなみに、このモスクは地球の歩き方07-08版には載っていない。ドバイからアブダビに向かう道すがら、たまたま遠くに見えて、気がついた。そして、7つ星ホテル、エミレーツパレスを観光して、アブダビからドバイに帰る道すがら、偶然、ドンピシャの道を選んでいて、砂漠の神に誘われるように迷い込んだものである。現地のガイドもこれが何かを知らなかった。門番にきき名前がわかった。


 

 

 

 

 

 ドバイもアブダビも香港もマカオも町は禁煙で、町にはタバコが落ちていなかった。中目黒の駅前も、目黒区の条例で禁煙となっているのであるが、若者も中年も、平気でタバコをすって、道にポイっと捨てている。最も汚い町は、残念ながら東京の中目黒であった。香港の裏町のほうが、まだきれいであった。日本の人心は荒廃しているのだろう。

 「恒産なければ恒心なし」とは論語も一節だが、日本政府が、国際社会の中で生き残る、確固たる戦略を持たなければ、資産も人材も叡智も日本から逃げ出して、日本は大切な命もゴミくずのように扱う悲惨な国になってしまうだろう。いや、もうなってしまっているか・・・・・。

 

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フジテレビ、ハピふるに録画出演。「食べてすぐ横になると牛になる」を解説  

  本日、午前9時55分からのハピふるに録画出演。「食べてすぐ横になると牛になる」を解説した。姿勢によって胃の形が変わり、重力の方向によって、胃の機能が修飾を受けることを説明した。胃下垂で胃の機能の弱い人は、食べた後に仰向けに横になり、1時間ぐらいしたら、右下に横になるのが、消化によい。ただし、寝込むと消化管の動きが止まるので、横になっても、眠らないことが大切である。武田アナウンサーの横にある牛角胃の図が、正確ではなかったのは、すこし、残念であった。

 

 

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消化管学会発表内容(2008/02/13)が日経メディカル別冊に掲載される  

 今年の2月の日本消化管学会の発表内容(5mm以下の大腸ポリープを無視するリスク)が日経メディカル別冊に掲載された(下記参照)。日本消化管学会では、約2000題の発表があったが、その中から、日経メディカル別冊に掲載されたのは、わずか5編しかなかった。学会では、一般演題として、小さな会場での発表であっただけに、日経メディカルオンラインに特に選ばれて紹介されたのには、少々驚いた。

 

5mm以下の大腸ポリープの一律軽視は禁物


 内視鏡検査の際に見つけた5mm以下の小さな大腸ポリープを精査することなく放置することは、がんの見逃しにつながる――。2月7~8日に開催された第4回日本消化管学会で、中目黒消化器クリニックの 田渕正文氏は、こう強調した。

 田淵氏は、同氏が手掛けた全大腸内視鏡検査連続3万5852回、9468人(男性6203人、女性3265人、平均年齢57.5歳)を対象とし調査を行った。検査時に発見した5mm以下のポリープを20分以上にわたり拡大観察し、腫瘍と思われた5mm以下の病変をすべて切除して組織学的検討を加えた。対象者が大腸内視鏡検査を受けた動機は、サーベイランス目的が最も多く約75%、次いで大腸がんの二次検診目的が約11%だった。

 切除した5mm以下の病変は全部で3万2541個だった。組織学的検討の結果、腺腫が最も多く、全体の99%を占めたが、粘膜がんが57個、粘膜下層まで浸潤したがんが3個(うち1000μm以上の浸潤がんが1個)、粘膜下腫瘍(カルチノイド)が48個あった。

 田渕氏は、「単純計算すると、5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間約20個のがんの見逃しとなる可能性が示唆された。もちろん、すべての大腸ポリープを切除せよと言っているわけではないが、単に医療費を抑制するという観点から小さな大腸ポリープを一律に軽視していては、病変の観察が散漫になり、取り返しのつかないがんの見落としにつながりかねない」と、警鐘を鳴らした。
 

(小又 理恵子)

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2008年02月13日

 

 小又理恵子さんが、選んだわけだが、抄録には書かず、討論の中で私が述べた内容が、きちんと書かれており、小又さんは学会場に来ていたのであろう。小さな会場までわざわざ来たということは、彼女自身が普段から、小さな大腸ポリープの取り扱いについて問題意識を持っていたということだ。

 

 記事内容については、ほぼ、間違いないのであるが、文字数制限のせいか、多少舌足らずの所があった。「5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間約20個の癌の見逃しとなる・・・」の所は、「5mm以下の大腸ポリープをすべて放置した場合、年間2400例の大腸内視鏡検査を行う場合約20個の癌の見逃しとなる・・・」と母数を書くべきであった。

 

 現在の医療界は、保険診療費の切詰めの中、粗診粗療に流れている。このような世相の下、マスコミが大腸内視鏡検査の質をフォカスしたことは、意義深い。

 

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医師の苦悩 医師の使命と社会保険制度 

 2月の下旬は、受験シーズンである。医学部医学科を目指す若者たちは、いま、必死に受験と取り組んでいることであろう。

 

 私の場合も、医学部受験は人生を決める大イベントであった。なぜ、医学部を目指したかといえば、母と祖母から、「一族からせめて一人は医者になって欲しい。」と、強力に頼まれたからである。もともと、私は幼いころから数学が得意であったので、理学部か工学部か法学部に進もうと思っていたのだが、お話好きという別の特性を生かすには、医学部もありかなと思ったのである。

 九段の日本武道館で行われた東京大学の入学式(1978年=昭和53年)、桜の花舞散る下で感じたことは、医師になる使命感というよりも、正直、受験戦争を戦い抜いた安堵感と達成感であった。しかし、大学のとき、私自身が難病を患い、特定疾患患者となって、病気の怖さ・切なさを嫌というほど味わい、病気を治す、患者を治すという医師の使命の大切さを、心の底から実感した。だから、自らの専門を決めるとき、迷いは一切なく、自分の病気を専門とした。

 医師国家試験に合格して臨床に入ってみると、私の病状などとは比べものにならない、悲惨な患者さんが多数いた。治らない病気も数多く、効果的な治療法がなく、死んでいく人々の山であった。治療法があって克服された病気と、そうでなく克服されていない病気、その差は歴然としていた。川におぼれて死のふちへと流されていく人々を救うには、方法があれば、どんなに費用がかかろうとも、救うというのが、24年前の常識であった。「人の命は地球より重い」当時の閣僚の言葉である。

 

 1980年代は、日本経済が絶好調の時代で、社会保険医療の枠が最善の医療の限界とほぼ同じであった。今から思えば、医師として悩み少なき時代であった。現在、私が医師になった24年前と比べれば、さまざまな病気の本態が解明され、治療法も見つかってきている。しかし、治らない病気、治せない病気も数多く、多くの人々が病気を治せずに死んでいという状況には変わりはない。癌は、治療法がかなり進んできたもの、いまだに克服されていない。その他、難治の疾患を数えたら、きりがない。

 1990年を境に、日本経済が没落し始めて、経済的限界から、社会保険医療のレベルが後退し始めた。一方、医学の進歩は続き、各種の病気の解明、治療法の開発が進んだ。これらの成果は経済的制約から、社会保険医療に取り入れられなかったものも、数多い。必然、社会保険医療の枠と最善の医療の限界が乖離し始めて、今は大きく隔たってしまっている。病気を治し、患者を救うという医師の使命を達成するためには、社会保険医療制度が障害となるケースが増えてきたのである。

 つまり、医療の使命を達成するためには、人の世の法令順守だけでよいというわけにはいかなくなってきたのである。自然界には、人の世の作る法とは、別の法、すなわち、自然のさまざまな法則がある。自然界の法に逆らえば、人は健康を損ない、命を落とす。そのため、医師は使命達成のため、自然の法を学び、研究する。国の法令や規則が、自然の法と対立するとき、医師は苦悩せざるを得ない。

 

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HIFUの合併症、尿道直腸漏を大腸内視鏡で縫合閉鎖

 昨年の11月末に、他院でHIFUを行い、遅発性の尿道直腸漏になった患者さんについて、同僚の鈴木誠先生から相談された。「人工肛門にして外科的に縫合を勧めているのだが、人工肛門はどうしても嫌だといっている。どうしたらいいだろう?」「1996年から何例も大腸壁を内視鏡で縫合している。一度みせてくれないか、縫合できるかどうか検討してよう。」ということで、患者さんがやってきた。左図のごとく、すぽんと孔が開いていた。

いつものとおり、内視鏡で縫い合わせて(成功する縫い方にはこつがある)、便が尿道口から出るのは治った。右図は、縫ってから、23日目の画像である。その後、今日まで78日経過したが、経過良好である。


 

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第4回消化管学会2日目  「5mm以下の大腸ポリープの臨床病理学的検討からみた小さな大腸ポリープを放置する危険性」を発表。

(5mm以下のポリープを取るなという社会保険組合の要求は不当だった)

 近年、効率性を求める医療サイドと 医療費を抑制したい保険組合の事情から、 5mm以下のポリープを無視・放置している医療機関も少なくない。しかし、大腸ポリープ(大腸腫瘍)はそもそも前癌性病変であり、5mm以下の癌も確実に存在する。そこで、5mm以下のポリープを放置する臨床的リスクを検討したわけである。

 自検例、約3万6千例の大腸内視鏡検査で、発見されて病理検査された、5mm以下の大腸ポリープは、約3万3千病変、癌や高度異型腺腫、カルチノイドといった絶対的切除適応病変は、内視鏡検査120回に1個。 陥凹型腺腫は、15回に1個。低異型度で非陥凹型の相対的切除適応病変は、6回に5個出現していた。

 5mm以下のポリープを無視・放置すると、年間2400例ぐらいの大腸内視鏡を行っている施設では、少なくとも約20病変の癌が放置・見逃されることになる。腺腫の癌化を考慮に入れれば、5mm以下のポリープを無視・放置するリスクは、さらに大きくなる。したがって、5mm以下のポリープを放置・無視するという臨床的姿勢は、推奨できない。

 

 発表の後の質疑討論で、がんセンターの先生から、クリーンコロンについての考え方についての質問があった。つまり、「どのくらいの見落としがあるか?」という質問である。「文献によると大腸腫瘍の見落とし率は10%-20%といわれている。私自身のデータは10%。半年以内に2回大腸内視鏡を行い、20分以上かけて観察を行い、見つかったすべての腫瘍を取ったとき、クリーンコロンと考えている。」と回答。

 

 さらに、「前任の佐野寧先生のデータでは、30%近くが平坦陥凹型であったが、先生のデータでは陥凹型がなぜ、6.7%(1/15)なのか?」と重ねて質問。「6.7%には、平坦型は含まれていない。純粋な陥凹型に限ったことと、6.7%には癌と高度異型度腺腫が含まれていないからだ。」と説明。

 

 また、座長が、「全部の病変を、拡大観察しているのか?」と質問。「近接型拡大内視鏡(EC7CM2など)を用いていたころは、すべて、拡大観察していたが、ズーム型内視鏡拡大内視鏡(現在はEC590zw)になって、一見、腫瘍か否かわかりにくいものに限って、拡大観察をしている。今は約30%ぐらい。」と回答。

 

 フロアから、「ピットパターン診断などを行い、本当に危ない大腸腫瘍だけを選んで取るべきではないか?」というちょっと的外れの意見があった。[この発表は、どこに、取る取らないかの境界を置くかについての判断のために基礎的なデータを示したものである。つまり 、今回の発表は、5mm以下のポリープをすべてとらないという選択をしたときのリスクを示したものである。異型度の低い5mm以下の大腸腫瘍を放置するリスクについての議論をしたわけではない。」

 

 ちなみに、私は、1994年ごろの研究(胃と腸に発表)で、「大腸腺腫を放置すれば、一定の割合で消失するものあるが、約1.3%が1年後に大腸癌になり、癌化すると月に約1mm大きくなり、平坦陥凹型で、平均7.5mmで、隆起型では平均12.5mmで粘膜下層に浸潤する。」という結論に達している。

 

 日本経済が傾いた1996年ごろ、私は、社会保険組合から呼び出されて、「社会保険組合の財政が悪化しているので、5mm以下のポリープを取らないでくれ」という要請された 。驚いた読者諸氏も多いことであろうが、事実である。それが、今回の発表の動機である。

 

 ここに示すように、5mm以下にも癌や高度異型腺腫のような、すぐに命をとるような病変が比較的高率に存在し、また、5mm以下の大腸腫瘍を取る容易さは、病変を見つける手間や難しさに及ばないので、見つけ次第、すべて取るという姿勢を私は貫いた。社会保険組合に嫌われたのは、言うまでもない。合計5000名ほど、組合経由で送られてきていた患者さんは、途切れた。

 

 「丁寧に無痛内視鏡を行い、ポリープをすべて取ってくれる名医」という評価を剥がされて、かわりに、「お金のためにポリープをあさる、ひどい医者」というレッテルが貼られて、社会的攻撃が始まったのである。

 

 当時(今もそうだが)、ポリープは3箇所以上は、何個とっても、社会保険診療報酬の値段は変わらない。私は、一例に平均40-50分かけて、平均6-7個の病変を切除していたのである。お金が目的なら、10分で3個だけとるという診療を行い、もっと症例数を稼いでいたことであろう。

 

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第4回消化管学会 大阪中乃島大阪グランキューブで開催  

 

  午前中は、「内視鏡特殊光観察の光と影ー色素内視鏡を越えられるか?」に参加。

 FICEとNBIが色素内視鏡よりも優れている点は、毛細血管が簡単に見える点である。微小食道癌・喉頭癌の存在診断では既に十分な臨床的成果を挙げている。そこで、大腸や胃ではどうか ?という企画なのだ。

 

 大腸腫瘍ではピットパターン診断の研究が、ずいぶんと進んでいる。毛細血管観察によるFICEやNBIの上乗せ診断効果はわずかなようだ。潰瘍性大腸炎に 発生する(COLITIC CANCER)癌の存在診断についても、FICE、NBI、AFIともに大きな成果は未だない。

 

 胃癌では、胃小溝や胃腺口の消失や、縮れたような不整な微細血管の出現が、癌特有の所見である。しかし、 新潟の八木一芳先生によると、癌が粘膜表面に顔を出しているときは、高い診断能を得られるが、癌が粘膜中層を這うように広がるときは、診断能は低くなってしまうそうだ。座長の八尾隆史先生は、「生検による組織検査は、 やはり、欠かせない。」とコメントしていた。未分化型の胃癌の広がりを正確に診断するのは、難しいのである。

 

 消化管内視鏡の最大の目標は、癌の有無を確認することと、癌の広がりを把握すること、癌を取り去ることである。これらが短時間に容易にできる、さらなる新しい技術の開発が要求されている。獨協医大中村哲也先生の発表、「増感因子を用いたレーザー光による診断と治療(PDD、PDT)の胃癌への応用の試み」は、その答えのひとつかもしれない。

 

 昼は、島根の木下芳一教授の「メタボリックシンドローム時代の上部消化管疾患に迫る」に参加。要は、胃酸分泌亢進の時代的背景と逆流性食道炎、機能性ディスペプシアとの関係といったところのお話だったのであるが、島根医大における20年前と5年前と今の患者の数と、年齢構成の違いについての話が面白かった。

 

 島根は、いまや3人に1人は、60歳以上の老人先進県。病院の経営のために、患者数と年齢構成を調べてみたら、80才代、70才台、60才台の患者数が純増して、20年前の2.5倍の患者がいるとのこと。しかし、医師の数は20年と同じ。 「昔の教授がうらやましい。」と。

 その話を京都大学の千葉勉教授にしたら、「それは田舎島根の特殊事情じゃないか?」といわれて、「京都でも調べてみたら」と言い返し、2人で調べてみたら、京都大学も事情は同じだったそうで、京都のことを、「 都会と思っている田舎」と、コメント。さらに、彼らの出身大学のある神戸の中核病院をさらに、調べてみたら、なんと、神戸も同じ事情だったそうである。 「田舎と思われていない田舎」・・・・。

 

 夜の懇親会で、その病院の消化器科部長と歓談。「年度末に、常勤が2人やめて、補充が見つかりません。朝の9時から夜の9時まで外来をして、くたくたです。「癌中核病院」として指名されて、50km先からでも患者が押し寄せてきて、とても、もう医療レベルが維持できません。もう、崩壊です。」 医局をつぶし、研修医の5時帰宅を推奨し、使命感をもって臨床を続けている医師 たちに、報いなかった(むしろ、いじめ続けた)政策のつけが、爆発しはじめている。文部省と厚生労働省、この政策立案に関った官僚は、医師を大切にしなかった間違いを素直に反省すべきだろう。

 医局をつぶせば、地域病院の医療レベルが下がり、研修医を5時に帰宅させれば、臨床能力の育成が遅れ、診療報酬を下げれば、病院がつぶれ、医師がパンクすることがわからなかった人たちには、医療行政を司る資格はない だろう。

 

 発見伝茶屋での2次会で、癌研の武藤徹一郎院長と話。先生、酔った勢いで曰く、「 一度、(医療界は)つぶれるしかないな、つぶれないと、わからないんだよ」「それでは、患者も医者もみんな困りますよ、先生、何とかしてください。彼ら(官僚)に一言、言ってくださいよ。」「うるさいと遠ざけられるんだ。」「ところで、先生、今の医学生に何か言いたいことありますか?東大の講義で伝えますよ」「そうだな、「使命感を持ち、大望を抱け」 ということかな。」「わかりました。」・・・・(使命感を持って、医療を続ける人が、いじめられる姿を、目の当たりにしていては、いくら使命感を持てといっても、空々しい思いに駆られるのは学生ばかりではあるまい。)

 

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医師の任務とは?  

  医師の仕事とはなにか?患者の病気を治して健康にすることだと思って、24年間医師を行ってきた。あまりにも、当たり前だと思っていたので、特に、何の疑問も持たず、何も調べずに過ごしてきた。ところが、ある事件がおこり、今、医師とはなにか、改めて、深く考えさせられている。


 医師法第一条によれば、医師の任務「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。」・・・・・。患者の病気を治すとは書いていないが、医療・保健・健康な生活の確保という言葉の中に、その意が含まれていると考えられる。やっぱり、私の考えは間違っていない・・・。


 この20年間、とくに、後半の10年は、強い医療費抑制政策が取られてきた。10年前には年間40兆円と予想された医療費が、今は28兆円だ。高齢化、経済の地盤沈下といった社会状況の中で、医療費抑制政策は、理解できる。しかし、社会保険医療現場の状況は、合理化のレベルを超えて、医療そのものの抑制という状況だ。


 この時代のコンテキストのなかで、医師として行うべきこととは何なんだろうか・・・・?

 

 2005年日本で消費された原油は、ほぼ100%海外、主に中東諸国(サウジアラビアとアラブ首長国連邦)に依存している。原油の輸入量は約2.5億キロリットル。一人当たりの原油一日消費量、5.3リットル。原油価格一バレル100ドル(1リットル0.63ドル=67円、1ドル106円)として、353円。結構使っている。しかし、それでもアメリカの約2.5分の1。中国の8倍。年間の輸入総代金16.7兆円。この8掛けとして、13.4兆円。医療費の50~60%である。

 

 抑制された医療費は、中東諸国へと向かった?

 

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テレ朝、報道ステーションに録画出演。美智子皇后様、軽いめまいと軽い下血との宮内庁報道に解説を求められる。

  水曜日は、クリニックの定休日で、のんびりと書類の片づけをしていたところ、夕方、突然、テレ朝から、電話がかかってきた。「美智子皇后陛下におかれては、軽いめまいと軽い下血があって、すこし休養が必要かもしれない云々。」というコメントが、宮内庁から発表されたという。


 それに対して、一般的な解説をして欲しいとのこと。あくまでも一般論ならと、受諾。電話があってから3時間後、夜7時に、撮影隊がやってきた。「下血により、貧血になり、めまいが来ているようであれば、心配」「昨年3月にも、下血があったが、今回との関係はなにかあるでしょうか?」「冷えると悪くなる病気もあります。」などとコメント。


 70歳を過ぎてもなお、分刻みのお仕事とは、並の人間にはできない芸当である。おからだを大切にと祈るばかりだ。

 

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第6回芳医会に出席。 

 今年の正月休みは、15年前に引越しして以来、片付けていなかった、書斎と倉庫に手をつけた。それが間違いで悲惨な正月となった。15年の塵と埃は、大変で、ようやく、整い始めたものの、いまだに片付いていない。片付けるという発想には、過去との決別の覚悟が含まれるものだが、そもそも、その覚悟なしに片付けているので、片付けるというより、発掘といった風情で、遅々として進まないのだ。

 さて、片付けの合間に、1月5日には岡山で開かれた、第6回芳医会に出席。岡山へ行く飛行機から、富士山を撮影。よく飛行機には乗るが、富士山は3-4回に一回しかお目にかかれない。この日は、晴れていて、強風。飛行機は上空の強い西風をさけて、普段より低空(約4500m)ぐらいを飛行。山頂の様子がよく見えた。富士山を北側から見た絵だが、富士の山頂は、頂上の火口の西側にあることや、山小屋の様子がはっきりとわかった。内視鏡でもそうだが、拡大観察は診断に重要なのである。


 

 2008年1月5日午後1時過ぎごろの富士山頂の様子。北側から撮影。原画は、この約4倍の画素数で、山頂の具合がもっとくっきり見える。

 芳医会の今回のテーマは、心療内科。講師は、岡山大学総合患者支援センター副センター長、岡田宏基先生。テーマは、「心身医学の考え方
と心身疾患への対応の仕方」であった。心療内科が、昔と違うことは、喘息患者が減って、うつ病患者が増えたこと。神経症性食欲不振症は、相変わらず、ことだった。過敏性腸症候群については、「神経症としての治療にあまり反応しない。治しにくい。」とコメントされていた。

 私は20年来大腸の診療をしてきたが、本当に治療に難渋した、過敏性腸症候群は、2例ぐらいである。過敏性大腸、過敏性大腸症候群といわれているものの多くは、大腸内視鏡で詳しく観察し診察すると、リンパ濾胞性大腸炎や、小腸炎、アフタ性大腸炎、腹膜癒着症、過長結腸症、MPS、憩室症など、何らかの器質的診断のつくものが結構多いのである。それらは、軽い所見や気づきにくい所見であるため、多くは見逃されて、方向違いの治療を受けているのであろう。

 岡山の生家の庭には、梅やあくら、こうやまき、ばべ、くちなし、せんりょう、さるすべり、まつ、さつき、ざくろ、などなどのさまざまな庭木があるが、今年は、「なんてん」がひときわ、鮮やかであった。

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あけましておめでとうございます。

  ホームページ読者の皆さんあけましておめでとうございます。新年にあたり、皆様の健康と、ますますの発展をお祈り申し上げます。


 さて、今年は子年です。鼠はかつて1350年ごろ、ヨーロッパに大変な災害をもたらしました。ペスト(黒死病)の流行です。当時の人口の4人に一人、約2500万人が死にました。現代では、鼠は実験動物として、医学を通じて、人間界におおいに貢献しています。


 

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フジテレビ、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演、「大食い」についてコメント 

  本日、午前中、お台場のフジテレビV6スタジオで、ハピふる「コレって私だけコーナー」に出演した。テーマは「大食い」。「大食い」は危険だというテーマで番組制作を進めていたが、私が土曜日に指摘した危険のうち、「膵炎」が意外だったようで、12/22に行った録画だけでなく、結局、出演も依頼されることになった。


 出演者は、メイン司会が、高樹沙耶さん、サブ司会が野島卓(フジテレビアナウンサー)さんと石本沙織(フジテレビアナウンサー)さん。水曜日ゲストがタレントの磯野貴理さん、一日ゲストが近藤典子さんと私、田淵正文。水曜日の企画プレゼンターが武田祐子(フジテレビアナウンサー)で、アシスタントはタレントの武田航平さんであった。10時のティータイムに集まったマダムたちの疑問に、ゲストのお医者さんがお答えするといった風情の番組であった。


 最初に、4kgのカレーライスを30分でぺろりと平らげる、女性のビデオが流されて、私は、びっくり。そして、彼女は、まだもう一杯食べられると発言。そんなに食べるのであるなら、太っていると思いがちであるが、彼女は150cm35kgという異常にスリムな体である。


 なぜそんなに食べて満腹にならないか?そして、そんなに食べるのにどうして太らないのか?と尋ねられた。満腹になる仕組みを簡単に説明した。視床下部にある満腹中枢を刺激するのは、血糖値の上昇、胃の伸展などである。彼女の胃が異常に大きくて、なかなか伸展しないのではないか、また、彼女は消化吸収機構にいろいろ問題があって、実は小腸が栄養を十分に吸収しないのではないか、そのため、血糖値が上昇せず、満腹にもならないし、太りもしないのではないか、と推測を述べた。


 次に、大食いで起こる「からだの異常」についての話になった。実際はいろいろあるのだが、話題はシナリオどおり、膵臓へと向かう。大食いでは、膵臓が hyper-function になり、さらに over-function から、膵臓が傷む。その様子を、磯野真理さんと武田航平さんが、レゴを分解するコントで演じてみせた。医学的には、「毛細血管の中性脂肪が、漏れ出してきた膵液中のリパーゼで分解されて、油滴となり、毛細血管が閉塞して、油滴梗塞を起こし、膵臓が溶ける。」と説明したのであるが、素人さんには、わかりにくいので、コントにしたわけだ。番組制作会社NEXTEPのスタッフの面々の知恵には恐れ入るばかりだ。


 事前の打ち合わせで、武田祐子さんはじめ、番組制作のスタッフが強く興味を持ったのは、実は、社会保険医療の範囲では、慢性膵炎につける薬がないことであった。確かに、商品名フォイパンや商品名カモステート(どちらも化学物質名はメシル酸カモスタット)という「慢性膵炎の急性増悪時に2週間投与に限ってだけ認められている薬があるのだが、実質的には、審査で全額査定されるために、ほとんどの医療機関では投与を差し控えているのが東京都の実情実態である。


 つい最近も、この薬を飲まないとおなかの調子の悪くなる人が、女子医大で処方してもらえないといって、自由診療の私のクリニックに来院していた。その人いわく、「女子医大の外来に、張り出されている処方注意薬のリストに、この薬の名前が出ていました。コレが欲しいといったのに、先生は出せないの一点張りでした。」


 番組の中で、武田祐子さんがそのことについて触れようとする。「会社の検診では、膵臓はどのようにチェックされているのですか?」「あまり詳しくやっていません。」「どうして膵臓をあまり調べないことになっているのですか?」「・・・(しばし沈黙)・・・・・軽い膵炎は食べないと治っていくからで、放置しているのです。」 


 沈黙の中で、心のなかで答えた言葉は 「社会保険医療では、慢性膵臓炎に出す薬がないので、保険医療機関では、その診断を嫌がるのです。」。その言葉を飲み込んだ理由は、番組の雰囲気に合わないと判断したからである。保険医療問題は、奥が深く、暗い問題なので、明るく楽しい「ハピふる」にはそぐわないだろう。「大食い」というのは、わんこそば食い競争が示すように、いわゆるひとつの「コケチッシュ」なレクレーション、文化であるからだ。


 慢性胃炎や慢性小腸炎、大腸ポリープなどにも、同様の問題があり、一度、正面きって、社会保険医療の問題点を番組として取り上げてもらいたいものである。
 

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薬害肝炎、議員立法で一律救済へ福田総裁が決断。これまでの行政府・官僚の責任は問われるのだろうか? 

 薬害肝炎、議員立法で一律救済 福田首相が決断


 
福田康夫首相は23日、薬害肝炎訴訟をめぐり、全員一律救済に向けた議員立法によって解決を目指す方針を表明した。官邸で記者団の取材に応じて明らかにした。福田首相は、「患者を全員一律で救済する議員立法を自民党との相談の結果、決めた。公明党の了解も得た」と述べた。一律救済は、肝炎訴訟の和解協議の中で原告団が求めていたが、国が難色を示していた。首相の決断で、難航していた肝炎問題は解決に向けて大きく展開する可能性が出てきた。

12月23日12時4分配信 産経新
 

 全員一律救済を求める患者側と、全員一律救済に難色を示す厚生官僚と、司法上でなかなか和解できない問題を、立法府で解決しようという筋道である。 議員立法は、両者の板ばさみになって、自らの政治人気を落とした福田内閣の知恵といえる。一律救済の中身が、明瞭でないが、確かにこの枠組みであれば、厚生官僚たちは歓迎するであろう。

 

 今回の事件において、厚生官僚たちが、何を恐れているかというと、まず一番目には、自分たちの処罰である。

 

 今回の事件はそもそも当時の官僚の怠慢による ことが明解なので、政府が損害賠償をすることになるのだ。従来の枠組みは、行政訴訟であるから、官僚の責任が直接的に問われていた。しかし、新たな法律の制定となると、その法律では当時の官僚に責任はない。

 したがって、今回の立法府の政治決断で、これまでの怠慢が看過されるのは、彼らにとって好都合である。官僚が国民に損害を与えた事実が、政治決断により、かすんで忘れ去られたなら、官僚の無謬神話が守られて、処罰も受けないからである。実際には 、彼らが新しい法律の条文も作るので、今回の福田首相の政治決断は大歓迎であろう。

 

 次に、彼らが恐れていることは、「パンドラの箱」に焦点が当たることである。

 

 実は、C型肝炎感染者は、日本に何百万人もいる。そのかなりの割合が、輸血によるものである。輸血したあとに肝炎を発症すること(血清肝炎)は、よく知られた事実であった。それでも、医療行為として輸血をしていたのは、手術などにおける目の前の危険が、血清肝炎の危険を凌駕するからであった。しかし、 厚生官僚が認可した輸血製剤でC型肝炎が全国に蔓延したことも、また真実であり、この隠れた問題から世間の注目をそらしたいのである。

 血液から取り出したフィブリノーゲン製剤だけに責任があって、血液本体の輸血製剤に責任がないというのもちょっと奇妙な話である。彼らは優秀で賢いので、もちろんこの問題には気づいてい る。つまり、今回の事件の解決が、投与時期によらず、「一律、全員」となれば、輸血により感染した100万人単位のC型肝炎も、理屈上、すべて、損害補償しなければならなくなるのだ。省内では、この問題を「パンドラの箱」と呼んでいるらしい。官僚たちが恐れている2番目は、この「パンドラの箱」を開けるということなのである。

 

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認可製剤によるC型肝炎の感染に苦しんでいるのは、今回事件となったフィブリノーゲン製剤だけでない。

わが国のC型肝炎は政府が認めた輸血により広まった。「全員一律救済」はという用語は、より大きな責任追及の意味をもつ。
 

 慢性肝炎は、20年ないし30年前、すべての県ではないが、多くの都道府県で、社会保険治療費の自己負担分が、都道府県により肩代わりされていた。いわゆる、特定疾患医療費補助、難病指定であった。それは、C型肝炎が輸血により広まったという負い目が行政側にあったからだ。しかし、都道府県の財政の悪化に伴い、慢性肝炎は医療費補助の対象からはずされていった。最後まで残ったのが、東京都であったが、1990年代に、打ち切られたと記憶している。

 

 現在、年間3万5000から4万人が、原発性肝臓癌で死亡している。それらの97%以上はC型肝炎・B型肝炎ウィルスの感染によるものである。これらウィルスによる慢性肝炎のウィルス除去の治療成績は、近年、大幅に進歩してきている。しかし、治療費の自己負担分の高さ(月約6-7万円が半年から1年続く)により、地方では、進歩した治療を受けられない患者も出てきている。ウィルスの広まった経緯を考えれば、政治決断にて、ウィルス性肝炎の治療費の公的補助を復活させるべきであろう。

 

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大食いの危険性について フジテレビの取材を受ける。 12月26日放送予定。 

 12月20日(木)、本年10月1日からスタートしたフジテレビ系列の新番組「ハピふる!」から、取材の申込があった。


「最近、大食いタレントの影響などで、“大食い”が注目されています。ただし、大食いというのは、生活習慣病、肥満・・・などなど、さまざまな危険とも、隣り合わせであると思います。私ども「ハピふる」ではそういった“大食い”の危険性を視聴者のかたがたに促すことができればと思い、今回、水曜日の「これって、私だけ?!」のコーナーで「大食いの危険性」を取り上げることにしました。ついては、先生にご協力いただきたく・・・云々」といった内容であった。

 
つまり、“大食いの危険性”について、コメントが欲しいとのこと。


 
そもそも、日本人は、わんこそばの早食い・大食い競争の例を挙げるまでもなく、早食い・大食い競争が好きな民族である。12月26日オンエア予定ということで、ずいぶん、急いでいたのか、申し込みの翌日、金曜日の夜に、番組制作会社の面々が、インタビューのフジテレビのアナウンサー武田祐子さんを連れてやってきた。武田さんはテレビで受ける印象よりも小柄で華奢な感じであった。

Q1. どのような状態で大食いといえますか?

A1. 一般的に、まわりの人よりたくさん食べれば、「大食い」といわれます。まわりの人の1.5倍ぐらい以上食べると「大食い」といわれているような印象がありますが、医学的に「大食い」は明確には定義されていません。しかし、それでは、お答えになりませんので、敢えて、私なりに考えてみました。

 ひとつは、カロリー面からのものです。人の平均一日摂取カロリー量(Kcal)は体重(kg)の25から30倍といわれています。25は坐業の人、30は肉体労働の人です。たとえば、体重60kgの人なら、1500から1800Kcalとなります。その1.5倍以上食べれば、その人にとっての大食いといえるのではないでしょうか。つまり、60kgの人なら、2300から2700kcal以上で「大食い」といえるのではないかと思います。


 もうひとつは、胃の容積から考える基準です。日本人の標準的な胃の容積は、約1.5リットルです。ですから、それより多い容量を一気に食べると、「大食い」といえるかもしれませんね。

Q2.「大食い」をすべきではないのは、どのような人ですか?

A2.医学的に大食いを避けなければならない人は、1.膵臓の弱い人、2.消化管に潰瘍のある人、3.手術後などで腹膜癒着のある人、4.肥満の人、5.糖尿病の人などです。

Q3.「大食い」には、どのような弊害が出てきますか?

A3.

1.膵臓の弱い人は、膵臓炎になり、食後、上腹部が重く痛むようになります。それでも大食いを続けると、さらに、膵臓炎が悪化して、始終、腹痛があるようになります。腹痛だけでなく、背部痛が出る場合もあります。とくに、恐いのは、急性膵臓炎です。3-4日で急死することもあります。あの徳川家康も、「てんぷら」をたらふく食べて、急性膵炎で死んだと伝えられています。
2.消化管に潰瘍のある人は、消化管が膨らむことにより、急に消化管が破れて腹膜炎をおこして、激しい腹痛と発熱に襲われたり、また、潰瘍から出血して、急に吐血や下血をするなど、命に係わる緊急事態が起こりやすくなりますので、要注意です。
3.手術後などで腹膜癒着している人が、「大食い」すると、癒着で腸が細くなっているところに、食べ物が詰まって、通過不全状態になります。これを医学的には「イレウス」と呼びます。イレウスになりますと、腸が捻転したり、腐ったりして、大変な痛みになり、腐ったところから、毒素が出たり、血液の中にばい菌が入ったりして、一気に死亡することもあるため、緊急開腹手術が必要になります。
4.大食いが続けば、カロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病になります。肥満は、心筋梗塞、脳梗塞、などなど、恐い病気にかかりやすくなります。

5.糖尿病はひどくなると、網膜の血管が壊れて目が見えなくなったり、腎臓が悪くなって透析しなければならなくなったり、手足に痺れが来たりします。また、勃起不全がおこったり、不感症になったりして、性生活にも大きな支障をきたす場合もあります。

 さらに、注意しなければならないは、「大食い」が、病気の症状として現れることです。心因性食欲不振症では、食欲不振というものの、時に大食いします。この場合、大食いした後、自ら、嘔吐を促して、食べたものを吐くといった異常行動をとる場合があります。この病気は、やせていることにあこがれることがきっかけでなるといわれています。脳幹でのホルモン異常がおこり、精神にも安定が失われて、回復不能となり、死亡することもあります。カーペンターズのカレンが32歳の若さで、死んだのはこの病気が原因でした。我々おじさん世代では、有名な話です。

Q4.「大食い」のメカニズムを教えてください。

A4.食べ物は、胃に蓄えられて、少しずつ、小腸に流れていきます。普通、胃に蓄えられている時間は平均2時間です。食べ物は小腸に入ると蠕動で下に流れていきます。胃の容積は1.5リットルぐらいですから、たくさん食べるためには、胃から小腸への流れと小腸の下への蠕動運動が速くて強いことが要求されます。胃と小腸の間に関所は、幽門というところで、ここが大きく開いていると、食べ物が流れやすいとされています。

Q5.他局の番組になるのですが、大食いタレントの大食い時のCTを取って、胃が極端に拡張していたようですが、胃が大きくなることもあるのでしょうか?

A5.生まれつき、大きな人もいるでしょうし、大食習慣から胃が大きくなる場合も考えられます。また、特殊な結合組織を持っているため、胃が極端に拡張できる可能性も考えられます。胃の容積が大きければ、腸への流れが悪くても結構たくさん食べられるでしょうね。

 ところで、腹いっぱい食べて、もう要らないという食欲の抑制は、視床下部にある満腹中枢の刺激によって起こります。満腹中枢は胃壁が機械的に伸展されたり、血糖値が上がったり、脂肪細胞に脂肪吸収されると出てくるレプチンという物質などで刺激されます。 この満腹中枢が、さまざまな原因で障害を受けると、満腹しなくなり、いつまでの食欲が残り、「大食い」となります。

Q6.やせの「大食い」が多い理由は?

A6.やせているほうが、おなかが膨らむ余地が多いので、多く食べやすい。また、やせていると、脂肪細胞が少なく、そのため、脂肪細胞から出てくる食欲を抑える物質(たとえばレプチンなど)も少なくなる。以上のような事情で、やせの「大食い」が多くなるのではないかと思います。 

 
などなどと、打ち合わせを含めて、撮影は約2時間に及んだ。ダイレクターの近藤隆さんは、結構、下調べをしていて、胃下垂、褐色脂肪細胞、逆流性食道炎、などと、「大食い」の関係も尋ねてきた。 しかし、放映時間は、長くても1分であろう。今頃、ディレクターの筋書きにあった形で、必要な部分だけが、取れだされて編集されているはずである。どんな風に編集してくるのか、興味深いところだ。


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